流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 だって、あれは流星の受け売りだった。
 私の中学校入学式の日、在校生代表として話した流星の言葉を借りた。
 そう言った流星は中学の卒業式を迎えられなかった。
 その先の未来すら全て泡沫のように消えてしまった。
 いけない。
 今、流星のことを考え始めたら、止まらなくなってしまう。

 「私、行ってこないと」

 空になったお弁当箱を片付け始める。

 「え? 弓木さんどうしたの?」
 「明紗はまた告白の呼び出しなんだよね。ほんっと昼休みはほぼ毎日なんだよ。だからユズとの時間削られて迷惑」
 「自分に告白してくるなとも言えないしね」

 笹沼先輩が苦笑混じりに言った。

 「明紗、すぐ戻ってきて」
 「柚乃、ごめん。今日二人なの。教室に直で戻る」
 「告白のはしご? 弓木さんって本当にモテるんだね。一度バレー部に見学に来ただけでニュースになるし、周りに騒がれすぎて弓木さん疲れない?」

 ランチクロスで包んだお弁当箱を両手で抱き込んで立ち上がった私に、笹沼先輩から質問が飛ぶ。

 「私は大丈夫です」

 会釈をして、その場を立ち去ろうと進めた足は、予期せぬ出来事に止められる。
 手首に加わった強い力は簡単に振りほどけるものではなく。
 まるで私を引き留めるように久瀬先輩に手首を掴まれていた。
 下から私を貫くように久瀬先輩から据えられた鋭い視線。
 瞬間凍結されたように身体の動きが停止してしまう。

 「――悪い」

 久瀬先輩からはたった一言。
 手首が解放されてからも私はしばらくその場に立ち止まったままでいた。

 「弓木さんに何やってんだよ。蓮」
 「私、行きますね」

 久瀬先輩の言葉を待たずに足早にフリースペースから立ち去って、自分の姿が見えないだろうところまで到達して歩行スピードを落とす。
 いったい久瀬先輩は何なんだろう。
 全く私と会話する素振りも見せなかったのに、いきなり不意打ちで手首を掴まれた。
 意表をつかれすぎているせいか、私は動揺している。
 そんな自分に自分で当惑してしまう。
 でも、柚乃は笹沼先輩と晴れて彼氏彼女の関係になったわけだし、ランチ中の仲睦まじい様子だと私がもう付き添う必要なんてない。
 久瀬先輩には関わらないでいられる。
 そう思っていたのだけれど……。
 屋上庭園で2人へと順番に告白をお断りした後に教室へ戻ってくると、まだ昼休憩の終了時間まで10分はあるのに柚乃が落ち込んだ様子で自席に居た。

 「明紗、あのね……」

 半べその柚乃は笹沼先輩とのランチで私が立ち去った後、笹沼先輩と驚くほどに喋れなくなったらしく、いたたまれなくなって脱走したと話してくれた。

 「しばらく明紗が隣に居ないとユズ無理みたい。一生のお願いだから、今日もバレー部の見学付き合ってほしい」