流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 私がバレー部の見学に行ったのも、昼休みに蓮先輩と笹沼先輩と柚乃と四人で過ごすようになったのも、柚乃がきっかけだった。
 柚乃が居なければ、きっと私は関わらないでいたと思う。
 でも、いつからか私自身、義務感で蓮先輩と一緒にいたわけじゃなくなっていて。

 「柚乃。私、自販機で飲み物買ってくる」
 「うん。いってらっしゃい」

 第二アリーナを抜けて、自販機が並列されている本校舎のエントランスホールへとやってきた。
 麦茶のペットボトルを購入する。
 すぐに戻る気が起きなくて、自動販売機の前で放心したまま立っていた。

 「──明紗」
 「え?」

 そこには汗をかいた姿さえ様になっている蓮先輩が居た。

 「蓮先輩。試合は?」
 「ブロックした時に指に出来てた血豆が潰れて、念のため保健室行くところ」
 「大丈夫ですか? 私も行きます」
 「たいしたことない。ただ流血してると試合に出られないだけ」

 確かに蓮先輩は右手の中指の爪付近から血が出ている。
 蓮先輩と一緒に保健室まで付いていったものの、保健の先生は絆創膏を貼ってテーピングしただけですぐに処置は終わった。
 第二アリーナまでの廊下を蓮先輩と並んで戻る。

 「俺、青柳中に部活の練習試合で何度か行ったことある」
 「え?」
 「その時、明紗がそこに通っていたんだと思うと不思議」

 さっき私と同じ中学だった人と話していたから?
 河津中だった蓮先輩が練習試合に来ていたことを私は知っていた。
 どうしよう。ここから流星の話に繋がったりしたら。

 「俺の憧れている選手って……」
 「やっぱり弓木明紗って、めちゃくちゃ可愛すぎる!」

 第二アリーナの出入口から左にいった通路にある恐らくお手洗いの辺りだろう。
 ガヤガヤと複数の話し声と私の名前が聞こえて、蓮先輩と私は二人で立ち止まった。
 向こうからは完全に死角になっているはず。
 今の声、さっき蓮先輩と話していた私と同じ中学だった他校の人だ。
 この学校はまだ試合には入っていなかった。

 「誰? それ」
 「ほら。見学に来ている飛びぬけて綺麗な三高の子、居たじゃん」
 「ああ、居た居た。何? お前の知り合い」
 「俺、中学一緒だったんだよね。中学の時もレベチにかわいかったけど、更にパワーアップしてるわ」

 私の話をされている。
 フィルターをかけられたように視界が暗くなっていく。

 「そんな可愛いなら中学の時、狙わなかったの?」
 「無理無理。あれは高嶺の花すぎる。それに弓木明紗って流星のものって感じだったし」
 「流星って、あの中3の時に事故で亡くなった榊流星?」
 「そう。流星が囲ってたって感じ」
 「囲うって何よ?」
 「他の男に手を出されないようにしてた。とにかく流星は弓木明紗のこと好きってダダもれ。実際に付き合っていたかまでは知らないけど、弓木明紗も好きだったと思う」
 「中学生の相思相愛かー。いいね」
 「亡くなったの中体連の前だっけ? かわいそうだったよな。榊流星」
 「榊流星が生きてたら、今ごろ全国区のバレーボールプレイヤーだっただろうに」