流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 久瀬先輩に手首を掴まれた時、直に揺らされたように脳がぐらりと揺れた。
 理由もなしに久瀬先輩は私に触れてくる人だと思えない。

 「──泣き出すのかと思ったから」
 「え?」
 「倒れるまで気を張ってるなよ」

 久瀬先輩の印象的で鋭い双眸に貫かれているような感覚がした。
 何もかも見透かしてしまいそうな漆黒の瞳。
 もう泣かないと決めた私が泣くのかと思ったと。
 私が気を張っていると。
 そう久瀬先輩は言っている。
 もっとしっかりしないと。
 いたたまれなくなって、瞼を伏せた。

 「──私、心を開かないと思います」

 そう久瀬先輩に伝えると、私の言葉が予想していなかったものだったからか、久瀬先輩は黙っていた。

 「すみません。失礼ですよね」
 「いや、むしろ先に言うなんて誠実だろ」

 久瀬先輩はその綺麗な顔に苦笑いを浮かべた。

 「心配しなくても、俺は弓木さんに手を出さない」
 「久瀬先輩はいいんですか?」

 表向きだけでも私が彼女で久瀬先輩は困らないのか心配になる。
 だって久瀬先輩は好きな人が居るから告白を断っているはずで。

 「俺はいいって言っただろ」
 「……」
 「嫌になったら、いつでも辞めればいい」
 「わかりました」

 そう頷いた私は自分でも冷静なのか冷静じゃないのかわからない。
 表向きだけ久瀬先輩の彼女なんて、どうかしているのかもしれない。
 私たちを待ってくれていた笹沼先輩と柚乃がとても喜んでいたけれど、本当に久瀬先輩と付き合ったわけでもなく。
 何となく宙を踏むような心地のまま夜を越し、翌日登校してすぐに異変に気がついた。

 「明紗ちゃん! バレー部の久瀬先輩と付き合ってるって本当!?」

 校門をくぐってすぐにクラスメイトの女の子中心に大人数の女子に囲まれた。
 どれだけ情報が早いのか驚く暇もなく。

 「うん。本当」

 そう素直に答えてよかったのか不安になる。
 久瀬先輩は人気があるから女の子の集団に非難されるかと思ったけれど。

 「いい!!」
 「久瀬蓮と弓木明紗が恋人同士って最高すぎかよ」
 「美男美女、尊すぎる」
 「二人でカップルチャンネルやってほしい」
 「久瀬くんに彼女なんてありえないと思ってたけど、相手が弓木明紗ならあり!」
 「先輩。明紗ちゃんのこと呼び捨てになってますって」
 「弓木明紗ちゃんって別次元すぎて芸能人みたいでつい」

 久瀬先輩の影響力の大きさは想像以上で、何の呼び出しも受けずに昼休みを迎えられるのは久しぶりだった。