流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 ***

 あんなに朝は天気が良かったのに段々と空は鈍色の雲が支配し始めて、3時間目の途中から、雨が降り始めた。
 地上に跳ね返る雨音は響き、雨の強さを物語っている。
 だから今日の昼休みはバレー部の部室に足を向けていた。

 「明紗、やっと来た」

 窓のない12畳くらいの男子バレー部部室。
 出入口の扉にはすりガラスが真四角にはめられている。
 扉を閉ざしても、薄い壁のここは雨音をろくに遮りはしなかった。
 少しだけ湿った香りが漂っていて、両側に設置された戸棚にはバレーボールや誰かのジャージが乱雑に乗せられている。
 正面の出入口と対面するようにロッカーがあって、それと少し距離を置いて3人ほど座れそうな簡易的なベンチが置かれていて、中央に流星は座っていた。

  「――明紗、告白されたんだって」

 バレーボールを両手でクルクルと器用に回しながら流星が質問してきた。
 絶対に流星の耳にも入ってるとは思っていたけど。

 「どれのこと?」

 不穏な流星の気配を察して、わざと少しはぐらかしてみた。

 「え? そんな明紗、何人も告られてるの? 中学入ってからないって言ってたよね?」
 「青中(ここ)では、ね」

 ここ一カ月の間だったら、下校していたら、いきなり知らない男の人に手紙を渡されて立ち去られたこともあったし、塾でも何人か……。

 「ほんっと、明紗。どこかに閉じ込めておきたい」

 流星は足を動かして、ベンチの端へと座ったまま移動する。
 隣に座れって意図を見越して、流星の隣へと腰かけた。

 「明紗が三高のイケメン高校生に告白されてたって俺の周りでも話題になってたのは本当?」
 「三高の制服は着てた」
 「普通にそこの生徒でしょ」
 「イケメンなのは本当」
 「え? 明紗って男のことイケメンって思ったりするの?」

 隣へと視線の先を向けると、イケメンなんて言葉じゃ形容しきれないくらい整った顔立ちをした流星が私を見下ろしていた。
 口許は笑っているのに、はっきりと瞳の色が険しくて。

 「それは普通に思う」
 「でも、”誰かと付き合う”とか興味なくて高校生フッちゃうんだ?」
 「毎回そう答えてるだけ」

 今日の会話の内容が正確に流星に届くくらい、衆目を浴びてる中で告白されていたのだと実感する。

 「毎回って明紗どんだけ告白されてんの?」
 「数えてみたほうがいい?」

 問いかけ直すとわざとらしく流星は唇を尖らせる。

 「あーあ、明紗ってほんっと生意気。みんなの前ではイイコなのに」
 「じゃあ、イイコでいる」
 「やだ。俺の前でだけクソ生意気な明紗でいてよ」

 みんなのアイドル、いやスター的存在な流星がこんな子どもっぽい台詞を言う。
 私以外にも知っている人がいるのかな。
 例えば、流星がこれまで付き合ってきた元彼女の人たちとか。

 「何で流星が別れたのか聞きたいわけじゃなかった」
 「ん?」
 「速見美青さんと」
 「ああ、その話」

 そう。流星にずっとはぐらかし続けられている"その話"の”その答え”。
 流星が答えてくれないことくらいはわかっていた。

 「あの時、クリスマスが近くて」
 「そう。それもあって、本気で美青にキレられたんだよな」
 「私、塾の先生に告白されてて」
 「はあ?」