流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 クローゼットの奥、ポリプロピレンの半透明のケースのひとつに読み終わった本を収納していた。
 その中におにぎりポリスシリーズの絵本も3冊まぎれている。
 しまいこんでから何年も経過しているはずなのに、意外と状態も良い。
 それくらい幼少期の自分が大事に読んでいたんだとわかる。

 「懐かしい」

 おにぎりポリスの絵本を3冊取り出して、ベッドに座る。
 気がつけばシリーズの一作目から三作目まで、続けて読み切ってしまった。
 おにぎりポリスはポリスといいながら警察らしからぬ奔放な主人公の物語。
 型にはまらずイイコだけじゃない主人公のおにぎりポリスを始めキャラクターも物語も、15歳になった今読んでもとても魅力的で惹きつけられた。
 蓮先輩におにぎりポリスの絵本を再読したって連絡してみようか。

 「……」

 自分の思い至った思考に自分で驚く。
 こんな連絡、私からもらったって蓮先輩も困惑するだろう。
 でも、なぜか蓮先輩に伝えたくなってしまった。
 明日は土曜だし、週末を挟めば今のこの気持ちが冷めることはわかっていた。
 連絡先を交換したきり、蓮先輩と私のチャットルームは空白のまま。
 私から連絡してみようか。
 今日は取材も入ってたし、部活で疲れてるだろうけど、返事をするしないは蓮先輩の自由だ。

 「え……」

 空白のままだったトークルームに蓮先輩からチャットが初めて入った。

 [寝てたら悪い]
 [おにぎりポリス、妹に借りて、とりあえず3冊目まで読んだ]
 [面白かった]
 [絵本の概念 変わった]
 [それだけ]
 [明紗に伝えたくなった]

 矢継ぎ早に蓮先輩から次々と入ってきたメッセージに驚く。
 蓮先輩も私と同じようにおにぎりポリスの絵本を読んで、私と同じように感想を伝えようとしてたってこと?
 余りの偶然に驚きつつ、指先をスマホの画面上で動かしていく。

 [私も家に3冊目まであったので、また読んでみました。
 蓮先輩に連絡しようか悩んでいたら、チャットが入ってきたのでびっくりしました]

 私も素直に自分の気持ちをチャットにしたためて、送信した。

 [明紗が悩む必要ない]
 [いつでも]
 [何でも]
 [連絡してきていい]
 [けど、俺チャット苦手]
 [だいたい既読スルーか]
 [そっけないって、いつも志恩に怒られる]
 [冷たく感じられたらごめん]

 蓮先輩チャット苦手なのにも関わらず、こんなに文字を打ってくれてるんだ。
 しかも私に配慮してくれてるのがちゃんと伝わってる。

 「……」

 どうしよう。
 絶対に私のほうがチャットが苦手だ。
 何を送ったらいいのかわからない。

 [蓮先輩と同じことを考えていたってことが嬉しかったです]

 送信ボタンを押してから、ふと気づく。
 何で私こんなに嬉しいんだろう。
 スマホを握りしめたまま、学習机に向き合う。
 最近は柚乃と男子バレー部の見学に行っている時間の分だけ減った自学自習の時間を休日と睡眠を削って補っていた。
 学習机の引き出しを少しだけ開く。
 そこには流星に渡せなかった私が手作りしたユニフォーム型のお守りが、まるでその身を隠すように眠っていた。
 舞い上がりすぎないようにしよう。
 蓮先輩には好きな人がいる。
 それに浮かれた自分は何だか流星を裏切っているように感じられてしまった。