専門学校卒業を控えた蓮は、第一志望の鉄道会社の採用案内ページを開き、エントリーシートに向かった。そこにはシンプルな問いが並んでいた。 「志望動機を教えてください」 「あなたが鉄道に求める価値とは?」

蓮は躊躇せず、こう記した。 「電車は移動手段であるだけでなく、人の不安や期待、余白や未来を運ぶものだと思っています。私はその“間”を、静かに導ける人になりたい」

過去の展示、点字時刻表プロジェクト、地域活動の記憶が、文章の下に支柱のように並び、蓮は「全部がレールになってる」と手応えを感じながら提出ボタンを押した。