大地の悲鳴がけたたましく響いていた。
氷晶の鯨は凍土を裂いて泳ぎ続ける。舞い上がる粉雪と削れた氷が煙のように立ち込めた。高音の叫びを放ち、問答無用に進む様は北極の海中列車だ。
「ソーヤ、速度上がってるけど大丈夫!?」
「なんとかな。鯨の皮膚に杭刺してるし、さっき貰ったコイツも着たからさ」
投げ渡されたライフジャケットのような装備を指さした。蝉谷さんの言う通り、これがダイビングスーツとして展開されることを祈る。
「頼む、もう少し、踏ん張ってくれ……!」
鯨とは別に、地震と遠くからの爆発音が強まるばかり。こうしている間にも、ダンジョン崩壊のタイムリミットは近付いている。
「ソーヤ、もう少しで出口! それに、あれ見て!」
雪山の麓は地形が乱れて漂着町は原型を留めていなかった。
だが僥倖。ひしゃげた地面の隙間から巨大な噴気孔が新たに口を開いていた。
それもヒビは鯨でさえ埋まりそうな大きさで、気流の激しさも段違い。天井の出口までひとっ飛び出来そうだった。
「あそこに飛び込めば……! けどどうする? 飛び降りるタイミングとかさ」
「さんにーいちでジャンプするよ!」
「あー勢いまんまね! 了解!」
スズカと腕を組んで飛び降りる体勢を取りかけた途端、大地の血潮が傍で脈を打った。
「きゃあっ!?」
「スズカ、俺を掴んで!」
硬いダイヤのような鯨の皮膚へ突き立てたアンカー。突き刺したその一本と命綱を頼りに、俺は両腕でスズカを抱え込んだ。
軽くて柔らかな彼女の体が離れないよう、無我夢中で抱き締めた。
一際激しい揺れ。鯨も動揺して咆哮を上げている。高速道路を走る車の上に乗っかっているようで、今にも放り出されそうだった。
「離さない! 何があっても、一緒だからな!」
「っ、うん……!」
二転三転し、シェイクされるような視界。氷の世界は拍動の如く地鳴りと爆発を小刻みに鳴らす。
鯨の上で出来たことは、ただその世界の動転にスズカとやり過ごすしかできなかった。
それでもお互いの肌が触れているだけで、大丈夫と思える安心感があった。指先も震え一つさえない。
もう俺達の絆は氷のように解けも、花のように枯れもしないから。
二人で肌を合わせていると、次第にダンジョンの動揺が収まっていった。
「つつ、やっと終わったか……大丈夫かスズカ? 怪我してないか!?」
「うん、私は平気。けど……」
スズカが下ろした目線の先では、すっかり静かになった氷晶の鯨がその鰭をだらんと揺らしていた。
氷を突き進む馬力は失われ、慣性だけでこの巨体は前進しているだけだ。
呼吸も脈拍も失われ、口から漏れたのは筋肉が弛緩した事で発せられただけの鳴き声だった。やがて氷雪に塞き止められ、鯨は完全停止する。
「おいヌシ、大丈夫か!? あとちょっとなんだ。どうにか――」
「ソーヤ。これもう……」
つぶらな瞳は既に瞳孔が開いていた。目が合ったことで、鯨が息絶えてしまった事実を嫌でも知らされる。
つい数秒前まで全力で泳いでいた生命に訪れた突然の終わりに、俺も訳が分からなかった。
「怪我したのか? それとも内臓がやられたとか――」
目立った致命的外傷は見られない。細かな傷は全て古傷で、凍傷や火傷の痕も見られない。むしろ穏やかな眠りについているようにさえ伺える。
白昼に氷が水の一滴まで蒸発して消えるように、命がそこからフッと失せていたのだ。
「寿命、か? お前、もしかして……」
より冷たくなったクリスタルのような皮膚に触れている間、俺の脳裏をある思考が巡っていた。
