高校を卒業して八ヶ月。
 大学一年の夏に高校の同窓会が開かれた。

「早いよ!」

 誰もがそう言って笑い合った。
 出席率は九割。高校三年のクラスはそれだけ仲がよかったのだ。

 もちろん、美哉(みや)も出席した。
 和気藹々(わきあいあい)としたクラスの雰囲気を味わいたかったのもあるが、何より会いたい人がいたのだ。

 早瀬(はやせ)行成(ゆきなり)――美哉の片思いの相手だ。
 穏やかな人でハッとするような美しい顔立ちをしていた。
 本が好きで、よく休み時間に文庫本を読んでいたのを覚えている。

 話しかけたくてうずうずしていたのは、美哉だけではない。
 何人もの女の子が告白しては断られたと聞く。

(きっと私なんか相手にされないんだろうなあ……)

 特に目を引くような外見も能力も持っていない、平々凡々とした自分にため息が出たものだ。
 だけど、あの夜――図書室で二人きりになった時、ピースがぴたりとハマるような感覚があった。

(でも、私も告白できなかったし、彼からもなかった……)

 何か言いたげで、でも口にしなかった行成の顔が浮かぶ。
 大学に入ってからは慌ただしい日々だったが、それでも行成のことを忘れたことはなかった。
 クラス委員だった子から同窓会の連絡があった時は胸が(はず)んだ。

(こんなに早く再会できるなんて!)

 同窓会は予想どおり楽しかった。
 クラスメイトたちの近況を興味深く聞いて、思い出話をして――。
 少しでも長く行成のそばにいたくて。
 そして、三次会まで残ってしまい、終電を逃してしまったのだ。