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 七夕までの1週間、雨が降ることはなく昼休みに体育館裏で会っても流星の態度は今までと何も変わることはなかった。
 隙あらば、私の髪も指も愛しそうに触ってくるし、流星は期末テストの結果が良かったみたいで常に上機嫌。
 ついに七夕は明日にまで迫ってきている。

 「──って、明紗、期末テスト学年一位かよ」
 「中間は二位だったから頑張った」
 「明紗はちゃんと努力できて、えらいよな」

 結果じゃなくて過程を流星に褒められるのが、くすぐったい。
 お兄ちゃんから流星の話を聞いたからだろうか。
 流星に告白されるとわかっていながら、普通に過ごしていないといけない今の期間は何なんだろう。
 七夕が……流星の誕生日当日が待ち遠しいようで、少し怖くて。
 流星と私の今までの関係に何らかの変化が生じてしまうのが不安でもあって。
 でも、流星とだったら、その変化もきっと受け入れて楽しんでいける気がした。
 流星だったら私を大事にしてくれるって、自惚れに捉えかねない自覚さえ生まれている。
 私はいつの間にか流星に対して絶大な信頼をおいていた。
 時間をかけて、そう私に思わせてくれたのは流星だと思う。
 明日は流星の誕生日。
 何か用意したほうがいいのかとも思ったけど、まだ彼氏彼女というわけでもなく、お互い中学生。
 逆に流星に気を遣わせるのも嫌で考えた結果、バレー部の中学最後の大会が近いこともあって、お守りを作ることにした。
 塾が終わってから駅併設の商業施設に入っている手芸用品店でフェルトや手芸用ボンドなどの必要なものを購入する。
 帰宅して、いろいろ済ませてから自分の部屋の勉強机で、制作にとりかかった。
 壮行会で見た流星のユニフォーム姿を思い出しながら、はさみでフェルトを切り、水色のフェルトでユニフォーム型に裁断して。
 それに流星の背番号1を黒で、流星って名前にちなんで流れ星のマークを黄色で。
 ボンドで貼って、指先で針を行き来させ、綿を詰めて、バレーボール型の小さいマスコットも作って……。

 「やっと、できた」

 お守りを作るのに熱中しすぎていて、すでに日付を越え、七夕の午前2時を過ぎていた。   
 私の手のひらより小さいサイズのユニフォーム型のお守り。
 ずいぶん夜更かししてしまったけれど、我ながら上手くできたような気がする。
 明日、SL公園で流星に渡そう。
 私も私の気持ちをちゃんと伝えよう。

 「流星、喜んでくれるかな」

 流星にお守りを渡す場面を頭に描きながら、私はベッドにもぐりこんだ。