また私は久瀬先輩に助けられた形だ。
たまたま、毎回そこに私が居るだけだとは思うんだけど……。
40分ほど練習が続き、休憩時間に入ったようで、
「綾瀬。来てくれてありがとう」
と、笹沼先輩がドリンクボトルを片手に柚乃に歩み寄ってきた。
「ユズが来たくて来たんです。明紗も付き添ってくれてるから」
瞬間的に顔を真っ赤にして俯いた柚乃は私の手をぎゅっと力強く握ってくる。
「弓木さんもありがとう。ごめんね、さっき嫌な思いさせちゃった?」
笹沼先輩は部活で汗をかいているにも関わらず清涼感たっぷりの笑顔を私にも向けてくる。
近くで見ても春風のように軽やかでさわやかな人。
ふるふると首を横に振って答えておいた。
「弓木さんが見学に来て部員のみんなが舞い上がる気持ちもわかんなくないけどね。蓮がキレたから、これからはないと思うから懲りずにまた綾瀬に付き合ってあげて」
「別にキレてねぇだろ」
笹沼先輩の背後から笹沼先輩が蓮と呼ぶ久瀬先輩が近づいてきた。
やっぱりどことなく圧倒されるオーラを放出していて、自然と臆してしまう。
「いや、俺もあれはどうかと思ったけど、普通にバレーボールを蓮の怪力で投げつけるのは怖いって。1年なんか縮み上がってたじゃん」
「壁だろ。インターハイ予選近いのに真剣に練習やらねぇのがイラつくんだよ」
「三高の姫君と少しでも関わり合いたくて悪ふざけしちゃったんだって。ほら、弓木さんには、みんなフラれること前提で告白してるらしいし」
「そういうの全部、弓木さんに対して失礼だろ」
久瀬先輩の一言に思わず息を呑んだ。
誰よりも私自身のことを重んじてくれてるのがわかったから。
「はい。休憩終わりー集合ー」
恐らく部長の3年生が第二アリーナ全体に響くような声を発する。
「じゃあね、綾瀬と弓木さん。さっきみたいなことはもうないと思うからゆっくり見て行ってよ」
「明紗は塾があるから、そろそろユズも明紗と帰ると思います」
「そうなんだ。好きな時に帰るといいよ。綾瀬に夜、連絡してもいい?」
「……はい。笹沼先輩」
笹沼先輩と柚乃の会話から私にまで漂ってくる甘酸っぱいムード。
久瀬先輩は笹沼先輩と練習に戻ろうと背中を向けた。
「久瀬先輩」
私の声に律儀にも歩みを止めて、振り返ってくれた久瀬先輩。
相手を威圧するような鋭い双眸に一瞬たじろぎそうになるけれど、お礼だけはちゃんと伝えたかった。
「あの、ありがとうございました」
私は何度、久瀬先輩にお礼を伝えているのだろうか。
でも、久瀬先輩のさっきの私に失礼だろって気遣ってくれた言葉が単純に嬉しかった。
たぶん久瀬先輩は私には関係ないって返すと思うけれど。
「──別に。悪いのはこっちだろ」
久瀬先輩は”別に”が口癖なのだろうか。
確かにはっきり言うし、オーラは怖いけど、冷たい人でないのはしっかり伝わっていた。
私と柚乃は第二アリーナを静かに抜けて、駅までの道を一緒に帰宅する。
「明紗。一緒に来てくれてありがとう」
「ううん。まだ見ていなくて良かったの?」
「明紗が隣に居ないと無理」
たまたま、毎回そこに私が居るだけだとは思うんだけど……。
40分ほど練習が続き、休憩時間に入ったようで、
「綾瀬。来てくれてありがとう」
と、笹沼先輩がドリンクボトルを片手に柚乃に歩み寄ってきた。
「ユズが来たくて来たんです。明紗も付き添ってくれてるから」
瞬間的に顔を真っ赤にして俯いた柚乃は私の手をぎゅっと力強く握ってくる。
「弓木さんもありがとう。ごめんね、さっき嫌な思いさせちゃった?」
笹沼先輩は部活で汗をかいているにも関わらず清涼感たっぷりの笑顔を私にも向けてくる。
近くで見ても春風のように軽やかでさわやかな人。
ふるふると首を横に振って答えておいた。
「弓木さんが見学に来て部員のみんなが舞い上がる気持ちもわかんなくないけどね。蓮がキレたから、これからはないと思うから懲りずにまた綾瀬に付き合ってあげて」
「別にキレてねぇだろ」
笹沼先輩の背後から笹沼先輩が蓮と呼ぶ久瀬先輩が近づいてきた。
やっぱりどことなく圧倒されるオーラを放出していて、自然と臆してしまう。
「いや、俺もあれはどうかと思ったけど、普通にバレーボールを蓮の怪力で投げつけるのは怖いって。1年なんか縮み上がってたじゃん」
「壁だろ。インターハイ予選近いのに真剣に練習やらねぇのがイラつくんだよ」
「三高の姫君と少しでも関わり合いたくて悪ふざけしちゃったんだって。ほら、弓木さんには、みんなフラれること前提で告白してるらしいし」
「そういうの全部、弓木さんに対して失礼だろ」
久瀬先輩の一言に思わず息を呑んだ。
誰よりも私自身のことを重んじてくれてるのがわかったから。
「はい。休憩終わりー集合ー」
恐らく部長の3年生が第二アリーナ全体に響くような声を発する。
「じゃあね、綾瀬と弓木さん。さっきみたいなことはもうないと思うからゆっくり見て行ってよ」
「明紗は塾があるから、そろそろユズも明紗と帰ると思います」
「そうなんだ。好きな時に帰るといいよ。綾瀬に夜、連絡してもいい?」
「……はい。笹沼先輩」
笹沼先輩と柚乃の会話から私にまで漂ってくる甘酸っぱいムード。
久瀬先輩は笹沼先輩と練習に戻ろうと背中を向けた。
「久瀬先輩」
私の声に律儀にも歩みを止めて、振り返ってくれた久瀬先輩。
相手を威圧するような鋭い双眸に一瞬たじろぎそうになるけれど、お礼だけはちゃんと伝えたかった。
「あの、ありがとうございました」
私は何度、久瀬先輩にお礼を伝えているのだろうか。
でも、久瀬先輩のさっきの私に失礼だろって気遣ってくれた言葉が単純に嬉しかった。
たぶん久瀬先輩は私には関係ないって返すと思うけれど。
「──別に。悪いのはこっちだろ」
久瀬先輩は”別に”が口癖なのだろうか。
確かにはっきり言うし、オーラは怖いけど、冷たい人でないのはしっかり伝わっていた。
私と柚乃は第二アリーナを静かに抜けて、駅までの道を一緒に帰宅する。
「明紗。一緒に来てくれてありがとう」
「ううん。まだ見ていなくて良かったの?」
「明紗が隣に居ないと無理」



