流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 対面の空いていた椅子に、柚乃と二人で腰かけた。
 柚乃の前には笹沼先輩が居て、私の前には久瀬先輩が居る。

 「蓮にしか言っていないはずなのに、俺と綾瀬が付き合い始めたこと、何かみんなに聞かれるんだよね」

 それぞれお弁当箱を広げて食しながら、笹沼先輩が疑問を浮かべた。

 「ユズが言っちゃったんです。昨日、明紗が何でバレー部の見学に行ってたか話題になっちゃってたから」
 「それでか。別に隠すつもりなんてないし、綾瀬が俺の彼女だってみんなに早く知ってもらえて嬉しいよ」
 「笹沼先輩……」

 柚乃と笹沼先輩の会話を聞きながら、男の人のお弁当箱ってこんなに大きいんだと着目していた。
 中学の時は給食だったから、お兄ちゃんのお弁当箱というものを見た記憶がない。
 二段重ねのお弁当箱はおかずが彩り豊かで、バレー部って朝練もあると思うから、ご家族の方はいったい何時に起きてこのお弁当を作っているんだろう。
 私はお母さんが注文している栄養価と健康に配慮されているとうたっているメニューが豊富な冷凍宅食をお弁当箱に詰めているだけだった。

 「そういえば、綾瀬は我孫子(あびこ)先生の新刊出るの知ってる?」
 「そうなんですか! 我孫子先生の新作って久々ですよね」
 「推理ゲームのシナリオ監修ばかりやってたからな」

 笹沼先輩と柚乃は二人で会話が盛り上がっている。
 二人の共通の趣味はミステリー小説のほうだとわかったものの、この場は少し気まずい。
 私は久瀬先輩と話していてほしいってことなのかもしれないけど。
 久瀬先輩と私が何を話すというのだろう。
 向こうも我関せずって感じでお弁当を食べているし。
 久瀬先輩って食べ方が綺麗。
 お箸の持ち方が正しいし、口への運び方も巧み。
 不意打ちで久瀬先輩と視線がぶつかって、目を逸らすという選択肢が咄嗟にできなかった。

 「──何?」
 「何でもありません」
 
 あっさりとした会話だけですぐにどちらからともなく視線が解かれる。
 不用意に余り見つめないようにしないと。
 久瀬先輩は好きな人がいるし、私に何の興味もなさそうだけど。
 
 「だから明紗のおかげなの」
 「?」

 不意に柚乃に話をふられて、お箸を持つ腕の動きを止める。

 「明紗がユズに気持ちを伝えてほしい、後悔だけはしてほしくないって言ってくれたから、笹沼先輩にちゃんとユズの気持ちを言わないとって思えたの」
 「実際に行動したのは柚乃なんだから私は何も」
 「ユズね、明紗の入学式の新入生代表挨拶で、『卒業式を迎える日に自分に胸を張れる思い出をたくさん語ることの出来る有意義な3年間を過ごしたい』って言ってたじゃない? あれすごく響いたんだよねー」