――巨大化、異様な生態、奇形、遺伝子情報が組み換わったような体、文献で見た放射線を受けた動物に類似した突然変異。
山の麓に埋まっていた戦時中の沈没船、この鯨の激しい爆発を恐れる習性、八十年前に近くで起きていた出来事……
錯綜した思考は自ずと答えを導き出した。
そしてここまで絶えず泳ぎ続けてくれた氷晶の鯨に、せめてもの弔いの言葉を告げる。
「……長いこと、お疲れさん。ゆっくり眠れよ」
こいつも人の都合で変わっちまった環境に振り回されてたのに、最期まで懸命に生きてこの場所を守ってくれた。その力強く尊い生命に、俺は敬意を表す。
降りる間際の一撫でをもって、勝手ながら手向けにさせてもらった。
鯨の亡骸から飛び降り、再び降り立った氷土はもう終点の目と鼻の先だった。
突き上げる暴風を放つ噴気孔が数百メートル前方に拝める。
「着いた。これで――」
遥か後方から空前絶後の爆裂音が轟いた。
一度目の空気を弾く破裂音を追いかけ、ドロドロと煮え滾る岩の声が最下層の空洞から届きつつある。
ついに大地の血潮が漏れ出した。氷の世界は境界を失い、炎の奔流と顔を合わせてしまったのだ。
「この音、マグマだ……ッ、スズカ!」
「こっちだよソーヤ!」
噴気孔の穴を目指し、一目散に走り出した。スズカに手を引かれ、なんとかそれに着いていく。はち切れそうな足に鞭打って、今出せる最高速度で駆け抜けた。
だがそれ以上の速さで、背後から地面の割れる音が迫ってくる。
小規模の連続的な爆発、塊ごとに大地が下層へ落ちていく様子が音だけで分かった。
「まずい、崩れる!」
間もなく足場の崩落に追い付かれる。
その時、スズカがダンジョンの上を指さした。
「ソーヤ、あそこ! 空が見えるよ!」
それは氷世界の見せる幻の空じゃない。正真正銘、高くて蒼い見知った夏空だ。
爆発か、それとも蝉谷さん達のおかげか。天井の一部が落ちて、ピースの欠けたパズルのように鮮やかな群青を貼り付けていた。
地割れが到達する寸前、もう一度俺はスズカをこっちへ抱き寄せた。
「っ、ソーヤ」
「飛ぶぞスズカッ!!」
噴気孔まであと一歩のところで足元は崩れ始める。
次の瞬間、新たな通り道を見つけた気流が俺達を宙へ打ち上げた。
「くっ、こっからぁぁぁ……!」
発泡スチロールのように煽られて軌道の制御の効かない。乱気流の中、背中から伸びた紐を一思いに引いた。
バッと張った帆は風を受け止め、一気に俺を更に押し上げる。
「おわっ!?」
「そっ、ソーヤ!」
急に開いたダイビングスーツは予想以上に風を掴む。
瞬間的な勢いに押され、思わず彼女と手が離れてしまった。
「スズカっ!」
プールの底へ潜る要領で、手足を縮めたり体を反らして空気抵抗を減らす。
離れては近付き、近付いてはまた離れる。手が掠る程度でスズカにあと一つ届かない。
「ソぅっ……!」
「置いてかない。お前のこと、諦めないから!」
泣きそうなその顔を安心させたくて、言葉が真っ先に口から出た。
掴みも踏ん張りも効かない空中で、俺達は手を伸ばした。氷も熱風で解け、水が雨のように空に昇っていく。
その氷も水滴も掻い潜って、全体重をその右腕に掛けた。
「しっかり、俺に掴まって!」
「うんっ……!」
最後に伸ばしたその手は、しっかり彼女の手を握り締めていた。
手繰るように抱き寄せ、今度こそ離さないようスズカを腕の中に抱く。それを見計らったように、上昇気流はマグマの熱で更に高く突き抜ける。
