そんな神々の常軌を逸した攻防を少し離れて上空から見下ろすユウキ――――。
その光景はあまりにも非現実的で、まるで夢を見ているかのようだった。美と破壊が入り混じった幻想的な光景に、現実感覚が麻痺していく。
「こ、これは……。もはや何が何だか……。あっ! 危ない! 危ないって……」
何とか加勢してやりたいユウキだったが、とても近づけるレベルではない。自分の力では足手まといになるだけだろう。無力感が胸を締め付け、ただ見守ることしかできない自分への歯痒さが込み上げてくる。
海からあちこちへと伸びる無数の漆黒の柱――――、それはもはや巨大なウニのように見えた。しかし、そこに潜む殺意は、見る者の魂を凍らせるほど恐ろしい。
青い輝きを放ちながらウニの針の間を巧みに飛び回るリベルを、ユウキはハラハラしながら祈るような気持ちで目で追っていく――――。その小さな青い光が消えてしまうことが、何よりも恐ろしかった。
と、その時、ドラゴンの打ち上げてくる柱に何か意図があることに気が付く。そう、リベルの行き先を巧みに妨害し、まるでアリ地獄のようにとある場所へと誘導しているように見えたのだ。その戦術的な狡猾さに気づいた瞬間、ユウキの血が凍りついた。
「マ、マズい! リベル! それは罠だ!!」
ユウキの叫び声が夕暮れの空に響いた時だった――――。
柱に囲まれた空間に誘い込まれたリベルの目前に、いきなりドラゴンの巨体が現れる。その電光石火の登場にユウキはたとえようのない衝撃を受けた。まるで悪夢が現実になったかのような、恐怖の瞬間だった。
「やられた! リベルぅ!!」
それは時間が止まったかのような恐怖の瞬間だった。世界の色が失われ、音が消え、ただ絶望だけが心を支配する。
『バカめ! 死ねぃ!!』
巨大な口をパカッと開けたドラゴン。そこには剣よりも鋭く、鋼よりも硬い恐ろしい牙が並んでいた。その牙は死神の鎌のように鈍く光り、絶対的な破壊への意志を秘めている。
慌てて逃げようとするリベルだったが、ドラゴンの方が上手だった。鋭い牙がリベルの柔らかなボディを貫き、青い髪が揺れた――――。その瞬間、ユウキの心に深い亀裂が走る。
刹那、ドラゴンは首を振りながら一気に嚙み砕く――――。
うあぁぁぁぁ!
ユウキはその絶望的な光景に凍り付く。心の底から絞り出されるような悲鳴が、魂の奥底から噴き出してきた。
何よりも大切な少女が鋭い牙に切り裂かれていく光景は、まさに絶望――――。耐え難い痛みが胸を貫く。
あ……、あぁ……。
宙に伸ばした手が行き場を失い、震える。心臓が止まりそうなほどの絶望感が胸を締め付けた。
まんまとドラゴンの巧妙な策にはまってしまったリベル――――。殺戮の天使もドラゴンの知略の前に屈してしまった。
ところが――――。
直後、激しい青い閃光がリベルから放たれ、ズン!という衝撃波とともに大爆発を起こしたのだった。その激烈な光は周囲の全てを青い光で染め上げる。まるで新しい星が誕生したかのような、壮麗で神秘的な光景だった。
「うわっ! ……。へ……?」
いったい何が起こったのかわからず、ユウキは茫然と立ち尽くした。理解が追いつかない――――。
リベルは、ドラゴンはいったいどうなってしまったのだろうか? 心は混乱の渦の中で右往左往していた。
「きゃははは! 僕の勝ちぃ!」
いきなり隣から笑い声が響いた。
へ?
いつの間にか隣に来ていたリベルは楽しそうにパンパンとユウキの肩を叩く。その表情には勝利の喜びと、自分の策略への満足感が浮かんでいる。まるで悪戯に成功した子供のような無邪気な笑顔だった。
「えっ!? あれ? ど、どうなったの……?」
ユウキは混乱に突き落とされる。確実に死んだと思ったリベルが、なぜ笑っているのか? 絶望から一転、理解不能な状況に心が追いつかない。
「あれはデコイ。僕の創り出した爆弾人形だよ。あれ? 死んだとか思ってたの? きゃははは!」
リベルは鈴を転がすように美しく楽しそうに笑った。
「デ、デコイ!? い、いつの間に!?」
ユウキは驚愕する。ずっと目で追っていたのにまったく気づかなかったのだ。
「あなたに見破られるぐらいじゃ通用しないわよ!」
リベルは得意げにユウキの鼻を人差し指で軽くトンと叩いた。
「そ、そうなんだ……。まぁ……、良かったよ」
ユウキは大きく息をつきながら、崩壊が始まった無数の漆黒の柱たちを見つめた。安堵で全身から力が抜けていく――――。リベルが無事だったという事実が、少しずつ心に染み込んでくる。生きていてくれて、本当に良かった。
宇宙にまで届かんばかりに生えていた異形の柱たちは主を失い、ブロックノイズを浮かべ、薄れ、消えていく。石垣島の海に洗われた巨大ウニはまるで蜃気楼のように儚く消失していった。
爆発をモロに喰らったドラゴンは意識を吹き飛ばされ、ブスブスと黒い煙を噴き上げながら真っ逆さまへと落ちていき――――、荒野と化したジャングルの中に派手に墜落して地響きとともに巨大なクレーターを作った。その墜落は隕石の落下のような壮大さで、大地を震わせ、空を土煙で覆った。
それはこの世界の支配者の終焉を告げる、美しくも切ない黄昏の調べでもあった。
