低い声ではっきりと言い放つ。
私がこの男子のこの台詞を聞くのは初めてじゃない。
「久瀬くん、最近みんなにそう言って断ってるよね? その好きな子とは付き合わないの? もしその子に見込みがないようなら私と……」
今日の女子はだいぶ食い下がっている。
「──関係ねぇだろ」
「……え?」
聞いている私が粟立つくらい冷たい声色だった。
「俺を好きなのは勝手だけど、俺が誰を好きでも関係ねぇだろ。そういうの迷惑だってわからねぇの」
「っつ……」
告白をした女子は泣き出してしまったらしく、先に屋上から立ち去ったようだ。
言い方はきつかったけど、自分に干渉されたくない気持ちはわかるような気もする。
静かになったから、てっきり男のほうも立ち去ったのかと思って、出入口の扉に再び進むと、その人は扉の横の壁に背中をもたれかけてスマホをいじりながら立っていた。
「……」
「……」
私に気付いたのか高い位置にある鋭い双眸から放たれる視線を注がれた。
さらりと風に揺れる黒い髪、並外れた綺麗な顔立ちに長躯。
この人のことは知るつもりはなくても勝手に耳に入ってきていた。
三高で一番かっこよくて一番モテると有名な2年A組の久瀬 蓮先輩だ。
久瀬先輩が有名な理由はそれだけではないけれど。
私がこの屋上庭園に呼び出された時、何度か同じように呼び出されている久瀬先輩と一緒だった。
たぶん向こうも私が告白されている現場に立ち会ったことがあるだろう。
私もいつも同じ台詞で断るけれど、久瀬先輩もいつも同じ台詞で告白を断っている。
でも、それだけ。
とりあえず目が合ってしまっただけに、そのまま逸らすわけにもいかず、気持ちばかりの会釈をして、私は屋上庭園を後にした。
「もうー! いっつもいつも明紗が昼休みに男子に呼び出されちゃうからユズとの時間なくなっちゃうじゃん」
1年A組の教室に戻った途端に綾瀬 柚乃が私に抱き着いてきた。
高校に入学してすぐにあった身体測定で169.9センチだった私と比べて152.8センチだった柚乃は私の胸元にすっぽりおさまってしまう。
「ごめんね、柚乃」
「どうせフラれるんだからユズの明紗に告白すんなって男どもに言ってやりたい」
「やめて」
生まれ持っての大きな瞳に腰まで伸びているセピア色のストレートヘアー。
誰が見ても甘くかわいらしい容姿を持つ柚乃はその見た目とは真逆の毒舌で辛らつな性格をしていた。
柚乃はダンス教室で小6まで一緒だった子。
とは言っても、同じクラスだったわけではなく、特別選抜クラスだった私の前の時間に入っていたK-POPクラスに柚乃は通っていて、発表会の時とレッスンの入れ替えの時に顔を合わせるだけで、特に仲が良かったわけではなく。
柚乃が6年の途中でダンス教室を辞めてから何の接点もなかったものの、三高に入学して初めてこの教室に入った時から私に懐いてきた。
『やっぱり弓木明紗ちゃんだー! ユズ、明紗ちゃん本当に憧れだったの! ダンスうまいし、とにかく見られるだけで嬉しかった! また会えて明紗ちゃんと高校一緒なんて夢みたい!』
周りも引くくらいハイテンションで最初から私に絡んできた柚乃。
特定の子と仲良くなるのを避けてきた私だったけど、柚乃の勢いにかなわず、高校では一緒にいることが多い。
「柚乃、そう言ってしっかり明紗ちゃんの胸を堪能するのやめなよ」
「へへ。バレたー? 明紗の胸ふかふかで気持ちいいの。Fはあるよね」
私がこの男子のこの台詞を聞くのは初めてじゃない。
「久瀬くん、最近みんなにそう言って断ってるよね? その好きな子とは付き合わないの? もしその子に見込みがないようなら私と……」
今日の女子はだいぶ食い下がっている。
「──関係ねぇだろ」
「……え?」
聞いている私が粟立つくらい冷たい声色だった。
「俺を好きなのは勝手だけど、俺が誰を好きでも関係ねぇだろ。そういうの迷惑だってわからねぇの」
「っつ……」
告白をした女子は泣き出してしまったらしく、先に屋上から立ち去ったようだ。
言い方はきつかったけど、自分に干渉されたくない気持ちはわかるような気もする。
静かになったから、てっきり男のほうも立ち去ったのかと思って、出入口の扉に再び進むと、その人は扉の横の壁に背中をもたれかけてスマホをいじりながら立っていた。
「……」
「……」
私に気付いたのか高い位置にある鋭い双眸から放たれる視線を注がれた。
さらりと風に揺れる黒い髪、並外れた綺麗な顔立ちに長躯。
この人のことは知るつもりはなくても勝手に耳に入ってきていた。
三高で一番かっこよくて一番モテると有名な2年A組の久瀬 蓮先輩だ。
久瀬先輩が有名な理由はそれだけではないけれど。
私がこの屋上庭園に呼び出された時、何度か同じように呼び出されている久瀬先輩と一緒だった。
たぶん向こうも私が告白されている現場に立ち会ったことがあるだろう。
私もいつも同じ台詞で断るけれど、久瀬先輩もいつも同じ台詞で告白を断っている。
でも、それだけ。
とりあえず目が合ってしまっただけに、そのまま逸らすわけにもいかず、気持ちばかりの会釈をして、私は屋上庭園を後にした。
「もうー! いっつもいつも明紗が昼休みに男子に呼び出されちゃうからユズとの時間なくなっちゃうじゃん」
1年A組の教室に戻った途端に綾瀬 柚乃が私に抱き着いてきた。
高校に入学してすぐにあった身体測定で169.9センチだった私と比べて152.8センチだった柚乃は私の胸元にすっぽりおさまってしまう。
「ごめんね、柚乃」
「どうせフラれるんだからユズの明紗に告白すんなって男どもに言ってやりたい」
「やめて」
生まれ持っての大きな瞳に腰まで伸びているセピア色のストレートヘアー。
誰が見ても甘くかわいらしい容姿を持つ柚乃はその見た目とは真逆の毒舌で辛らつな性格をしていた。
柚乃はダンス教室で小6まで一緒だった子。
とは言っても、同じクラスだったわけではなく、特別選抜クラスだった私の前の時間に入っていたK-POPクラスに柚乃は通っていて、発表会の時とレッスンの入れ替えの時に顔を合わせるだけで、特に仲が良かったわけではなく。
柚乃が6年の途中でダンス教室を辞めてから何の接点もなかったものの、三高に入学して初めてこの教室に入った時から私に懐いてきた。
『やっぱり弓木明紗ちゃんだー! ユズ、明紗ちゃん本当に憧れだったの! ダンスうまいし、とにかく見られるだけで嬉しかった! また会えて明紗ちゃんと高校一緒なんて夢みたい!』
周りも引くくらいハイテンションで最初から私に絡んできた柚乃。
特定の子と仲良くなるのを避けてきた私だったけど、柚乃の勢いにかなわず、高校では一緒にいることが多い。
「柚乃、そう言ってしっかり明紗ちゃんの胸を堪能するのやめなよ」
「へへ。バレたー? 明紗の胸ふかふかで気持ちいいの。Fはあるよね」


