その蓮先輩の電話越しの低い声からは嬉しさと疲労がにじみ出ている。
笹沼先輩は試合に出られていないと言っていたけれど、蓮先輩は試合に出ていたはず。
結果がわかって、割とすぐに電話してきてくれているんだろう。
『いきなり電話して悪い。明紗、今、大丈夫だったか?』
「私、今は父と一緒にいて」
『あ、悪い。俺、挨拶とかしたほうがいい?』
「大丈夫です」
すぐに電話を切ったけれど、蓮先輩の高揚感は充分に伝わってきた。
それだけバレーというスポーツに全身全霊を懸けてきたんだとわかる。
お父さんに蓮先輩のことを何か質問されるかと身構えたけど、お父さんは何も聞かずにいてくれた。
平常心に戻ってくると、次の日曜に試合会場まで来てほしいと蓮先輩に誘われていたことが思い出される。
私が応援に行ってもいいものなのか。
一人で考えを巡らせながら、お父さんとお買い物に寄ってから帰宅して、久しぶりにお父さんとお母さんに手料理を振る舞った。
次の日曜のリーグ戦に行くべきか堂々巡りを繰り返しすぎて、ふと気づく。
私のためらいは何なんだろうと。
自分が通っている高校や蓮先輩を応援しに行くだけ。
おかしいことなんて何一つないはずなのに。
そこに流星の幻を重ねるのがつらい。
流星もここに居たかったんだろうと思うのが苦しい。
男子バレー部の練習を見学することに慣れてきてはいる一方で、常にどこか複雑な気持ちに支配されているのは変わらない。
立ち止まっているわけでもなく、私なりに流星が居なくなってからも懸命に生きている。
それでも、誰よりも流星に会いたくて仕方なかった。
「明紗。日曜日は会場の最寄り駅で9時にユズと待ち合わせしよ。第一試合の開始が9:30なんだって。日曜日に早起きするの久しぶり。起きられるかな」
翌朝、1年A組の教室に登校した途端、柚乃はご機嫌な様子で「おはよう」も交わす前にそう提案してきた。
「私、日曜日は……」
「こういう部活動の応援って私服のほうがいいのかな? でも学校に関わっているから制服で行ったほうがいい? 明紗どっちにする? ユズ、明紗の私服見たい」
「……制服にしておく」
散々迷っていたくせに、私が選択する前に柚乃に行くことを決めさせてしまった自分がズルく感じた。
そんな私のズルい選択を蓮先輩は喜んでくれる。
「──明紗が応援に来てくれるのマジで嬉しい」
今日も昼休みに笹沼先輩、柚乃、蓮先輩と過ごしている時、そう蓮先輩が笑顔で言ってくれたのを見て、うしろめたさを感じた。
「昨日、突然電話かけて悪い」
「大丈夫です」
「何か言われた?」
私のお父さんにという意味だろう。
「父は何も知らないので」
蓮先輩とのことはお父さんにもお母さんにも話していない。
そもそも表向きだけ恋人だなんて話そうと思っていなかった。
「そうだよな」
蓮先輩の端正な面立ちに陰りがさしたように見える。
「俺、家族に明紗のこと彼女だって話してる」
「そうなんですか」
「表向きだとしても伝えてあるだけ」
「……」
「日曜、俺の母親と妹たちも会場くる。もし、顔を合わせたら明紗は適当に話を合わせてくれるだけでいい」
蓮先輩は自分の家族に私のことを話してくれているんだ。
それほど家族仲が良好なんだとわかる一方で私との温度差に申し訳なくなる。
笹沼先輩は試合に出られていないと言っていたけれど、蓮先輩は試合に出ていたはず。
結果がわかって、割とすぐに電話してきてくれているんだろう。
『いきなり電話して悪い。明紗、今、大丈夫だったか?』
「私、今は父と一緒にいて」
『あ、悪い。俺、挨拶とかしたほうがいい?』
「大丈夫です」
すぐに電話を切ったけれど、蓮先輩の高揚感は充分に伝わってきた。
それだけバレーというスポーツに全身全霊を懸けてきたんだとわかる。
お父さんに蓮先輩のことを何か質問されるかと身構えたけど、お父さんは何も聞かずにいてくれた。
平常心に戻ってくると、次の日曜に試合会場まで来てほしいと蓮先輩に誘われていたことが思い出される。
私が応援に行ってもいいものなのか。
一人で考えを巡らせながら、お父さんとお買い物に寄ってから帰宅して、久しぶりにお父さんとお母さんに手料理を振る舞った。
次の日曜のリーグ戦に行くべきか堂々巡りを繰り返しすぎて、ふと気づく。
私のためらいは何なんだろうと。
自分が通っている高校や蓮先輩を応援しに行くだけ。
おかしいことなんて何一つないはずなのに。
そこに流星の幻を重ねるのがつらい。
流星もここに居たかったんだろうと思うのが苦しい。
男子バレー部の練習を見学することに慣れてきてはいる一方で、常にどこか複雑な気持ちに支配されているのは変わらない。
立ち止まっているわけでもなく、私なりに流星が居なくなってからも懸命に生きている。
それでも、誰よりも流星に会いたくて仕方なかった。
「明紗。日曜日は会場の最寄り駅で9時にユズと待ち合わせしよ。第一試合の開始が9:30なんだって。日曜日に早起きするの久しぶり。起きられるかな」
翌朝、1年A組の教室に登校した途端、柚乃はご機嫌な様子で「おはよう」も交わす前にそう提案してきた。
「私、日曜日は……」
「こういう部活動の応援って私服のほうがいいのかな? でも学校に関わっているから制服で行ったほうがいい? 明紗どっちにする? ユズ、明紗の私服見たい」
「……制服にしておく」
散々迷っていたくせに、私が選択する前に柚乃に行くことを決めさせてしまった自分がズルく感じた。
そんな私のズルい選択を蓮先輩は喜んでくれる。
「──明紗が応援に来てくれるのマジで嬉しい」
今日も昼休みに笹沼先輩、柚乃、蓮先輩と過ごしている時、そう蓮先輩が笑顔で言ってくれたのを見て、うしろめたさを感じた。
「昨日、突然電話かけて悪い」
「大丈夫です」
「何か言われた?」
私のお父さんにという意味だろう。
「父は何も知らないので」
蓮先輩とのことはお父さんにもお母さんにも話していない。
そもそも表向きだけ恋人だなんて話そうと思っていなかった。
「そうだよな」
蓮先輩の端正な面立ちに陰りがさしたように見える。
「俺、家族に明紗のこと彼女だって話してる」
「そうなんですか」
「表向きだとしても伝えてあるだけ」
「……」
「日曜、俺の母親と妹たちも会場くる。もし、顔を合わせたら明紗は適当に話を合わせてくれるだけでいい」
蓮先輩は自分の家族に私のことを話してくれているんだ。
それほど家族仲が良好なんだとわかる一方で私との温度差に申し訳なくなる。



