流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 「柚乃、弓木さん。おはよう。来てくれてありがとう。ここまで迷わなかった?」

 笹沼先輩が男子バレー部が固めている前方の座席から抜け出し、階段を上がって柚乃と私に寄ってきてくれた。

 「志恩先輩、おはよう。明紗が居てくれたから迷わなかったー! この辺りだったらどこに座ってもいいの?」
 「空いてるところだったらどこでもいいよ。たぶんこれから観客もっと増えてくるから席とっちゃって」
 「うん。4校で総当たりして上位2校がインターハイ出場でいいんだよね?」
 「そう。よく柚乃、覚えてたな」
 「志恩先輩、ひどい。ユズこれでも三高の入試突破してるんだから」

 笹沼先輩と柚乃の会話を聞きながら、アリーナのコートで練習している男子バレー部の面々を観客席から眺める。
 黒いユニフォーム姿の蓮先輩を見るのは、これが初めてだった。
 背番号は7。
 ユニフォーム姿でいつもより肌の露出が多いけれど、ちゃんと鍛錬されている身体だと一目でわかった。
 練習しているだけでエースの風格が備わっている。
 蓮先輩って黒がとても似合う。
 三高のバレー部が黒いユニフォームだってことは知っていた。

 『ずっと頭に思い描いてきた。春高で三高の黒いユニフォーム着て、プレーしてる自分の姿』

 流星が言っていたから。
 生きていたら流星は高校3年生になっていたはずで。
 きっと、あのコートに黒いユニフォームを着た流星の姿があったんだろう。
 こうやって、また流星のことを考えてしまうから、応援に来るのが怖かった。
 コート上の蓮先輩が目線を上昇させる。
 私とぴたりと目が合った。
 蓮先輩が私に向かって手を振ってくれた。
 私も振り返そうかと手を胸元まで上げた時。

 「きゃー久瀬くん! かっこいい!」
 「今、私に向かって手を振ったんだって」
 「いや、私だって」

 近くに座っていた観客の女の子たちが興奮した様子で騒ぎ出す。
 私服の子もいるけど、様々な制服を着ている同世代くらいの女の子の集団。
 7、8人くらい固まっている。

 「あの子たち、蓮のファン」

 笹沼先輩が私に声を潜ませて、教えてくれた。

 「そうなんですか」
 「うん。大学生も社会人も居るんだよね。一般客も観戦できる日は毎回見る」
 「やっぱり久瀬先輩って校外でもモテるんだ」
 「あの卓越した見た目でバレーの実力もあるから。全国区の大会には進めていないけれど、全日本ユース候補の強化合宿に1年の時呼ばれてたし、特に関東ではある種の有名人」
 「久瀬先輩への取材にもきてたよね」

 手を振り返しそびれたまま、蓮先輩は練習に戻ってしまった。
 でも、私が来ていることは気がついたはず。

 「あー志恩、見っけ! おはよう!」