流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 華奢な女の子がショートパンツからすらりと伸びた細くて長い足で階段を下って、こちらに歩いてきた。
 中学生なのか私たちより少し幼いけれど、肩まで伸びた黒髪がよく似合っていてバランスの良い整った顔立ちをしている。

 「志恩って呼び捨て?」

 私の隣で柚乃から不穏な気配を感じる。
 笹沼先輩は柚乃の反応に焦ったようで、

 「あー、違う。蓮の妹の(すい)。今、小学校5年生」

 と、紹介してくれた。
 蓮先輩の妹。
 通りで、年齢の割には大人びた端正な目鼻立ちをしていると思った。

 「もう翠。どんどん一人で行っちゃわないでよ。(りん)を連れてるんだから」
 「お母さん、ごめん」

 後ろから現れたのは四十代くらいの品のいい涼やかな女性と手を繋いだ小学生には満たないくらいの愛らしい女の子。
 この展開からすると、蓮先輩のお母さまと年中の妹さんだ。

 「あ、おばさん。この子だよ。弓木 明紗さん。蓮の彼女」

 挨拶したほうがいいだろうと私が動く前に笹沼先輩が蓮先輩のご家族に私を紹介していた。
 蓮先輩のお母さまと翠ちゃんは何か信じられないものでも見るように口をぽかんと開けて私を凝視していて。

 「初めまして。ご挨拶が遅くなりまして失礼しました。朝比奈第三高校一年生の弓木 明紗です。いつも蓮先輩にはお世話になっています」

 しばらく頭を下げてから、恐る恐る顔を上げると、一時停止ボタンでも押されたようにさっきまでと同じ表情で蓮先輩のお母さまと翠ちゃんが私を見ていた。

 「おばさんも翠も弓木さんに見惚れすぎ。確かに弓木さんって綺麗すぎるとは思うけど」

 笹沼先輩が笑いながら言う。

 「お兄ちゃんから彼女が美人だとは聞いてたけど、ここまでレベチで綺麗だと思わなかった。お兄ちゃんの彼女がかわいすぎるって友だちに自慢したい!」
 「こちらこそ、いつも蓮がお世話になっています。蓮、ぜんぜん愛想ないしバレーばかりやってるし女心わからなそうだから、明紗さんに迷惑をかけていないかしら」
 「そんなことないです。私にはもったいないくらいすてきな方だといつも思っています」
 「お兄ちゃん、最近いつも機嫌がいいのは、こんなに綺麗な彼女ができたからだったんだ」

 どうやら私は蓮先輩のご家族に温かく歓迎してもらえているみたいでホッとした。
 けど、本当に蓮先輩と付き合っているわけでもないのに、心苦しくもある。
 一番下の妹の(りん)ちゃんはおにぎりポリスのTシャツを着用中。
 余り喋らないのかと思ったけど、柚乃と並んで席に座ったら、私の膝の上がいいと言い出した。

 「鈴。明紗さんにご迷惑でしょ」
 「大丈夫です」
 「本当にごめんなさい。いつでも下ろしてね」

 私の膝の上に乗った鈴ちゃんは驚くほど軽くて、落ちないように後ろからぎゅっと手を回すと、振り向いてこぼれそうなくらい大きな瞳を私に向けて笑顔を作った。
 幼児と呼ばれる子と余り関わることがなかったけれど、胸をギュッと掴まれる。
 蓮先輩の家族なだけあって、お母さまも翠ちゃんも鈴ちゃんも美形だし、何より優しい。
 鈴ちゃんを膝の上で抱っこしながら柚乃と時おり話していたら第一試合が始まった。
 スポーツを直に観戦するのは久しぶりだったけど、一体感ってこういうことなのかと改めて思い知る。
 一球、一球、対戦校もこちら側も応援席の盛り上がりが凄まじい。
 私は鈴ちゃんを抱っこしながらだったから気を付けていたけれど、点が決まれば柚乃も周りも立ち上がって喜んでいる。
 そして、何より蓮先輩が圧倒的にすごい。
 ジャンプサーブなんてボールの形が変わってみえるほど、目に見えないくらいの速度で強烈に相手コートに突き刺さるし、高さを武器にしたパワー溢れるスパイクは圧巻だった。

 「志恩先輩には内緒にしてね。これはみんな久瀬先輩に惚れるよね」

 柚乃が私の耳元で内緒話をする。
 第一試合は2セット先取して三高が見事に勝利をおさめていた。