流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 逃げのような回答をしてしまった。
 蓮先輩に芽生えた罪悪感がトゲのように胸の真ん中へと刺さる。

 『何か、久瀬先輩って明紗のこと好きじゃない?』

 以前、柚乃に言われた時は否定したけれど、近頃は私もそうなのかと全く思わないわけじゃない。
 表向きの恋人同士ってだけじゃなくて蓮先輩は私を特別扱いしてくれていると思う。
 蓮先輩には好きな人が居る。
 それが私だと断言するほどの自信はないし、私の勘違いであってほしいと目を背けた。
 だって、気づいてしまったら蓮先輩とは一緒にいられない。
 永遠に伝えられなくなってしまった流星への気持ちが私から消えることなんてないのだから。

 その日の夜にはお父さんが一時帰国した。
 時差ボケがつらいとその日はすぐに眠ってしまったけれど、土曜日はお母さんも含めて3人で食事に行ったり、お父さんに英語スピーチの下書きの添削をしてもらった。
 日曜日はお父さんと2人でドライブも兼ねて、お父さんの実家であるおじいちゃんとおばあちゃんに会いに隣の県まで足をのばした。
 お父さんの実家は病院で私の祖父母は2人とも医者。
 お父さんは男ばかり4人兄弟でお父さん以外は医師になっている。
 そんなお父さんが何で医学の道に進まなかったのかはまだ知らない。
 私の将来の道が決まった時に聞いてみたいとは思う。

 「明紗は本当に俺の実家に愛されているな」

 時刻は15時を過ぎ、私はお父さんが運転する車の助手席に居た。

 「食べ過ぎた」

 おじいちゃんとおばあちゃんの家ではお昼に料理をたくさん出してくれたし、手土産まで後部座席にぎっしり並んでいる。
 お父さんの兄弟が男だけだったこと、私の従兄弟も男ばかりだということも踏まえて、昔からおじいちゃんとおばあちゃんは私を猫かわいがりしてくれた。
 帰宅したら、マンションのフィットネスルームに行って少し運動を多めにしようと思いながらも私はスマホを気にしていた。
 そろそろ男子バレー部のインターハイ予選2日目の結果がわかる頃なんじゃないかと落ち着かなかった。

 「誰かからの連絡でも待っているのか?」

 ハンドルを握るお父さんに目ざとく指摘される。

 「うん。少し」

 言葉を濁しても、お父さんは私が話さない限り、追加で質問はしてこないタイプ。
 きっとお父さんもお母さんも私とお兄ちゃんの確執は気が付いているはずなのに、踏み込まないまま今に至る。
 それは放任ではなくて私たちの自律性を尊重してくれていると理解はしていた。

 「お父さん」
 「どうした。明紗」
 「私、一生独身でもいい?」

 お父さんは少し間を置いた後、「明紗が選択することなら何でもいいよ」と低い声で答えた。
 流星のことも知っているお父さんは何で私がそんな質問をしたのか機敏に察知してくれているだろう。
 そんな時、蓮先輩と笹沼先輩と柚乃の4人のグループチャットに笹沼先輩から連絡が入った。

 [代表決定戦、進出決定!]

 「やった!」

 思わず小さくガッツポーズしつつ声を出してしまった。
 自分でも自分の咄嗟の反応にびっくりする。

 「ごめん。お父さん」
 「いいよ。明紗、かわいい」

 お父さんが小さく笑う。
 グループチャットでは柚乃が種類の違う「おめでとう」スタンプを連打している。
 私も何か伝えたほうがいいのかと思っていたら、蓮先輩から着信が入った。
 蓮先輩と電話で話したことなんて今までない。
 逸る鼓動を抑えられないまま、お父さんに許可を得てから「もしもし」と電話に出た。

 『見た?』
 「はい。おめでとうございます」
 『明紗には俺が伝えたかったのに、志恩に先こされた』