気になっている人に告白をされる。
柚乃を素直に祝福したい気持ちと一緒に去来した感情に目がくらみそうになった。
好きな人に好きだと告白できるって幸せなことだと。
私はそれが出来なかった。
もう永久に出来ない。
「まだ恥ずかしくて返事できていないんだけど」
いつも割と強気な柚乃が恋愛方面は意外に消極的だとは知らなかった。
「それでね、ユズが明紗に相談したいことっていうのは……」
「うん。なに?」
「放課後、一緒に男子バレー部の練習の見学に行ってほしいの」
基本的に私は滅多なことでは狼狽しなくなったと思う。
それでも今の柚乃の言葉は予想外すぎた。
「男子バレー部?」
「そうなの。その人、2年の男子バレー部の笹沼 志恩先輩っていうんだけど、いつでも部活の練習見学にきていいよって言ってくれたの。お願い! 明紗、ユズと一緒にバレー部の見学についてきて!」
「私、男子バレー部はちょっと……」
「明紗。今日も塾でしょ? 時間の許す限りで大丈夫だから」
「だけど……」
「ユズ、明紗が一緒だったら心強いから少しだけでもいいの! お願いします!」
余りにも切実に柚乃が頼んでくるから断り切れなかった。
柚乃の恋を応援したい気持ちは本当で。
塾が開始するまでの時間に余裕はあるし、だいぶ勉強も進んでいるから自習の時間を削っても支障はない。
だけど、三高の男子バレー部は私が最も避けていたかったものだった。
『三高行って、心強い仲間とバレーできて、そこに明紗まで居たらほんっと最高だよな』
流星の姿だけがそこにないと認識してしまうのが怖いから。
やっぱり柚乃には悪いけど断ろうかと考えたものの、放課後、柚乃に男子バレー部が練習している第二アリーナへと付き添った。
年季を積み重ねた第一体育館とは違って、冷暖房も完備されている第二アリーナ。
第二アリーナを利用しているのは男子バレー部だけらしく、2階のキャットウォークには同じように見学するためか制服を着た主に女生徒がたくさん見受けられる。
私と柚乃は2階には上がらず、第二アリーナの入り口の傍で壁に沿うように立っていた。
「本当に明紗ありがとう」
「塾があって最後まで居られないから、時間がきたら帰るね」
「わかってる。明紗、大好き」
アリーナ内に集まり始める男子バレー部の面々。
強豪らしく人数が多い。
今だけでも50名はアリーナにいるかもしれない。
バレー部のジャージが黒らしく、上がTシャツの人も居たけれど、固まっているだけで不思議な迫力があった。
「あれが笹沼先輩なの。かっこいいでしょ?」
そんな中で柚乃が指さした先の人物よりも、その隣に居た男に真っ先に目がとまる。
今日の昼にも屋上庭園で遭遇した久瀬蓮先輩。
久瀬先輩は人目を否応なしに惹きつける見た目だけじゃなく、三高男子バレー部の2年生エースとしても有名だった。
だから余計に久瀬先輩に近づきたくなかった。
その久瀬先輩と柚乃が恋をしている笹沼先輩は親しげに話していた。
笹沼先輩は久瀬先輩と比較すると10センチほど身長が低く、初見でも好青年だとわかるさわやかな見た目をしている。
「ちょっと待て。あれ1年の弓木明紗じゃん」
「何で三高の姫君がバレー部の見学きてんの?」
「やっべぇ。こんなに近くで初めて見た! マジでレベチだろ」
「もはや、かわいいとか、きれいとか通り越して神々しいな」
「俺、今日の練習、弓木明紗にいいとこ見せるわ」
「いや、弓木明紗なんてワンチャンすらないって」
「ああ。恋愛興味ないってみんなフラれてるんだっけ」
「弓木明紗を拝ませていただけるだけありがたいわ」
柚乃を素直に祝福したい気持ちと一緒に去来した感情に目がくらみそうになった。
好きな人に好きだと告白できるって幸せなことだと。
私はそれが出来なかった。
もう永久に出来ない。
「まだ恥ずかしくて返事できていないんだけど」
いつも割と強気な柚乃が恋愛方面は意外に消極的だとは知らなかった。
「それでね、ユズが明紗に相談したいことっていうのは……」
「うん。なに?」
「放課後、一緒に男子バレー部の練習の見学に行ってほしいの」
基本的に私は滅多なことでは狼狽しなくなったと思う。
それでも今の柚乃の言葉は予想外すぎた。
「男子バレー部?」
「そうなの。その人、2年の男子バレー部の笹沼 志恩先輩っていうんだけど、いつでも部活の練習見学にきていいよって言ってくれたの。お願い! 明紗、ユズと一緒にバレー部の見学についてきて!」
「私、男子バレー部はちょっと……」
「明紗。今日も塾でしょ? 時間の許す限りで大丈夫だから」
「だけど……」
「ユズ、明紗が一緒だったら心強いから少しだけでもいいの! お願いします!」
余りにも切実に柚乃が頼んでくるから断り切れなかった。
柚乃の恋を応援したい気持ちは本当で。
塾が開始するまでの時間に余裕はあるし、だいぶ勉強も進んでいるから自習の時間を削っても支障はない。
だけど、三高の男子バレー部は私が最も避けていたかったものだった。
『三高行って、心強い仲間とバレーできて、そこに明紗まで居たらほんっと最高だよな』
流星の姿だけがそこにないと認識してしまうのが怖いから。
やっぱり柚乃には悪いけど断ろうかと考えたものの、放課後、柚乃に男子バレー部が練習している第二アリーナへと付き添った。
年季を積み重ねた第一体育館とは違って、冷暖房も完備されている第二アリーナ。
第二アリーナを利用しているのは男子バレー部だけらしく、2階のキャットウォークには同じように見学するためか制服を着た主に女生徒がたくさん見受けられる。
私と柚乃は2階には上がらず、第二アリーナの入り口の傍で壁に沿うように立っていた。
「本当に明紗ありがとう」
「塾があって最後まで居られないから、時間がきたら帰るね」
「わかってる。明紗、大好き」
アリーナ内に集まり始める男子バレー部の面々。
強豪らしく人数が多い。
今だけでも50名はアリーナにいるかもしれない。
バレー部のジャージが黒らしく、上がTシャツの人も居たけれど、固まっているだけで不思議な迫力があった。
「あれが笹沼先輩なの。かっこいいでしょ?」
そんな中で柚乃が指さした先の人物よりも、その隣に居た男に真っ先に目がとまる。
今日の昼にも屋上庭園で遭遇した久瀬蓮先輩。
久瀬先輩は人目を否応なしに惹きつける見た目だけじゃなく、三高男子バレー部の2年生エースとしても有名だった。
だから余計に久瀬先輩に近づきたくなかった。
その久瀬先輩と柚乃が恋をしている笹沼先輩は親しげに話していた。
笹沼先輩は久瀬先輩と比較すると10センチほど身長が低く、初見でも好青年だとわかるさわやかな見た目をしている。
「ちょっと待て。あれ1年の弓木明紗じゃん」
「何で三高の姫君がバレー部の見学きてんの?」
「やっべぇ。こんなに近くで初めて見た! マジでレベチだろ」
「もはや、かわいいとか、きれいとか通り越して神々しいな」
「俺、今日の練習、弓木明紗にいいとこ見せるわ」
「いや、弓木明紗なんてワンチャンすらないって」
「ああ。恋愛興味ないってみんなフラれてるんだっけ」
「弓木明紗を拝ませていただけるだけありがたいわ」



