流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 「河津中との練習試合の時、相手の2年に俺みたいな選手になりたい、憧れてるって言ってもらえた。その2年腹立つくらいうまくてさ。しかも、見た目も超絶男前でハイスペックすぎんの。そいつに言われて、俺ほんっと嬉しかったんだよね」
 「……」
 「女の子に告られた時より何倍も興奮した。そいつに俺が三高に行きたいこと伝えたら、そしたら自分もそうするって。あいつと三高でバレーできたら楽しいだろうな。ポジションOHで同じなんだけど、俺が先輩だし、負けてやる気はない」

 今の流星の頭の中にはバレーのことしかないのだろう。
 流星は馳せる未来図に心を寄せている。
 それが心底楽しそうで、少しの嫉妬も感じた。
 私にはここまで全てをかけられるほど、熱中しているものなんてない。

 「三高行って、心強い仲間とバレーできて、そこに明紗まで居たらほんっと最高だよな」
 「流星だけ落ちないで」
 「きっつ。冗談にならないから頑張る」

 流星が私の黒髪を指で梳きつつ、言葉を繋げていく。

 「で。三高卒業したらバレーでプロになる。
 俺が小3の時に父親が脳の病気で何の前触れもなく死んじゃったの。本当に突然。
 俺の母親、それまで専業主婦だったから就職先がなかなか見つからなくて、昼も夜もパート詰め込んで今も働きづめ。早く楽させてやりたい」

 ごく自然に重要なことを流星は私に教えてくれる。

 「って言っても、死んだ父親が保険とか投資とか、その辺りきっちりしてる人だったから、返済終わった持ち家ってやつだし、食べ物にも困る貧乏家庭ってわけでは全くないんだけど」
 「……」
 「何か明紗って、ちゃんと俺の話を聞いてくれてるってのが伝わってくるから、いろいろ話したくなる。特に相槌がうまいってわけでもないのにな」

 確かに流星は私にいろいろ話してくれた。
 お兄ちゃんに勉強を教えてもらうために自宅に来ていた時から。
 それとなく私の記憶に刻み付けるように流星のことを教えてくれた。

 「明紗、これからどんな大人になんの? どこまでいい女になるんだろうな。今でさえコレなのに」
 「コレ呼ばわりは失礼」

 少し私が視線を尖らせると、
 「だから、明紗のこの目が一番やばいんだって……」
 と、わかりやすくむくれて流星は視線を外す。

 「この先ずっと、明紗が大人になってくのを一番近くで見ていられたら最高だよな」

 私の髪から指へと移動してきた流星の指が愛しそうに絡んできて。
 流星が描く未来に私のことも当たり前のように存在してくれていると思っていていいのだろうか。

 「一番重要なこと、明紗に伝えるの忘れてた」

 流星が何かに弾かれたように私と再び目を合わせてくる。

 「来週の木曜の放課後。明紗、予定ある?」
 「普通に塾だけど」
 「ああ、そうか。俺も部活が終わって……、そうだな。19時くらいにはSL公園って来れそう?」
 「木曜は塾の開始が早いから19時には大丈夫だと思うけど」
 「じゃあ待ち合わせしようか?」