頭の中が霞んでいく。
「絶対に榊くんが生きてたら、高校でもバレーしてたと思うんだよね。榊くんってバレーにのめり込んでたから。私、榊くんと付き合ってた時に『バレーと私とどっちが大切なの?』って聞いちゃったことある。恥ずかしいよね」
少し照れくさそうに話す速見さんの顔がやけに不鮮明に見えて。
「あの、場所を変えませんか?」
試合の開始時刻が近づくに連れて、観客席にも人が戻りつつある。
柚乃も私と速見さんの会話を聞いているし……。
私の提案に頷いた速見さんと廊下に出て自販機の横に設置されている壁沿いのソファーへと横並びに腰かけた。
気持ち小声で速見さんが話し出す。
「私ね、榊くんにフられてからも榊くんのこと好きだった」
「……」
「でも、明紗ちゃんが中学に入学してから、榊くんって明紗ちゃんしか眼中にないって思い知った。私がクリスマス前にフラれたのもこれが理由なんだなって」
「……」
「明紗ちゃんをチアに勧誘した時かな。実際に明紗ちゃんを目の当たりにしたら、これは榊くんも本気で好きになるわって納得できた。もちろん見た目だけじゃないよ」
「……」
「私ね、榊くんが亡くなってから、『人っていつ死んでもおかしくない』んだって、そんな当たり前のことに改めて気づかされたっていうか……。どこか身近じゃなかったんだよね。だからいろいろなことを先延ばしにしないで今やらないとって思えるようになったんだ」
速見さんの言葉が耳から身体中に浸透していく。
流星が亡くなってから、お兄ちゃん以外の誰かと流星のことを話すのは初めてだった。
お兄ちゃんとも話せなくなってしまって自分の中だけで抱え込んでいたから。
「三高のエースの久瀬蓮くんっているでしょ?」
「はい」
「久瀬くんのバレー、榊くんに似てるの。というか、ほぼ榊くんなんだよね」
蓮先輩のバレーが流星に似ている?
「久瀬くんって河津中出身なんだけど、青中と練習試合が何度かあって、榊くんと交流があったの。榊くんはエーススパイカーで左利き、久瀬くんも左利きで同じ榊くんと同じOH(アウトサイドヒッター)。久瀬くんは榊くんのプレーに憧れていたみたいで、榊くんも榊くんで久瀬くんのこと気に入ってたって聞いた」
蓮先輩が三高の男子バレー部の二年生エースって時点で、まったく何も思い当たらなかったわけではなかった。
だから最初はなるべく蓮先輩と関わりたくないと思っていた。
『河津中との練習試合の時、相手の2年に俺みたいな選手になりたい、憧れてるって言ってもらえた。その2年腹立つくらいうまくてさ。しかも、見た目も超絶男前でハイスペックすぎんの。そいつに言われて、俺ほんっと嬉しかったんだよね』
『女の子に告られた時より何倍も興奮した。そいつに俺が三高に行きたいこと伝えたら、そしたら自分もそうするって。あいつと三高でバレーできたら楽しいだろうな。ポジションOHで同じなんだけど、俺が先輩だし、負けてやる気はない』
流星が指していた人物は蓮先輩だったんだ……。
蓮先輩は流星を知っている。
「今日、本当はベンチ入りのマネージャー私の予定だったんだけど、三高も勝ち上がってるから変わってもらったの。どうしても、その、久瀬くんのプレーが榊くんがバレーしていた姿と重なっちゃって……。あのジャンプサーブは榊くんが中学の時アドバイスしてた。どうしても見てると涙腺が緩んじゃって」
速見さんの目から一筋の涙が頬をつたう。
「速見さん……」
「榊くんが生きてたら、久瀬くんみたいにプレーしてたんだろうなって考えちゃって、私、三高との第一試合はちゃんと見られなかった」
「絶対に榊くんが生きてたら、高校でもバレーしてたと思うんだよね。榊くんってバレーにのめり込んでたから。私、榊くんと付き合ってた時に『バレーと私とどっちが大切なの?』って聞いちゃったことある。恥ずかしいよね」
少し照れくさそうに話す速見さんの顔がやけに不鮮明に見えて。
「あの、場所を変えませんか?」
試合の開始時刻が近づくに連れて、観客席にも人が戻りつつある。
柚乃も私と速見さんの会話を聞いているし……。
私の提案に頷いた速見さんと廊下に出て自販機の横に設置されている壁沿いのソファーへと横並びに腰かけた。
気持ち小声で速見さんが話し出す。
「私ね、榊くんにフられてからも榊くんのこと好きだった」
「……」
「でも、明紗ちゃんが中学に入学してから、榊くんって明紗ちゃんしか眼中にないって思い知った。私がクリスマス前にフラれたのもこれが理由なんだなって」
「……」
「明紗ちゃんをチアに勧誘した時かな。実際に明紗ちゃんを目の当たりにしたら、これは榊くんも本気で好きになるわって納得できた。もちろん見た目だけじゃないよ」
「……」
「私ね、榊くんが亡くなってから、『人っていつ死んでもおかしくない』んだって、そんな当たり前のことに改めて気づかされたっていうか……。どこか身近じゃなかったんだよね。だからいろいろなことを先延ばしにしないで今やらないとって思えるようになったんだ」
速見さんの言葉が耳から身体中に浸透していく。
流星が亡くなってから、お兄ちゃん以外の誰かと流星のことを話すのは初めてだった。
お兄ちゃんとも話せなくなってしまって自分の中だけで抱え込んでいたから。
「三高のエースの久瀬蓮くんっているでしょ?」
「はい」
「久瀬くんのバレー、榊くんに似てるの。というか、ほぼ榊くんなんだよね」
蓮先輩のバレーが流星に似ている?
「久瀬くんって河津中出身なんだけど、青中と練習試合が何度かあって、榊くんと交流があったの。榊くんはエーススパイカーで左利き、久瀬くんも左利きで同じ榊くんと同じOH(アウトサイドヒッター)。久瀬くんは榊くんのプレーに憧れていたみたいで、榊くんも榊くんで久瀬くんのこと気に入ってたって聞いた」
蓮先輩が三高の男子バレー部の二年生エースって時点で、まったく何も思い当たらなかったわけではなかった。
だから最初はなるべく蓮先輩と関わりたくないと思っていた。
『河津中との練習試合の時、相手の2年に俺みたいな選手になりたい、憧れてるって言ってもらえた。その2年腹立つくらいうまくてさ。しかも、見た目も超絶男前でハイスペックすぎんの。そいつに言われて、俺ほんっと嬉しかったんだよね』
『女の子に告られた時より何倍も興奮した。そいつに俺が三高に行きたいこと伝えたら、そしたら自分もそうするって。あいつと三高でバレーできたら楽しいだろうな。ポジションOHで同じなんだけど、俺が先輩だし、負けてやる気はない』
流星が指していた人物は蓮先輩だったんだ……。
蓮先輩は流星を知っている。
「今日、本当はベンチ入りのマネージャー私の予定だったんだけど、三高も勝ち上がってるから変わってもらったの。どうしても、その、久瀬くんのプレーが榊くんがバレーしていた姿と重なっちゃって……。あのジャンプサーブは榊くんが中学の時アドバイスしてた。どうしても見てると涙腺が緩んじゃって」
速見さんの目から一筋の涙が頬をつたう。
「速見さん……」
「榊くんが生きてたら、久瀬くんみたいにプレーしてたんだろうなって考えちゃって、私、三高との第一試合はちゃんと見られなかった」



