流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 柚乃に最後に言われたことが下校してからも、塾の間も頭の中で反芻(はんすう)していた。
 流星は蓮先輩と私が本当に恋人同士になったら何と言うだろう。
 いくら考えたところで答え合わせなんてしようがなかった。
 流星ならこう思う。
 流星ならこう言う。
 どんなに考えを巡らせたところで、本人に聞くことは出来ない。
 ――流星は亡くなってしまった。
 残酷だけどそれが現実。
 柚乃が私を思って、はっきりと言ってくれた優しさは知っている。
 それでも私は蓮先輩に気持ちを伝えていいと思うことが出来ないまま、生きている私に時間は確実に過ぎていく。

 夏の名残を消し去るように木枯らしに吹かれる木々は紅く染まり、冬が訪れる準備をし始めている。
 街はクリスマスムード一色で、否応なしにクリスマスの存在と今年の終わりを意識せざるをえない。
 11月も残すところ、あと1週間。
 12月に入ればすぐに後期の中間考査期間に入る。
 三連休の最終日。
 今日は東京都の代表決定戦当日。
 三高の男子バレー部にとって春高出場がかかった大一番。
 準決勝で勝った時点で春高出場は決定。
 負けた場合は開催地代表の3枠目をかけて、準決勝で敗れた学校同士で争うことになる。
 AM9:00
 黒のタートルネック、グレンチェックのブラウンのショートボトムに黒タイツ。
 身支度を整えた私は自分が朝から冷静でいられないことは自覚していた。
 男子バレー部の代表決定戦が行われる会場は23区外にあり、自宅からだと電車の乗車時間だけで1時間30分もかかる。
 蓮先輩に関わらないと決めているのに会場までの行き方を調べてしまっていたのは矛盾でしかなくて。
 都内とは言え、すぐに駆け付けられない遠い会場。
 午前中に試合が開始され、お昼過ぎには男子は最終的な結果が全て出揃う。
 仮に今から家を出たとしたって、多く見積もって会場到着は2時間後。
 進む時計の針にカウントダウンされているみたい。
 考えないようにしようと思う時点ですでに考えることをやめられない証拠。
 学習机に面して座り、教科書とノートを広げていたけれど、集中できない。
 私は閉じた教科書の上に流星に作ったユニフォーム型のお守りと蓮先輩にお土産でもらったおにぎりポリスのキーホルダーを並べて眺めていた。

 『俺だけに見せて。俺だけに聞かせてよ。そういう儚げな明紗』

 流星にしか見せないって決めていた。
 でないと流星を、私自身を裏切るような気がしていたから。
 どこまでもイイコで理想的な弓木明紗で居なければ、私は流星の死を受け止められなかった。
 流星の未来を私が奪ってしまったと、12歳の私が受け止めるには重すぎて、潰れそうで、失ったものが大きすぎて。
 だから動じない強い自分で居たかった。
 泣かないことが強さだと安易に確信した。
 強がり……だと呼ぶには余りにも切実で。

 『何でも出来るとか、完璧とか、きっと明紗は周りに言われ続けてきたと思う。嘘もつけなくて、真っ直ぐで、必死に涙をこらえていたり、不器用なところもあるんだって気づいたり、明紗の目は、俺に心を開いてるって教えてくれてた』

 蓮先輩はそんな私を見ていてくれて受け止めようとしてくれた。