流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

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 5月の最終土曜日に行われた高校初の体育祭も終わり、暦は6月に突入していた。
 三高は二学期制。
 6月の第一週には前期中間考査があった。
 高校に入学して初めての本格的なテストにあたるため、私も勉学に比重をかけていた。
 そんな中、三高の男子バレー部はインターハイ予選が6月の第二日曜日に1日目が行われ、見事にトーナメントを勝ち上がり、翌週に行われる2日目に駒を進めることが出来たのだという。
 柚乃に一緒に応援に行ってほしいと誘われたけど、1日目は中2までピアノを習っていた奥谷先生と約束があって特別レッスンを受ける予定が前々から入っていたし、2日目の今週末はスペインに単身赴任しているお父さんが一時帰国する日で断らざるをえなかった。
 柚乃は男子バレー部の見学は一人では行かないスタンスらしく、

 「明紗だけがユズのオアシスだから」

 と、謎の理論で私以外の子を誘うという選択肢はないらしい。
 蓮先輩のお弁当の巾着袋にはおにぎりポリスのマスコットがつけられたままだし、顔を合わせれば会話もするし、たまに夜間や休日にメッセージのやりとりもしていた。
 けど、やっぱり蓮先輩はインターハイ予選が始まっているからか、男子バレー部の部活動を見学している時だけじゃなくて、どこか常に張りつめている印象を受ける。
 もちろん私に対しては優しいけれど、それだけ本気なんだろうと不用意には触れられなかった。
 明後日には男子バレー部がインターハイ予選2日目を控えている金曜日の昼休み。
 いつものメンバーである蓮先輩と笹沼先輩、柚乃と私はいつものフリースペースのいつもの座席で四人でランチタイムを迎えていた。
 変わったことといえば、いつの間にか私は柚乃と横並びだったはずが、蓮先輩と横並びになったということ。
 私の正面には柚乃が座っている。

 「弓木さん、中間考査、学年で総合9位だったんだ。三高で一桁順位出せるってすごいね」
 「明紗は来月の英語スピーチ大会もクラス代表でエントリーされてるよね」
 「うん。お父さんが今日の夜には帰国するから、アドバイスもらおうかなと思ってる」

 笹沼先輩にはすごいと言ってもらったけど、中間考査の結果は自分ではあまり納得できていないのが本音だった。
 自分の中でやれるだけ頑張っても9位。
 本当にこの高校では気を抜いたら、どんどん成績は落ちるだろうと気を引き締め直した。

 「明紗のお父さんって仕事でどこに行ってるんだっけ? イギリス?」
 「ううん、今はスペイン」
 「弓木さんって都心の駅直結のタワマンに住んでるって聞いたけど本当なんだ。あんなところどんなセレブが住むのかと思ってた」
 「ユズ。明紗の家、遊びに行きたい」

 目の前で柚乃が挙手をした。
 そういえば私の家への来客って、お兄ちゃんに勉強を教えてもらうために来ていた流星以来ないかもしれない。

 『おい、流星。あまり明紗に絡むなよ。ほら、部屋行って勉強するぞ』
 『はいはい。わかってますって。じゃあね、明紗』

 今は二人とも私の傍から居なくなってしまった。

 「──明紗?」

 隣から蓮先輩に名前を呼ばれ、現実へと戻される。

 「うん。来ていいよ」
 「やったー。今度みんなで明紗の家に行こう」

 私の了承に柚乃は嬉しそうに笑っていた。