それでもいいと思ってた

 きみが私を好きでないことは、知ってた。
 きみが誰を好きなのかも、知ってた。

 なのに私は、きみを好きでいることをやめられなかったし、きみに想いを打ち明けさえした。

 きみはあまり驚かなかったよね。勘の良いきみのことだから、私の気持ちなどとうに知っていたんだと思う。

 本当は断りたかったんでしょう?

 でもきみの優しさが、私を拒絶することを許さなかった。

 私は多分それさえもわかっていて、きみに告白したんだと思う。卑怯でも、浅ましくても、私はきみが欲しかった。

 きみがうなずいてくれたとき、私は本当に嬉しかった。これ以上の喜びはなかった。きみにとって特別の存在になれたと思った。世界が変わって見えた。
 
――ただの幻だったのに。

 昨日の今日で、突然何かが変わるはずがない。きみの瞳の追う先が私になるわけじゃないし、きみの愛が私に捧げられるわけでもない。

 きみが私を受け入れた瞬間、崩壊は始まっていたんだ。

 今ならそれがよくわかる。それから数ヶ月かけて輝きは少しずつ失われ、私が信じた宝石はただのガラス玉になった。

 きみはそれでもよく努力してくれたのだと思う。

 登下校するときも、教室にいるときも、きみは私の望むように振る舞ってくれた。私はただただ笑顔で、誇らしくて、信じられないくらい強くなれた。
 きみのためなら何でもできると本気で思っていたし、どんなことでもしたいと思っていた。

 でもきみは何ひとつ、私に望まなかったね。

 最初それはきみの謙虚さから来るものだと思っていた。そして、そのことがさらに私をきみに夢中にさせた。

 けれど違った。きみは私に何も期待していなかった。欲しくもなかった。

 私があげられるものは何も――。