流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 胸の奥底から熱いものがこみ上げてきて、どんどん顔に熱が蓄積する。

 『え? 明紗はおしゃべりでしょ? ここが』
 『だから、明紗のこの目が一番やばいんだって……』

 流星が同じことを私に言っていた。
 私の目はおしゃべりだと。
 自分ではわからないけど、蓮先輩も流星も同じようなことを言う。

 「どんな明紗でも、全てまるごと俺が受け止めるから」
 「……」
 「俺の傍に居ろよ」

 ”居てよ”じゃなくて”居ろよ”なのが、蓮先輩の切実さを物語っているようで。
 蓮先輩だけを想えない私が傍にいても蓮先輩を悲しませてしまうだけ。
 私の流星への想いは蓮先輩にとって苦しいものでしかない。
 私は蓮先輩にそんな思いをさせ続けたくない。

 「──居られないです」

 語尾のほうが自分でもわかるほど、震えた涙声になっていた。
 蓮先輩の傍に居たいけど、蓮先輩を苦しめたくない。

 「俺のこと利用していい」
 「え……?」
 「俺の心も身体も明紗が好きなだけ利用して、ボロボロにしてくれても構わない」
 「……」
 「だけど、明紗がそんなことできる子じゃないってことも、よく知ってる」

 蓮先輩の自嘲が混ざったような低い声が晩夏の夕暮れに溶ける。
 あの日、封印した涙が溢れそうになった。
 私の罪悪感が消えることはない。
 私から流星が消えることもない。
 今、涙を流せば蓮先輩は私の涙を拭ってくれるかもしれない。
 あの力強いスパイクを打つ腕に包み込まれて私を泣かせてくれるかもしれない。
 きっと蓮先輩はそうしてくれると思う。
 だからこそ、私が蓮先輩と一緒にいるわけにはいかない。
 蓮先輩は私に優しすぎる。
 優しすぎて、傍にいたらどうしようもなく蓮先輩に甘えたくなってしまう。

 「蓮先輩……」

 いつの間にか好きになっていた。
 こんなにも大好きになっていた。
 流星の時もそうだった。
 いつがとか、どこがとか、そんな境目がはっきりしてるわけじゃなく、気がついた時には好きになっていた。
 好きな気持ちを二度と伝えられないことが苦しくて仕方ないと知っていたはずなのに。
 私の“好き“は蓮先輩を苦しめるだけ。
 私も蓮先輩が好きだって伝えてしまうことは出来ない。

 「……蓮先輩が春高に行けるよう応援しています」
 「……」
 「でも私は、もう蓮先輩と関わりません」

 蓮先輩との関係が切れることで、お手紙交換をしている翠ちゃんにも私に懐いてくれた鈴ちゃんにも蓮先輩のお母さまにだって申し訳なさが募る。
 でも、お互いを知りすぎた今、もう表向きなんて関係ですら繋がれない。

 「俺が何を言ったとしても、明紗の気持ちが変わらないことはわかってる」

 蓮先輩は今、どんな表情をしているんだろう。
 自分が泣き出してしまわないでいることに必死すぎて確認できなかったし、蓮先輩と目を合わせたら、それこそ私の本心を見透かされてしまいそうで俯いていた。

 「蓮先輩……ありがとうございました」

 それが私から蓮先輩に告げた“別れ“だった。