流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 柚乃に流星のことを隠しているつもりはなかった。
 柚乃になら……って気持ちがなくはなかったけど。

 「柚乃に話せなかったわけじゃない」
 「うん」
 「聞いて気分の良くなる話じゃないよ」

 足を止めて、隣の私を見上げた柚乃は私が何を言おうとしているのか理解したらしい。

 「もし柚乃が聞きたいなら話す」
 「ユズ聞きたい!! 明紗が話してくれるなら聞きたい!!」

 私に可愛らしい顔をグッと近づけてきた柚乃。
 やっぱり柚乃はいろいろ察しておきながら、私から話すのを待ってくれていたみたいだ。

 「今度、柚乃が時間ある時に」
 「明紗がいいなら今からがいい!」
 「バレー部の見学は?」
 「志恩には内緒にしてほしいんだけど、試合ならともかく、毎日練習を見たとしても、そうそう代わり映えするわけでもないじゃない。ユズ、バレーボール自体に興味があるわけじゃないし、ちょっと飽きてきてもいる」

 柚乃が飽きるってことはそのくらい笹沼先輩との付き合いが自分の中で自然になったということだと思う。
 笹沼先輩との関係が慣れに変わり喧嘩もできるほど、この数か月2人で関係性を育んできたんだろう。
 最初の頃の私にバレー部の見学に付き合っていた頃の柚乃の様子が今では懐かしい。
 私と柚乃は屋上庭園に行き、奇しくも蓮先輩に流星のことを打ち明けたのと同じベンチで柚乃に同じことを伝えた。
 肌をくすぐる風は確実にあの頃より柔らかくなっている。
 素直な柚乃は私の話を聞きながら、ずっと泣いていて、柚乃はティッシュで何度も鼻と涙を拭いていた。

 「こんな話すのもつらいこと、ユズに教えてくれてありがとう」

 泣けない私の代わりに柚乃が落涙してくれている気がして、私はずっと柚乃の髪を撫でていた。

 「でも、明紗がその流星さんのことで久瀬先輩と距離を置くのは間違っているとユズは思う」

 柚乃は涙の膜が張った目でしっかりと私を直視して言った。

 「流星さんを忘れられずにいる明紗が久瀬先輩を苦しめたくないって気持ちはわかる」
 「……」
 「好きな女に忘れられない男が居るなんて、つらくて苦しくてたまらないと思う。しかも、その男が死んでしまっているとしたら、なおさら葛藤すると思う」
 「だから私は……」
 「でもね、それは明紗が決めるんじゃなくて、久瀬先輩自身に戦わせてあげなよ」
 「戦う?」
 「久瀬先輩自身が悩んで苦しんで、それでも明紗と居たいのか自分の気持ちととことん向き合ったらいいんだよ」
 「……」
 「明紗も久瀬先輩のことが好きだったら、先回りして明紗から離れる必要ないじゃない」
 「……」
 「久瀬先輩。明紗から好きだって聞きたいと思うよ」

 柚乃は自分が苦しんでいるように必死に涙を流しながら訴えてくる。

 『流星くんのことを想ったままの明紗でいい』
 『どんな明紗でも、全てまるごと俺が受け止めるから』

 蓮先輩は流星を好きなままの私でもいいと全てを受け止めようとしてくれていた。
 だから、つらかった。
 蓮先輩を苦しめたくなくて、私は蓮先輩に好きだと言えなかった。

 「明紗が自分の気持ちに蓋をして、我慢して、好きな人に好きだと言えないことを、流星さんは本当に望んでいると思う?」