流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 「悪い、明紗。待った?」
 「私も今、来たところです」

 時間に遅れたわけでもないのに律儀に謝る蓮先輩。
 制服に着替えたのだろう。
 ハードな部活終わりだとしても、まだ暑さの名残りがあっても、蓮先輩の整った顔立ちは相変わらずクールだった。

 「明紗から一生連絡来ないかもって覚悟してた」

 そう苦く笑う蓮先輩が私の隣に座って、その横に通学リュックを置く。
 私も一生逃げていたいくらい本当は蓮先輩と話すのが怖かった。
 でも、蓮先輩とは向かい合いたかった。
 そこに痛みがどれだけ伴ったとしても。
 だから休み明けすぐに蓮先輩に会いに行った。

 「俺はちゃんと知りたい。流星くんと明紗のこと」
 「……はい」
 「明紗が話したいと思う範囲で構わない」

 蓮先輩はこんな時にも私を慮ってくれる。
 きゅっと絞られているように胸の奥底が痛みを発した。

 「――流星と私が出会ったのは私がまだ小学校6年生の時です」

 そんな言葉から私は蓮先輩に話し始めた。
 流星と私の過去を。
 蓮先輩は私を尊重するように、ずっと耳を傾け続けてくれた。

 最初は私のお兄ちゃんに勉強を教えてもらうために流星が私の家に来ていたこと。
 中学校の入学式で私が新入生代表のスピーチを行った後に、流星が在校生代表で歓迎の言葉を発表した流星が私への私信を織り交ぜてきたこと。
 流星と昼休み半分を一緒に過ごすようになったこと。
 流星は集中できなくなると主張して、私にバレーしてる姿を絶対に見せようとしなかったこと。

 「流星。蓮先輩のことを腹立つくらいうまくて超絶男前でハイスペックすぎるって話してました。そんな蓮先輩に自分みたいな選手になりたい、憧れてるって言ってもらえて、本当に嬉しかったみたいです。それが蓮先輩のことだったって私が知ったのはつい最近だったんですけど」
 「……」
 「流星は三高で蓮先輩と一緒にバレーすることを本当に楽しみにしていたみたいです」
 「……」
 「いつか私が三高を志望した理由を答えられないまま保留にしていたと思うんですけど、流星と三高の話をしていたから……」
 「……」
 「もう流星がいなかったとしても流星との約束は守りたいと思いました」

 隣合わせで座っているから蓮先輩の表情は見られない。

 「俺、年下だし他校の先輩だから、流星くんを“榊さん“って最初は呼んでたんだけど、
 『蓮に馴れ馴れしくされたい』
 って、“流星“って呼んでいいって言われた。さすがにそれは出来なくて最終的に“流星くん“になったけど」
 
 でも、きっと蓮先輩の脳裏にも流星と過ごした時間の情景が浮かんでいるだろう。
 私に言ったことを蓮先輩にも伝えている。
 流星は自分が気に入った人にはそうやって懐に入っていくのかと、流星と蓮先輩のやりとりが私にも想像できた。
 話しているうちに肌を撫でる風が和らいでいる。
 今日も日は確実に西へと傾いていく。
 
 「自分で言うの恥ずかしいんですけど、流星は私のことが好きでした」
 「……」
 「私もいつの間にか流星のことが好きになっていました」
 「……」
 
 そして、ここからが一番息苦しくなる。
 流星が交通事故で亡くなった7月7日。
 流星の誕生日に私はSL公園で流星と待ち合わせをしていたこと。

 「待ち合わせ時間になっても現れない流星を私はずっと待っていて……来なかったです」