流れ星を追いかける君と、輝く夜明けに。

 「え? 何、俺を疑ってたの?」

 流星は小さく笑いながらも、トスは一向に乱れない。
 一定の間隔で、一定の高さで、続けられている。

 「そうじゃなくて。バレーボール扱い慣れてるから」

 私はバレーに詳しくないけど、こんなに1ミリの狂いなくトスを上げ続けられるって相当練習してないと出来ないと思う。
 しかも、わざわざ私を昼休みに呼び出す一方でバレーボールには触っていたいんだと。

 「──マジで明紗が同じ学校に居る」

 流星は心底嬉しそうにしながらトスを上げ続けていた。

 「さっきまで同じ給食のメニューを明紗が食べてたんだよな」

 何を当たり前のことを言ってるんだろう……。
 ずっと直上トスをあげる流星の横顔を見続けていたけど、鼻が高くて耳から顎のラインも整っている。

 「この後、5限は体育館で1年と2.3年の対面式だよな。明紗は入学式で新入生の挨拶してたから何もないだろ」
 「うん。参加するだけ」
 「対面式は副会長の天音が挨拶するから俺も何もない」
 「お兄ちゃんが?」
 「ああ、でも明紗は参加するだけでも目立つよな」
 「弓木だから列の一番後ろだし目立たない」
 「そういうことじゃないんだって。明紗、対面式欠席しなよ」

 あれほど、ずっと上げ続けていたトスをやめ、バレーボールを両手でキャッチし、階段に座る私を見下ろしてくる流星。

 「私、サボらないけど」
 「ん。わかってるよ。明紗はイイコだからね。でも、明紗を知ってる人間を増やしたくない」

 流星はバレーボールを器用に両手の中で転がしながら、本気とも冗談ともとれる無理難題を軽やかに言い放つ。
 いつもそう。
 流星の言葉の真意がわからなくて、私は黙って見つめ返すことしか出来ないでいる。

 「明日から昼休み半分、ここで俺と過ごそっか?」
 「……」
 「放課後は基本的に部活だし。俺、こう見えて結構忙しいの。バレー部のエースで生徒会もやってるから」
 「……」
 「明紗。だめ?」

 私の瞳の奥まで覗き込むように見つめながら、隣に腰を落とす流星。
 ずっと自宅のリビングでしか会っていなかったから、陽光の下で見る流星は新鮮で。
 こんなに日の当たる場所にいたって髪も肌も透けてしまうくらい軽やかに綺麗で流星の欠点を見つけられない。
 昨日も入学式の帰りに少し見たけれど、それは一瞬のように過ぎ去ったから。

 「雨の日はどうするの?」

 私が問い返すと、流星は少し驚いたような表情を見せる。

 「何なの。マジで明紗って俺を殺す気?」
 「……」
 「そうだな。この外階段は雨が入り込んで濡れるから、バレー部の部室に居ようか」

 さっきバレーボールを部室から持ってきたように流星は鍵を所持しているらしい。
 校内に鳴り響く予鈴に「時間経つの早……」と言いながら、流星は立ち上がる。
 私も続けて立ち上がろうとしたら、目前に差し出される流星の左手。
 その手をとるか逡巡している間もないまま、
 「──明紗、」
 流星のその手が私の手首を掴んで、強引に立たされる。
 その勢いに反応できずにいた私の行く先は流星でしかなくて。

 「本気で狙っていい?」

 耳元で紡がれた低い声にまた私は反応できずにいた。