流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 聞いていないよ。
 そんなベタなつっこみをする間もなく笹沼先輩と柚乃は図書室に向かって行ってしまう。
 久瀬先輩と私、二人だけを四人掛けの席に残して。

 「……」
 「……」

 気まずい以外に言葉が見つからない。
 さっきの体育の後のことがあったせいか昨日よりも気づまりに感じられる。
 久瀬先輩が食べ終わったお弁当箱を黒い巾着袋に閉まっていく。
 その巾着袋には昨日までなかったはずの小さいマスコットがつけられていた。

 「あ、」

 思わず声を上げた私に久瀬先輩は目線を私に向けることで反応を示した。

 「これっておにぎりポリスですか?」

 警察の扮装をしたおにぎりの形をしたマスコット。
 児童書で人気のキャラクターだ。
 私も子どもの頃におにぎりポリスシリーズの絵本が何冊か家にあった。
 クールな久瀬先輩に不釣り合いすぎる幼児用のマスコットではあるんだけど。

 「これは妹が勝手につけたらしくて」

 口を手で覆って、珍しく久瀬先輩が狼狽している。
 心なしか耳の辺りが赤くなったように見えた。

 「久瀬先輩、妹さんが居るんですか?」
 「ああ。小5と年中。たぶん下のほうが勝手に俺の荷物を触りたがるから」

 久瀬先輩はそんなに歳の離れた妹が居るお兄ちゃんなんだ。

 「この間、登校したら部活のバッグにメルちゃんが入ってた時は流石にビビった」

 普段クールな久瀬先輩のバッグからメルちゃん。
 しかも学校で。
 ギャップがありすぎる現場を想像してしまって、思わず笑顔になってしまった。

 「明紗って笑うんだな」
 「普通に笑います」

 私は久瀬先輩に笑わないと思われていたのだろうか。
 感情を表情にのせるのは不得手ではあるけれど。
 確かに久瀬先輩の前でちゃんと笑ったことはなかったかもしれない。
 
 「おにぎりポリス懐かしい。私、好きでした」

 指先で久瀬先輩のお弁当袋にくっついているおにぎりポリスを前からつつく。
 少し憎らしくも憎みきれない愛されるキャラクターで、ひらがなを読めるようになってからは繰り返し絵本を読んでた気がする。
 そんな私のことを、久瀬先輩は鋭い双眸を細めて見つめていた。
 思いの外、優しい眼差しに胸の中心が跳ねる。

 「すみません。私、つい触りたくなってしまって」
 「いや、いいって。何か安心した」
 「安心?」
 「心を開かないって先に言われてたから、どう明紗に接していいのかわからなかった」

 そう言われて、はっと気づく。
 もしかして、表向きの彼氏彼女になってから久瀬先輩が私に無関心に見えたのはそれが理由。
 久瀬先輩なりに私に対して気を遣っていたってこと?

 「名前も急に悪い。彼女を弓木さんって呼んでるのも不自然だと思ったから」
 「大丈夫です。わかってます」
 「俺も蓮でいいから」
 「さすがにそれは……」

 ──年上だし、生意気だと思われそう。

 そう言いそうになって唇を結ぶ。
 私は同じことを流星にも言っている。