ふと世界を見下ろした時――凍っていたダンジョンの夏は、溶け始めていた。
涼し気な絶景も、美しい銀世界も、蒼い海と空で満たされたダンジョンの全てが、幻想の終わりを向かえる。
俺達が夢見た夏の憧憬はあっけなく現実に還りつつあった。氷の割れる音すらもう聞こえない。
「さようなら、だな」
「……ありがとう。私達の、もう一つの故郷」
別れの言葉を告げた瞬間が、ダンジョンを目にした最後になった。
「――っ!」
噴出口のルートから反れたのか、それまで押し上げていた上昇気流が途端に消える。
そして肉眼へ、三百六十度の地上の風景が飛び込んで来た。
ダンジョン出口の穴をゆうに超え、山の木々の少し上まで飛び出したらしい。ムササビのように舞い上がったことで、街の景色が一望出来た。
蒼さだけじゃない。深い緑も、アスファルトのグレーも、道を作る土の色もある。いつも通りで、けどどこか懐かしい俺達の世界だ。
蝉時雨がうるさくて、肌にまとわりつく湿気で汗が滲む。日差しは強過ぎて顔が痛いぐらいだ。呼吸するのだって、のぼせそうなほど空気が蒸せて苦しかった。
それでも、
「あっはは。外、やっぱり暑いね!」
本物の日の光を浴びるスズカの表情は向日葵のようだった。
可憐で凛としていて、黄色い笑顔が世界の中心で弾ける。キャンバスから飛び出したみたいに鮮烈な存在感が、俺の胸を打ち鳴らさせた。
薄っすら汗を浮かべた小麦の肌に触れたまま、つられて俺も笑いを零す。
「ハッ。ホント、嫌になっちまうよな!」
緩やかな自由落下と共に山を下っていく。お互いの体を抱き寄せながら。
蒸し暑い夏の昼下がりも今日だけは許せてしまう。顔に当たる山の風はほんのり涼しさを帯びているようだった。
氷晶の鯨は凍土を裂いて泳ぎ続ける。舞い上がる粉雪と削れた氷が煙のように立ち込めた。高音の叫びを放ち、問答無用に進む様は北極の海中列車だ。
「ソーヤ、速度上がってるけど大丈夫!?」
「なんとかな。鯨の皮膚に杭刺してるし、さっき貰ったコイツも着たからさ」
投げ渡されたライフジャケットのような装備を指さした。蝉谷さんの言う通り、これがダイビングスーツとして展開されることを祈る。
「頼む、もう少し、踏ん張ってくれ……!」
鯨とは別に、地震と遠くからの爆発音が強まるばかり。こうしている間にも、ダンジョン崩壊のタイムリミットは近付いている。
「ソーヤ、もう少しで出口! それに、あれ見て!」
雪山の麓は地形が乱れて漂着町は原型を留めていなかった。
だが僥倖。ひしゃげた地面の隙間から巨大な噴気孔が新たに口を開いていた。
それもヒビは鯨でさえ埋まりそうな大きさで、気流の激しさも段違い。天井の出口までひとっ飛び出来そうだった。
「あそこに飛び込めば……! けどどうする? 飛び降りるタイミングとかさ」
「さんにーいちでジャンプするよ!」
「あー勢いまんまね! 了解!」
スズカと腕を組んで飛び降りる体勢を取りかけた途端、大地の血潮が傍で脈を打った。
「きゃあっ!?」
「スズカ、俺を掴んで!」
硬いダイヤのような鯨の皮膚へ突き立てたアンカー。突き刺したその一本と命綱を頼りに、俺は両腕でスズカを抱え込んだ。
軽くて柔らかな彼女の体が離れないよう、無我夢中で抱き締めた。
一際激しい揺れ。鯨も動揺して咆哮を上げている。高速道路を走る車の上に乗っかっているようで、今にも放り出されそうだった。
「離さない! 何があっても、一緒だからな!」
