流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 私の入学式の日に流星が言っていた台詞が頭を過ぎる。

 『どんだけ明紗が中学生になるのを俺が心待ちにしていたと思ってんだよ』

 そしてお兄ちゃんと流星がやり取りしていたことも。

 『天音、覚えてるよな? 俺に言ったこと』
 『……覚えてるよ』

 あれはお兄ちゃんが流星に伝えていた言葉を指していたんだ。

 「そのうちに明紗への興味が失せるかと思ってたんだけど、ご丁寧にクリスマス前だとしても速見と別れてた。別れを切り出した時に廊下で流星が速見に引っ叩かれたことは明紗も知っていると思うけど」
 「言ってたよね」
 「そう。俺も騒ぎになってたから現場を見た。流星、何度も速見に頭を下げてんだよ。普段の流星がモテるのを妬んでいるのか、かっこ悪いって流星を笑ってる奴も居たけど、俺にはすごくかっこよく見えた」

 流星が頑ななまでに教えてくれなかった速見美青さんと別れた理由。

 「どうせ流星のことだから次の彼女もすぐに出来るだろうと思ってた。でも、速見と別れてからは誰に告白されても断ってた」

 それは私のことを好きになったから?
 速見美青さん以降、流星が彼女を作っていないことは知っていた。

 「明紗が中学に入学したら、速攻で流星は明紗に手を出すのかと心配してたけど、独占欲まる出しにして周りに牽制かけてる割には『明紗には軽率に手を出したくない』ってやたら大事にしてるし。明紗は5月頃、三高の高校生が青中まで来て告白されたんだろ?」
 「うん。あった」
 「その日の昼休み。流星は明紗に告白するつもりだったって」
 「え?」
 「流星と明紗に何があったのかは聞いてないけど。1回目の中央委員会が始まる前に『やっぱり、もう少し先にすることにした』って言ってた」

 あの雨の日の昼休み、私はバレー部の部室で流星に打ち明けていた。

 『男の人に告白されるって、何を私に求められているんだろうって何か怖い……』

 もしかして、そのため?
 私の気持ちを尊重してくれていた?

 「明紗が中学入学するってなった時、実は俺かなり覚悟してた」
 「覚悟?」
 「俺を通じて明紗と繋がろうとする男たちがまた群がってくるのかって。想像よりは居なかったから(らく)になった。明紗、青中ではそこまで告白されたりしてないだろ?」
 「う、うん」
 「あれ、流星のおかげだって。わざわざ明紗の入学式で一発かましてたからな」

 入学式の在校生の歓迎の挨拶の時にされた流星の私信。
 当日はよくわからなかったけど、さすがにあの意味がもうわからなくはない。

 「ここまでされたら、流星が明紗に本気だって認めざるを得ないだろ」

 お兄ちゃんは少し寂しそうに、私を見つめて口元に弧を描いた。

 「明紗も流星のこと好きだよな?」
 「うん。好き」
 「そうか。いつから?」
 「いつの間にか、かな」
 「妹のこういう話、聞くの何か気まずいよな。しかも相手、俺の友達って……」

 お兄ちゃんと目と目を合わせて微笑みあう。
 いつだって私に優しかったお兄ちゃん。
 知らない間に私のことを守ってくれていたお兄ちゃん。
 お兄ちゃんが流星を自宅(うち)に連れてこなかったら、流星と私はこんなに距離が近づくこともなかったんだと思う。