流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 「明紗。生意気」

 ふてくされた子どものように、悔しげに目を逸らす流星。

 「ダンス同好会への勧誘されただけ」
 「何それ」
 「今月末の体育祭の応援でチアリーダーを一緒にやってほしいんだって」
 「え? 絶対だめでしょ」

 流星に両腕とも二の腕あたりを掴まれた。
 私を突き刺す眼差しが真剣すぎる。

 「明紗があの露出の高い服着るの? それ着てチアやる? 全校生徒の前で? 想像するだけで吐く。無理」
 「私、ダンスはスクール通ってるし、他に習いごともあるから申し訳ないけど協力できない」
 「断った?」

 私が小さく頷けば、流星はあからさまに憂色を晴らす。
 青中の部活動は全員加入が必須だけれど、サッカーや野球やテニスなど、学校外でユースやクラブチームに所属している生徒も多く、そういう生徒の受け皿として金曜日だけ活動する「ボランティア部」があって、私もそこに本入部届を出していた。
 4月には仮入部だった1年生も今月からは本格的に各部の活動が始まっている。

 「美青、明紗になんか言ってた?」

 流星が付き合っていた速見美青さん。
 別れた時に廊下で流星を引っ叩いたらしい速見美青さん。
 そんな速見さんはふわりとした栗色の髪が似合っていて、綺麗というよりはかわいい系の顔立ちで。

 『やだー!! 本当に弓木明紗ちゃんってめちゃくちゃきれい!! クールビューティ!! 尊い!! 持って帰りたい!! ずっと見ていたい!!』

 私がダンス同好会への勧誘を断ったとしても、一緒に来た友達と私に対して好意的に接してくれていた。
 最初は流星の元彼女である上級生に文句でも言われるのかと少し身構えたけど。

 「可愛くて性格いい人だなって思った」
 「ま、俺が付き合うくらいだから」
 「そんな人に別れる時、平手打ちされるって」

 流星どれだけひどい男なんだろう。

 「ねえ、何で別れたの?」

 あの時の続きとばかりに質問する。
 さっきちょっと流星に対して意地悪な気持ちが芽生えたのは、あの時教えてくれなかったリベンジもあったのかもしれない。

 「──明紗さ、」

 流星は立ち上がり、転がっていたバレーボールを拾うためか足を運ぶ。
 屈んでボールを片手で拾うと、また私に向き直って不敵に笑みを作る。

 「ほんっと、俺とのこと、よく覚えてるよね」

 勝ち誇ったような不遜な言い方。
 気をつけないと、そのまま流星に飲まれそうになる。
 ちょうど、その時校内にチャイムが響き渡った。

 「やっぱりチア引き受けようかな」
 「は?」

 私は膝を伸ばし、スカートの後ろ側をとんとんと手のひらで払う。
 
 「え? 明紗チアやるの? いや、俺だけが見れるんだったら見たいけど」

 本気で慌て始めた流星に振り返らず、先に本校舎へと足を進めた。