流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 ***

 私の自宅から青中までは徒歩10分ほど。
 中学までのルートは大通りで車の往来が絶えない道を通るし、人目も常にあり治安的に抜群。
 お兄ちゃんは剣道部の朝練で朝早く出るし、いつも私は1人で登下校をしていた。
 朝の澄んだ空気に、頭上に広がる鮮やかな水色の絵の具を塗装したような青空。
 青中の校門に差し掛かろうとした時だった。

 「あの!」

 後ろから男の人の声に呼び止められた。
 私だろうと立ち止まって振り向くと、キャメル色のブレザーに緑チェックのスラックスを履いた男の人が立っていた。
 制服がおしゃれで都立の中でも偏差値が高い朝比奈第三高校の制服だった。
 私の記憶の中に不在だったその人の目は真っ直ぐ私を捉えて近づいてくる。

 「いきなり、ごめん」

 突然現れた男子高校生と私の様子を校門に吸い込まれていく生徒たちが興味深そうに観察してきた。

 「君を登校中によく見かけてて、綺麗な子だなと思ってるうちに気がついたら好きになってたんだ。友だちからでいいから俺と付き合ってくれない?」

 照れながらも潔いほどストレートな告白をぶつけられた。
 しかも、こんな登校時間の人目が激しい青中の校門前で。
 こちらも恥ずかしいって考えが及ばないのか、見た目が悪くないどころか、自分がイケメンの部類に入るのをわかっていて自分に自信があるのか。

 「とても嬉しいです。ありがとうございます。
 でも、私、今は誰かと付き合うとか興味がなくて。お気持ちに応えられなくて本当にごめんなさい」

 私が告白を断る時の定型文だった。
 感謝を伝えてから、謝る。
 恋愛に興味がないと相手を否定せずに断る。
 後をひかない一番無難な断り方だと学習していた。
 断る理由がほしくて、他に好きな人がいると伝えてしまった時に、それは誰なんだって騒動になってしまった経験があって避けていた。

 「いや、こちらこそいきなりごめん。君に気持ちを伝えられて良かった。気にしないで」

 相手の高校生は清々しいほど、あっさりと理解してくれた。
 こんな公衆の面前で告白してきたのは、きっぱりとした毅然とした人だったからで、ちゃんと私への気遣いまでしてくれる。
 心の中でそっと自分の思い込みを訂正した。

 「明紗ちゃん、三高の高校生に告白されてたよねー」
 「めっちゃイケメンじゃなかったー!」
 「私も見たかった! 高校生に告られるって明紗ちゃんすごいね」
 「付き合っちゃえば良かったのに」

 教室に入るなり、当の私よりもクラスメイトの女子たちが盛り上がっていた。
 実際に告白の現場を目撃していなかった生徒にもしっかり伝わっているらしい。
 
 「あ、でも明紗ちゃんには榊先輩がいるか」
 「お兄ちゃんの友だちってだけ。私、本当に恋愛興味なくて」
 「そうなんだー。私、中学生になったら彼氏ほしいって思ってたんだよね」
 「私もー」
 「ねぇ、青中で誰がかっこいいと思う? あ、榊先輩と弓木先輩は殿堂入りだから除外ね」