流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 不意に柚乃から話を振られる。

 「私、特別な予定ない」
 「そういえば、明紗。学校の夏期特別講習を片っ端から申し込んでなかった?」
 「うん。だからほぼ毎日ここに通うと思って、夏休みのこと余り意識してなかった」
 「じゃあ俺らも部活でだいたい学校きてるから、弓木さんに会おうと思えば会えるな」
 「ええ!? じゃあユズも夏休みに登校する。まだ夏期講習申し込めるかな」
 「三高の特別講習ハイレベルすぎて地獄って俺は聞いてるけど、柚乃大丈夫そ?」
 「ユズ、無理かも」

 わかりやすく柚乃がむくれる。

 「でも、弓木さん特別講習そんなにいれて大丈夫? 弓木さんって優秀だけど何か将来の目標とかあるの?」

 笹沼先輩から質問が投げられる。

 「まだはっきり決まってないんですけど」
 「けど?」
 「これがしたいって思えた時にそれを選び取れる自分でいたいとは思っています」
 「まあねー。今まで勉強せずに遊んでばっかだった奴が高3になって医者になりたいって慌てて勉強しても遅かったりするもんね」
 「父からの受け売りなんですけど。修得するために努力したことに無駄なことはないって言われてきました」
 「明紗のお父さん、めちゃくちゃイケメンなんだよ。お母さんも美人だし」
 「柚乃、見たことあった?」
 「昔、ダンスの発表会よく家族で見に来てたよね? お兄さんもかっこよかった記憶ある」

 お兄ちゃん……思い出して胸が嫌な音を鳴らす。
 夏休みにお兄ちゃんは少しでも帰ってくるのだろうか。
 もう高校三年生だし、卒業したら進路はどうするんだろう。
 東京に戻ってくるのか、何もわからない。
 今も気まずいままだとはいえ、私はお兄ちゃんのことが変わらず好きだ。
 また前みたいに仲良くしたい。
 でも、お兄ちゃんに私は拒絶されているから。

 「──明紗?」

 隣から蓮先輩が私の名前を呼ぶ。
 思考の海に溺れそうになる私を蓮先輩の声で引き戻されたのは何度目だろう。
 正面では笹沼先輩と柚乃がいつの間にか2人で会話を進めている。

 「昨日、家庭の用事で休んでただろ。無事に終わった?」
 「はい」

 蓮先輩には昨日、流星の命日に休んだことは家庭の用事だと伝えていた。

 「明紗が学校に居なくてつまらなかった」

 そう苦笑する蓮先輩に「蓮先輩も昨日部活休んでましたか?」とは言葉に出来なかった。
 蓮先輩と流星はどんな話を二人でしていたんだろう。

 「明紗、これ」

 蓮先輩がバッグから取り出したのは1冊の雑誌。
 バレーボールの専門雑誌なのか表紙には「高校バレー特集」と大きく掲げられている。

 「この間、取材に来た時の」
 「載ったんですね」
 「何冊かもらったから1冊、明紗もらって」
 「私がもらっていいんですか?」
 「うん。と言っても俺、1/4ページくらいだけど。インターハイも出られなかったし」
 「それでもすごいです。自宅に帰ってからじっくり読みます」
 「じっくりじゃなくていいって」
 「ありがとう。蓮先輩」

 私は蓮先輩にもらった雑誌を胸元で抱きしめた。
 蓮先輩の切れ長の美しい目が優しく私を映し出して細められる。
 どうしてなのか胸がギュッと苦しくなった。