流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 柚乃に一人で笹沼先輩を見学するって選択肢はないようだった。

 「笹沼先輩やっぱりかっこよすぎ。部活にうちこんでるところを見て、改めてユズは笹沼先輩好きだなって思わされちゃった」
 「返事するの?」
 「しないとだよね。明紗、どうしよう。ユズ緊張しちゃって笹沼先輩に言えそうにない」
 「私は、柚乃も好きだってちゃんと伝えてほしい」

 柚乃は少し驚いたように隣の私の顔を見上げた。

 「柚乃に後悔だけはしてほしくない」

 好きな人に好きだと伝えられることは当たり前じゃない。
 現実にどれだけ好きでも、もう二度と伝えられなくなってしまうことだってある。
 あるの、実際に。

 「明紗ー。ほんっと大好き」

 柚乃は私の前に回り込み、ちょうど校門を出るところで私に抱きついてきた。

 「ユズ頑張ってみるね」
 「応援してる」

 柚乃の笑顔が余りにも真っ直ぐに胸の奥まで突き刺さってくる。

 その日の夜、寝ようと思ってベッドのヘッドボードにスマホを置く直前、柚乃からチャットが入ってきた。
 笹沼先輩と付き合うことになったと。
 柚乃、頑張ったんだ……。
 嬉しいのと同時にどうしようもない寂寥感に覆われて、夜の闇に飲み込まれそうになる。
 いつも夜が来るたびに思う。
 ──流星に会いたい。
 こんなに苦しいのに私は流星の居ない現実をいつまで生きていたらいいのだろう。
 時間が解決するどころか、どんどん私の中に流星への気持ちが募っていく気がしていた。

 次の日に登校すると、私が男子バレー部の見学に行ったことがなぜか広まっていた。

 「明紗はユズに付き添ってくれただけだよ。ユズね。2年A組の男バレの笹沼 志恩先輩と付き合い始めたの」

 私が何でバレー部の見学に行っていたか知りたがっていたことと相まって、笹沼先輩と柚乃が付き合い始めたことが瞬く間に三高に知れ渡ったらしい。

 「明紗。これからお昼、教室じゃなくてアトリウムのところにあるフリースペースで食べよう」

 そう柚乃に声をかけられた時は気分を変えたいのかなくらいにしか思わなかった。
 フリースペースに複数設置されている机と椅子のセット。
 ほとんどの席が男女問わず生徒で埋められていたけれど、

 「綾瀬。こっちー」

 と、四人掛けのテーブルを確保して横並びに座っていた笹沼先輩と久瀬先輩を見つけるまでは、いつもと同様に柚乃と二人でランチするものだと思っていた。

 「笹沼先輩」

 相も変わらず笹沼先輩の前で乙女に切り替わる柚乃と一緒に立ち止まる。

 「笹沼先輩たちも一緒なの?」
 「うん。そうだよ」
 「言っておいてくれると嬉しい」
 「あれ? ユズ、明紗に言ってなかった? 笹沼先輩とのランチ緊張するから明紗もついてきてって」

 絶対に事前に聞いていないはず。
 しかも笹沼先輩と柚乃に付き添うだけじゃなくて、久瀬先輩まで一緒にいる。