流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 ***

 私と久瀬先輩が表向きだけ彼氏彼女となってから1週間が経過。
 三高では私が男子に呼び出されることも告白されることも嘘みたいにぱったりなくなった。
 気持ちに応えられず、断ってばかりなのは気が咎めていたから、肩の力を抜くことが出来た。
 高校に入学してからの日々は環境の変化だけじゃなく、自分で思ってた以上に私の心に負荷をかけていたらしい。
 周りが早くも久瀬先輩と私は三高の公認カップルとなっていると教えてくれた。
 昼休みは笹沼先輩と柚乃と4人で過ごし、放課後は柚乃と男子バレー部の練習を見学してから下校する毎日。
 笹沼先輩と柚乃はお互いの呼び方が「志恩先輩」「柚乃」といつの間にか変化していたし、柚乃は笹沼先輩への敬語がとれていた。
 着実に笹沼先輩と柚乃の距離が近づいていると、わかりやすすぎるくらい如実にわかる一方で。
 そんな二人の隣で久瀬先輩と私の間に会話らしい会話はゼロと言っても過言ではない。
 久瀬先輩と連絡先は教え合ったものの、学校内外関わらず、連絡を取り合うことなんてもちろんなかった。

 「明紗ちゃんって、いったい何が出来ないの?」

 冴え渡るほど澄み切った青空の下、暑すぎもしない適温の中で、3時間目は体育だった。
 数日前から体育の時間内に進めていた体力テストの項目を今日も順番に進め、持久走で全て終了となった。
 クラスメイトの女の子たちが体力テストの最終結果を見ながら、賑やかに騒いでいる。

 「握力だけ8点で、あとは全項目10点満点。文句なしの総合A評価。明紗ちゃんって頭が良いだけじゃなくて、運動神経まで抜群なんだね」
 「そうなの。ユズの明紗はすごいの!」
 「柚乃のじゃなくて、明紗ちゃんは久瀬先輩のものでしょー!」

 握力ってどうしたら鍛えられるのか考えていた時に鼓膜に運ばれた久瀬先輩ってワード。

 「久瀬先輩と明紗ちゃんってお似合いすぎだよね」
 「けど、男子は本気で泣いた人が多かったみたいだよ。あの三高の姫君・弓木明紗に特定の彼氏が出来たって」
 「泣きたい気持ちはちょっとわかるかも。推しのアイドルに彼氏が発覚みたいな感じ?」
 「自分が付き合えるわけじゃないのはわかってるけど、イヤなものはイヤだよねー」
 「相手が久瀬先輩だから、引き下がるしかないんだろうけど」
 「ねぇ、明紗ちゃんって久瀬先輩が初めての彼氏?」

 出し抜けに私に質問されて、びくっと肩が跳ねた。
 初めての彼氏……。
 久瀬先輩と実際は付き合っていないけど、それは間違っていない。
 流星とは一緒に過ごしていたかもしれないけど、付き合っているわけじゃなかった。
 本人から私を好きだと言われたことは一度もない。
 流星の気持ちは確かに伝わっていたのに伝え合う前に流星は……。

 「おーい。誰か校舎に戻る前にハンドボール片づけてきてくれないか」

 体育教師からの声掛けに、

 「はーい。ユズと明紗で行ってきまーす」

 と、柚乃は私の手を引いて、クラスメイトの輪から連れ出してくれた。