「っ、うん……!」
二転三転し、シェイクされるような視界。氷の世界は拍動の如く地鳴りと爆発を小刻みに鳴らす。
鯨の上で出来たことは、ただその世界の動転にスズカとやり過ごすしかできなかった。
それでもお互いの肌が触れているだけで、大丈夫と思える安心感があった。指先も震え一つさえない。
もう俺達の絆は氷のように解けも、花のように枯れもしないから。
二人で肌を合わせていると、次第にダンジョンの動揺が収まっていった。
「つつ、やっと終わったか……大丈夫かスズカ? 怪我してないか!?」
「うん、私は平気。けど……」
スズカが下ろした目線の先では、すっかり静かになった氷晶の鯨がその鰭をだらんと揺らしていた。
氷を突き進む馬力は失われ、慣性だけでこの巨体は前進しているだけだ。
呼吸も脈拍も失われ、口から漏れたのは筋肉が弛緩した事で発せられただけの鳴き声だった。やがて氷雪に塞き止められ、鯨は完全停止する。
「おいヌシ、大丈夫か!? あとちょっとなんだ。どうにか――」
「ソーヤ。これもう……」
つぶらな瞳は既に瞳孔が開いていた。目が合ったことで、鯨が息絶えてしまった事実を嫌でも知らされる。
つい数秒前まで全力で泳いでいた生命に訪れた突然の終わりに、俺も訳が分からなかった。
「怪我したのか? それとも内臓がやられたとか――」
目立った致命的外傷は見られない。細かな傷は全て古傷で、凍傷や火傷の痕も見られない。むしろ穏やかな眠りについているようにさえ伺える。
白昼に氷が水の一滴まで蒸発して消えるように、命がそこからフッと失せていたのだ。
「寿命、か? お前、もしかして……」
より冷たくなったクリスタルのような皮膚に触れている間、俺の脳裏をある思考が巡っていた。
――巨大化、異様な生態、奇形、遺伝子情報が組み換わったような体、文献で見た放射線を受けた動物に類似した突然変異。
山の麓に埋まっていた戦時中の沈没船、この鯨の激しい爆発を恐れる習性、八十年前に近くで起きていた出来事……
錯綜した思考は自ずと答えを導き出した。
そしてここまで絶えず泳ぎ続けてくれた氷晶の鯨に、せめてもの弔いの言葉を告げる。
「……長いこと、お疲れさん。ゆっくり眠れよ」
こいつも人の都合で変わっちまった環境に振り回されてたのに、最期まで懸命に生きてこの場所を守ってくれた。その力強く尊い生命に、俺は敬意を表す。
降りる間際の一撫でをもって、勝手ながら手向けにさせてもらった。
鯨の亡骸から飛び降り、再び降り立った氷土はもう終点の目と鼻の先だった。
突き上げる暴風を放つ噴気孔が数百メートル前方に拝める。
「着いた。これで――」
遥か後方から空前絶後の爆裂音が轟いた。
一度目の空気を弾く破裂音を追いかけ、ドロドロと煮え滾る岩の声が最下層の空洞から届きつつある。
ついに大地の血潮が漏れ出した。氷の世界は境界を失い、炎の奔流と顔を合わせてしまったのだ。
「この音、マグマだ……ッ、スズカ!」
「こっちだよソーヤ!」
噴気孔の穴を目指し、一目散に走り出した。スズカに手を引かれ、なんとかそれに着いていく。はち切れそうな足に鞭打って、今出せる最高速度で駆け抜けた。
だがそれ以上の速さで、背後から地面の割れる音が迫ってくる。
小規模の連続的な爆発、塊ごとに大地が下層へ落ちていく様子が音だけで分かった。
「まずい、崩れる!」
間もなく足場の崩落に追い付かれる。
その時、スズカがダンジョンの上を指さした。
