流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 まだ保健室のベッドに上半身を起こしただけの私は笹沼先輩から突然話を振られて、すぐに反応できなかった。

 「弓木さん。蓮の彼女ってことにしておいたらいいんじゃない?」

 笹沼先輩が続けた台詞は私をますます困惑に陥れた。

 「弓木さん、告白されすぎて大変でしょ? 蓮もそうなんだよ。二人が付き合ってるってことにすれば、だいぶそれがおさまるんじゃないかって。それぞれ三高で一番モテる美男美女の二人がくっついたら、みんな納得するしかないって」
 「それいい! そしたら明紗が告白で呼び出され続けることもなくなるし、ユズとの時間が減らなくて済む」
 「俺と綾瀬が蓮と弓木さんと4人で一緒に居るのも不自然じゃなくなるし、男子バレー部を綾瀬と弓木さんが見に来ていてもおかしくない。誰も損しない……むしろ相互利益しか生まないと思うけど」
 「ユズまだ笹沼先輩と会う時、明紗に一緒に居てほしいから、そうしてくれるとユズ嬉しい」

 喜びが全身から溢れ出ている柚乃はベッドに腰かけて、私に抱き着いてきた。

 「え、でも……」

 私が久瀬先輩の彼女……ということにしておくだけだけど。
 確かに高校に入学してから絶えず呼び出しを受けている状態は落ち着けないし、この間みたいに話の通じない人に絡まれるのは困る。
 けれど、すんなりと受け入れていい提案だとも思えなかった。

 「実際に蓮と付き合えって言っているわけじゃないんだし、蓮と弓木さん双方……むしろ俺たちも含めて三方よしだと思うんだよな」

 躊躇している私に笹沼先輩の説得は続く。
 でも、久瀬先輩には好きな人が居るみたいだし、私が彼女って形だけでも困るはず。

 「──俺はいいよ」
 「?」

 ずっと黙していた久瀬先輩が口を開いて、思わず目線を交し合う。

 「弓木さん、俺の彼女になれば?」
 「……」
 「表向きだけ、だけれど。俺も助かる」

 他ならぬ久瀬先輩本人にも同意されて、余計にどうしたらいいのかわからなくなった。

 「少し蓮と二人で話しなよ。綾瀬、俺たちはちょっと部屋から出て居よう」
 「あ、はい……!」

 ごく自然に柚乃の手を握る笹沼先輩と頬に赤みが刺した柚乃は保健室を退室してしまう。
 久瀬先輩と二人だけの空間に静けさが充満している。
 二人で残されたところで、どうしたらいいのかわからない。

 「俺が彼氏だと不服か?」
 「全く、そういうわけではないんですけど」

 久瀬先輩の好きな人はいいのか心配になる。
 あれは告白を断るための虚言じゃなくて、久瀬先輩には好きな人が居るんだと思う。

 「何で今日のお昼、私を引き留めたんですか?」