流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 ***

 「お兄ちゃん。ちょっとだけいい?」

 もう少しで時計は22時をさす。
 私はパジャマ姿で、ノックをしてからお兄ちゃんの部屋の扉を開けた。
 お兄ちゃんは学習机の前に座っていて、寝る直前まで勉強に励んでいるんだとわかる。
 流星は三高を受験したいみたいだけど、お兄ちゃんはどの高校を志望しているんだろう。
 気にはなったけど、お兄ちゃんに男子バレー部の地区大会の会場がどこか知っているか聞いてみた。

 「そんなの流星本人に聞けばいいだろ」
 「だって流星、絶対に教えてくれない」
 「何で?」
 「私にバレーしてるところ見られたくないって」
 「何それ」
 「私が見てると集中できないって言われた」
 「ピュアかよ」

 やや呆れたように呟き、お兄ちゃんは椅子から立ち上がると、扉の前に立ちっぱなしだった私をベッドに座るよう促してくれた。
 お兄ちゃんのベッドに並んで腰を落とす。

 「明紗、バレー部の応援に行きたいのか?」
 「うん。3年生は最後の大会だし」
 「明紗が見に行って、エースの流星の調子が崩れて、バレー部が早々に敗退ってことになったら俺がバレー部の奴らにも恨まれるから。行きたかったら流星本人にちゃんと言えよ」
 「……わかった」

 流星に伝えたところでまた本人に拒否されるだろう。
 でも、七夕を過ぎたら。
 SL公園で待ち合わせた後だったら。
 この日、流星と私の関係はどう変わってしまうのだろうか。
 今もこうして、ずっと胸の辺りが落ち着かないままでいる。

 「流星って本気で明紗のこと好きだよな……」

 お兄ちゃんが実感のこもった声でそんなストレートなことを口にする。

 「お兄ちゃん。急にどうしたの?」
 「明紗。普通に流星の気持ちには気づいてるだろ」
 「それは……うん」
 「流星を俺の家に初めて連れてきた時は、まさか流星と明紗がこうなるとは思ってなかった。流星って1年の頃から常に彼女がころころ変わって、軽い奴って印象だった。正直、俺には理解できないって思ってたんだけど」

 お兄ちゃんの言葉を聞きながら、私も流星との初対面を思い出していた。
 『え? 天音の妹? 姉ちゃんかと思った』
 流星がそう言った声も表情も脳裏に焼き付いている。

 「俺が流星に勉強を教えるのは2学期の期末テストまでって約束だったのに、12月の前半にテストが終わっても、流星が俺の家に来たがるから理由を聞いたら、明紗のこと好きになったって言われた」
 「……」
 「流星が最初から明紗のことを気に入ってたのはわかってた。でも、その程度だと思ってた。その時は速見と流星は付き合ってたし、明紗は小学生だったし、明紗を好きになったって言われても、まったく信用できなかった」
 「……」
 「流星がいい奴なのは知ってたけど、女関係は不信感しかなかった。兄としては複雑な心境で、どうにか明紗を守らないとって思った」
 「……」
 「俺が流星に言ったんだよ。『明紗が小学生のうちは絶対に手を出すなよ』って」