***
図書閲覧室で広げた翠ちゃんからの手紙には自分が今、好きなVtuberの説明や好きな歌、私と一緒に原宿に行きたいなど、便せん3枚に渡って書かれていた。
”あさちゃんとおともだちになりたい”
”お兄ちゃんに泣かされたらいつでも言ってね”
”おうちに遊びに来てほしい”
”どうしたらあさちゃんみたいに美人になれるの?”
翠ちゃんの丁寧に書いてくれたんだとわかる字を読みながら、涙を流しそうになってしまった。
蓮先輩の本当の彼女なわけでもないのに。
蓮先輩の真摯な気持ちに少しも応えられないのに。
蓮先輩との距離が近づいてから、私は私の感情がぶれて仕方ない。
泣かないと決めた自分を自分が裏切ろうとしてくる。
流星への償いなんて思っているわけじゃないけど、どうしても流星以外の人と恋をするなんて私に許されてはいけない気がしていた。
帰りに自宅の最寄り駅に直結している商業施設でレターセットを購入した。
流行りのキャラクターはよくわからなかったから、翡翠色が透き通って煌めいて見えるような美しい便せんと封筒を選んだ。
塾の開始時刻までには時間があったから、さっそく返事を書く。
小学生に手紙を書くなんて、初めてだったから、何を書いたらいいのか漢字をどこまで使ったらいいのかわからなかったけれど、翠ちゃんが書いてくれたことに答える形で書いた。
”いつも翠ちゃんのお兄ちゃんは私に優しいよ”
そこまで書いて、ペン先を止める。
いつだって蓮先輩は私に優しい。
蓮先輩が私と話す時は普段より口調を少し柔らかく変化させてくれているのを知っている。
おにぎりポリスのキーホルダーだってお弁当の巾着袋につけたままにしてくれている。
だから、きっと流星も蓮先輩の人間性を気に入ったのだろう。
自分が目指している高校まで話すほど。
「これ、翠ちゃんに渡してもらえますか?」
翌日も夏期講習を受講するため、私は三高に通学していた。
カフェテリアで一人でお昼を食べていたら、昨日までと変わらず部活の昼休憩に入った蓮先輩が空いていた私の前の席に来てくれて、安心感と緊張感と全く違う感情が沸き上がる。
さっそく蓮先輩に昨日認めた翠ちゃんへの封筒を渡したのだけれど。
「もう書いたのか?」
「はい。嬉しかったので」
「何か変なこと書いてなかった?」
「内容は女同士の秘密です」
蓮先輩が「何それ」と軽く笑う。
「明紗って、やっぱり字も綺麗だな」
私が渡した封筒をしげしげと眺め、蓮先輩が言った。
「毛筆、硬筆ひととおり習っていました」
「何か、明紗の字って感じ。俺もやってたけど、ここまで綺麗に書けない」
今まで通り、ごく自然に会話が進む。
いつも色とりどりのおかずが何種類も詰められているお弁当を蓮先輩は正しい箸使いで綺麗に食べていた。
「明紗は何で三高を受験しようって思った?」
蓮先輩から問われ、心音が大音量で鳴った。
「私は……」
流星と三高の話をしたからだ。
流星が居ないのに志望するかは進路決定の時に迷いが生まれた。
でも、流星との約束を結んでいると思ったから。
なんて、蓮先輩に伝えられるわけがない。
私の口ぶりが重くなったのを察したのだろう。
先に蓮先輩が口を開いた。
「俺は三高で一緒にバレーをしたい人が居たから」
図書閲覧室で広げた翠ちゃんからの手紙には自分が今、好きなVtuberの説明や好きな歌、私と一緒に原宿に行きたいなど、便せん3枚に渡って書かれていた。
”あさちゃんとおともだちになりたい”
”お兄ちゃんに泣かされたらいつでも言ってね”
”おうちに遊びに来てほしい”
”どうしたらあさちゃんみたいに美人になれるの?”
翠ちゃんの丁寧に書いてくれたんだとわかる字を読みながら、涙を流しそうになってしまった。
蓮先輩の本当の彼女なわけでもないのに。
蓮先輩の真摯な気持ちに少しも応えられないのに。
蓮先輩との距離が近づいてから、私は私の感情がぶれて仕方ない。
泣かないと決めた自分を自分が裏切ろうとしてくる。
流星への償いなんて思っているわけじゃないけど、どうしても流星以外の人と恋をするなんて私に許されてはいけない気がしていた。
帰りに自宅の最寄り駅に直結している商業施設でレターセットを購入した。
流行りのキャラクターはよくわからなかったから、翡翠色が透き通って煌めいて見えるような美しい便せんと封筒を選んだ。
塾の開始時刻までには時間があったから、さっそく返事を書く。
小学生に手紙を書くなんて、初めてだったから、何を書いたらいいのか漢字をどこまで使ったらいいのかわからなかったけれど、翠ちゃんが書いてくれたことに答える形で書いた。
”いつも翠ちゃんのお兄ちゃんは私に優しいよ”
そこまで書いて、ペン先を止める。
いつだって蓮先輩は私に優しい。
蓮先輩が私と話す時は普段より口調を少し柔らかく変化させてくれているのを知っている。
おにぎりポリスのキーホルダーだってお弁当の巾着袋につけたままにしてくれている。
だから、きっと流星も蓮先輩の人間性を気に入ったのだろう。
自分が目指している高校まで話すほど。
「これ、翠ちゃんに渡してもらえますか?」
翌日も夏期講習を受講するため、私は三高に通学していた。
カフェテリアで一人でお昼を食べていたら、昨日までと変わらず部活の昼休憩に入った蓮先輩が空いていた私の前の席に来てくれて、安心感と緊張感と全く違う感情が沸き上がる。
さっそく蓮先輩に昨日認めた翠ちゃんへの封筒を渡したのだけれど。
「もう書いたのか?」
「はい。嬉しかったので」
「何か変なこと書いてなかった?」
「内容は女同士の秘密です」
蓮先輩が「何それ」と軽く笑う。
「明紗って、やっぱり字も綺麗だな」
私が渡した封筒をしげしげと眺め、蓮先輩が言った。
「毛筆、硬筆ひととおり習っていました」
「何か、明紗の字って感じ。俺もやってたけど、ここまで綺麗に書けない」
今まで通り、ごく自然に会話が進む。
いつも色とりどりのおかずが何種類も詰められているお弁当を蓮先輩は正しい箸使いで綺麗に食べていた。
「明紗は何で三高を受験しようって思った?」
蓮先輩から問われ、心音が大音量で鳴った。
「私は……」
流星と三高の話をしたからだ。
流星が居ないのに志望するかは進路決定の時に迷いが生まれた。
でも、流星との約束を結んでいると思ったから。
なんて、蓮先輩に伝えられるわけがない。
私の口ぶりが重くなったのを察したのだろう。
先に蓮先輩が口を開いた。
「俺は三高で一緒にバレーをしたい人が居たから」