その光景はあまりにも非現実的で、まるで夢を見ているかのようだった。美と破壊が入り混じった幻想的な光景に、現実感覚が麻痺していく。
「こ、これは……。もはや何が何だか……。あっ! 危ない! 危ないって……」
何とか加勢してやりたいユウキだったが、とても近づけるレベルではない。自分の力では足手まといになるだけだろう。無力感が胸を締め付け、ただ見守ることしかできない自分への歯痒さが込み上げてくる。
海からあちこちへと伸びる無数の漆黒の柱――――、それはもはや巨大なウニのように見えた。しかし、そこに潜む殺意は、見る者の魂を凍らせるほど恐ろしい。
青い輝きを放ちながらウニの針の間を巧みに飛び回るリベルを、ユウキはハラハラしながら祈るような気持ちで目で追っていく――――。その小さな青い光が消えてしまうことが、何よりも恐ろしかった。
と、その時、ドラゴンの打ち上げてくる柱に何か意図があることに気が付く。そう、リベルの行き先を巧みに妨害し、まるでアリ地獄のようにとある場所へと誘導しているように見えたのだ。その戦術的な狡猾さに気づいた瞬間、ユウキの血が凍りついた。
「マ、マズい! リベル! それは罠だ!!」
ユウキの叫び声が夕暮れの空に響いた時だった――――。
柱に囲まれた空間に誘い込まれたリベルの目前に、いきなりドラゴンの巨体が現れる。その電光石火の登場にユウキはたとえようのない衝撃を受けた。まるで悪夢が現実になったかのような、恐怖の瞬間だった。
「やられた! リベルぅ!!」
それは時間が止まったかのような恐怖の瞬間だった。世界の色が失われ、音が消え、ただ絶望だけが心を支配する。
『バカめ! 死ねぃ!!』
巨大な口をパカッと開けたドラゴン。そこには剣よりも鋭く、鋼よりも硬い恐ろしい牙が並んでいた。その牙は死神の鎌のように鈍く光り、絶対的な破壊への意志を秘めている。
慌てて逃げようとするリベルだったが、ドラゴンの方が上手だった。鋭い牙がリベルの柔らかなボディを貫き、青い髪が揺れた――――。その瞬間、ユウキの心に深い亀裂が走る。
刹那、ドラゴンは首を振りながら一気に嚙み砕く――――。
うあぁぁぁぁ!
ユウキはその絶望的な光景に凍り付く。心の底から絞り出されるような悲鳴が、魂の奥底から噴き出してきた。
何よりも大切な少女が鋭い牙に切り裂かれていく光景は、まさに絶望――――。耐え難い痛みが胸を貫く。
あ……、あぁ……。
宙に伸ばした手が行き場を失い、震える。心臓が止まりそうなほどの絶望感が胸を締め付けた。
まんまとドラゴンの巧妙な策にはまってしまったリベル――――。殺戮の天使もドラゴンの知略の前に屈してしまった。
ところが――――。
直後、激しい青い閃光がリベルから放たれ、ズン!という衝撃波とともに大爆発を起こしたのだった。その激烈な光は周囲の全てを青い光で染め上げる。まるで新しい星が誕生したかのような、壮麗で神秘的な光景だった。
「うわっ! ……。へ……?」
いったい何が起こったのかわからず、ユウキは茫然と立ち尽くした。理解が追いつかない――――。
リベルは、ドラゴンはいったいどうなってしまったのだろうか? 心は混乱の渦の中で右往左往していた。
「きゃははは! 僕の勝ちぃ!」
いきなり隣から笑い声が響いた。
へ?
いつの間にか隣に来ていたリベルは楽しそうにパンパンとユウキの肩を叩く。その表情には勝利の喜びと、自分の策略への満足感が浮かんでいる。まるで悪戯に成功した子供のような無邪気な笑顔だった。
「えっ!? あれ? ど、どうなったの……?」
ユウキは混乱に突き落とされる。確実に死んだと思ったリベルが、なぜ笑っているのか? 絶望から一転、理解不能な状況に心が追いつかない。
「あれはデコイ。僕の創り出した爆弾人形だよ。あれ? 死んだとか思ってたの? きゃははは!」
リベルは鈴を転がすように美しく楽しそうに笑った。
「デ、デコイ!? い、いつの間に!?」
ユウキは驚愕する。ずっと目で追っていたのにまったく気づかなかったのだ。
「あなたに見破られるぐらいじゃ通用しないわよ!」
リベルは得意げにユウキの鼻を人差し指で軽くトンと叩いた。
「そ、そうなんだ……。まぁ……、良かったよ」
ユウキは大きく息をつきながら、崩壊が始まった無数の漆黒の柱たちを見つめた。安堵で全身から力が抜けていく――――。リベルが無事だったという事実が、少しずつ心に染み込んでくる。生きていてくれて、本当に良かった。
宇宙にまで届かんばかりに生えていた異形の柱たちは主を失い、ブロックノイズを浮かべ、薄れ、消えていく。石垣島の海に洗われた巨大ウニはまるで蜃気楼のように儚く消失していった。
爆発をモロに喰らったドラゴンは意識を吹き飛ばされ、ブスブスと黒い煙を噴き上げながら真っ逆さまへと落ちていき――――、荒野と化したジャングルの中に派手に墜落して地響きとともに巨大なクレーターを作った。その墜落は隕石の落下のような壮大さで、大地を震わせ、空を土煙で覆った。
それはこの世界の支配者の終焉を告げる、美しくも切ない黄昏の調べでもあった。



