「じゃあ、僕も遠慮しない。僕はいつもコンサートの翌日は休みを取ってる。君は明日何か用事がある?金融関係なら多分仕事は休みだよね?」

 今日は金曜日。明日は土曜日なので休みだ。

「午後から用事がありますけど、夕方からです」

「そう。夢中になって話してしまったから結構な時間だけど、今から君は帰れる?」

「え?うそっ!」

 時計を見て驚いた。周りに人がほとんどいない。

 そうだ、今日は終演が22時過ぎていて、フロアごとに順次外へ出た。

 最後だったのでその時点でかなり遅かったかもしれない。店を見回すと人がほとんどいなかった。

「これだとすぐに出ても終電に乗れるかどうか微妙ですね。乗換駅からはもう確実に電車がないです。そこからはタクシーになりそうです」

「僕が君を帰したくないと言ったら、君はどうする?」

「……えっ?」

「よかったら今晩、僕と過ごしてくれませんか?」

「……!」

「唐突すぎてひくかな?でもこんなだから言ってるんだ。僕はおそらくどんどん見えなくなる。きちんと僕が君を見えるうちに君と過ごしたい」

 私は一ミリも迷わずに即答した。

「終電、もう間に合いそうにありません。どうぞ……あなたの目で私の全てを確認してください」