「ソーヤ、あそこ! 空が見えるよ!」
それは氷世界の見せる幻の空じゃない。正真正銘、高くて蒼い見知った夏空だ。
爆発か、それとも蝉谷さん達のおかげか。天井の一部が落ちて、ピースの欠けたパズルのように鮮やかな群青を貼り付けていた。
地割れが到達する寸前、もう一度俺はスズカをこっちへ抱き寄せた。
「っ、ソーヤ」
「飛ぶぞスズカッ!!」
噴気孔まであと一歩のところで足元は崩れ始める。
次の瞬間、新たな通り道を見つけた気流が俺達を宙へ打ち上げた。
「くっ、こっからぁぁぁ……!」
発泡スチロールのように煽られて軌道の制御の効かない。乱気流の中、背中から伸びた紐を一思いに引いた。
バッと張った帆は風を受け止め、一気に俺を更に押し上げる。
「おわっ!?」
「そっ、ソーヤ!」
急に開いたダイビングスーツは予想以上に風を掴む。
瞬間的な勢いに押され、思わず彼女と手が離れてしまった。
「スズカっ!」
プールの底へ潜る要領で、手足を縮めたり体を反らして空気抵抗を減らす。
離れては近付き、近付いてはまた離れる。手が掠る程度でスズカにあと一つ届かない。
「ソぅっ……!」
「置いてかない。お前のこと、諦めないから!」
泣きそうなその顔を安心させたくて、言葉が真っ先に口から出た。
掴みも踏ん張りも効かない空中で、俺達は手を伸ばした。氷も熱風で解け、水が雨のように空に昇っていく。
その氷も水滴も掻い潜って、全体重をその右腕に掛けた。
「しっかり、俺に掴まって!」
「うんっ……!」
最後に伸ばしたその手は、しっかり彼女の手を握り締めていた。
手繰るように抱き寄せ、今度こそ離さないようスズカを腕の中に抱く。それを見計らったように、上昇気流はマグマの熱で更に高く突き抜ける。
ふと世界を見下ろした時――凍っていたダンジョンの夏は、溶け始めていた。
涼し気な絶景も、美しい銀世界も、蒼い海と空で満たされたダンジョンの全てが、幻想の終わりを向かえる。
俺達が夢見た夏の憧憬はあっけなく現実に還りつつあった。氷の割れる音すらもう聞こえない。
「さようなら、だな」
「……ありがとう。私達の、もう一つの故郷」
別れの言葉を告げた瞬間が、ダンジョンを目にした最後になった。
「――っ!」
噴出口のルートから反れたのか、それまで押し上げていた上昇気流が途端に消える。
そして肉眼へ、三百六十度の地上の風景が飛び込んで来た。
ダンジョン出口の穴をゆうに超え、山の木々の少し上まで飛び出したらしい。ムササビのように舞い上がったことで、街の景色が一望出来た。
蒼さだけじゃない。深い緑も、アスファルトのグレーも、道を作る土の色もある。いつも通りで、けどどこか懐かしい俺達の世界だ。
蝉時雨がうるさくて、肌にまとわりつく湿気で汗が滲む。日差しは強過ぎて顔が痛いぐらいだ。呼吸するのだって、のぼせそうなほど空気が蒸せて苦しかった。
それでも、
「あっはは。外、やっぱり暑いね!」
本物の日の光を浴びるスズカの表情は向日葵のようだった。
可憐で凛としていて、黄色い笑顔が世界の中心で弾ける。キャンバスから飛び出したみたいに鮮烈な存在感が、俺の胸を打ち鳴らさせた。
薄っすら汗を浮かべた小麦の肌に触れたまま、つられて俺も笑いを零す。
「ハッ。ホント、嫌になっちまうよな!」
緩やかな自由落下と共に山を下っていく。お互いの体を抱き寄せながら。
蒸し暑い夏の昼下がりも今日だけは許せてしまう。顔に当たる山の風はほんのり涼しさを帯びているようだった。



