流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 私の感覚だけが3年前の7月7日のSL公園に巻き戻される。
 あの時の焦燥感も緊張感も不安感も。
 お兄ちゃんから聞いた 『流星が車に轢かれて、死んだって』あの声のトーンもスピードも。

 「流星が好きだって、私も伝えるつもりだったのに……」

 私の好きを聞かないまま、流星は消えてしまった。
 流星の好きを聞けないまま、流星は消えてしまった。
 泣かないように下唇を噛んだら、風が木々を揺らす音だけが優しく鼓膜を震わせていた。

 「私がSL公園の話なんて出さなければ流星は……」
 「――それは違う」

 蓮先輩に断言するように言い切られる。

 「流星くんが事故に遭ったことに明紗は関係ない」
 「関係あります!」

 思わず声のボリュームが大きくなってしまう。
 私たちが待ち合わせなんてしたから。
 だから……。

 『明紗のせいで流星は死んだんだよ!!』

 お兄ちゃんにもそう責められて避けられてしまった。

 「残念ながら流星くんは不慮の事故だった」
 「……」
 「事故自体に原因はあったとしても、それは警察が調べている。明紗とは無関係だろ」

 蓮先輩は臆することなど何もないように断言した。

 「流星くんが急に亡くなっただけでもつらかったのに、そうやって明紗は自分を責めてたのか?」
 「……」
 「苦しかったよな」
 「……っ」
 「明紗は何も悪くない」

 蓮先輩の口振りは堂々としていて、でも包み込むような優しさも内包していて、私の心の一番奥を的確に刺激した。
 その場にいたわけでも、見ていたわけでもないのに……。
 こんなにも私に寄り添ってもらえたのは初めてで。
 流星が亡くなった現実に絶望していたあの時の私ですら救い上げてしまうような温かい力強さを持っている。
 目の奥がちりちりと焼けつくような感覚を抑えるだけで精一杯で、しばらく唇を閉じ合わせていた。
 蓮先輩との間に続く静寂(しじま)は優しい。
 この沈黙が私を思いやってくれているとわかるから。

 「蓮先輩……」
 「ん?」
 「……私もう蓮先輩と居られないです」

 太ももの上でスカートを両手でギュッと握りしめる。

 「私は流星を忘れられないです。この先ずっと……」

 私には蓮先輩と一緒に居る資格がない。
 本当はずっとわかっていたのに……。

 「流星くんのことを想ったままの明紗でいい」
 「……」
 「少しでも明紗が俺を好きだったら傍に居てほしい」

 少し……なわけがなかった。
 私は蓮先輩が好きだ。
 蓮先輩に惹かれていく自分を止められなかった。
 流星を忘れられないまま、蓮先輩のことも好きになっていく自分を認めるのが怖かった。

 「明紗は心を開かないって言ってたけど、いつも明紗は俺に誠実に向き合ってくれていた」
 「……」
 「何でも出来るとか、完璧とか、きっと明紗は周りに言われ続けてきたと思う」
 「……」
 「嘘もつけなくて、真っ直ぐで、涙を必死にこらえていたり、不器用なところもあるんだって気づいたり、」
 「……」
 「明紗の目は、俺に心を開いてるって教えてくれてた」