朝礼にまさかのジョニー店長の身内が参上し、スタッフ達は驚きを隠せないのも束の間。
美幸が発したネイル導入宣言により、美容院『アンジェリ』のスタッフ一同は沸いていた。
これにやれやれと息を吐き捨てるジョニー店長であった。
「一先ず女子は全員営業時間終了後にネイルを受けて貰うからね」
このセリフに女性スタッフ全員が反応する。
「やったー!」
「よっしゃー!」
「嬉しいー!」
相当興奮していた。
特にクリスタルちゃんの喜びようが半端ない。
ガッツポーズを決めていたぐらいだ。
「おい美幸、ツケ爪やゴテゴテしたのは無しだぞ・・・」
「分かってるってー」
女性陣の反応を見てにやける美幸。
「ならいいけど・・・」
クロムウェルさんは一人置き去りだ、でもニコニコとしている。
見守っているのだろう、このメンバーにとっては頼れるおじさん?だしね。
「それにしてもジョニー店長に妹さんがいたんですね?」
シルビアちゃんにとっては意外らしい。
そんなに一人っ子オーラ出してたっけ俺?
「まあね、後ついでに言っておくけども、親父と美幸の娘の亜紀も後にやってくるだろう」
「そうなんですか?」
「ああ」
「美幸さんは娘さんが居らっしゃるんですね、そうは見えませんでした・・・」
シルビアちゃんが美幸をまじまじと見つめている。
「そう?」
「はい、お綺麗ですし、肌もピチピチですし」
「まあ、上手な子ねぇ」
美幸はシルビアちゃんの頭を撫でていた。
もうお姉さん気分だな。
にしても美幸もなかなかの処世術だな。
早くも馴染みだしてるよ・・・
「後日まつ毛パーマもするからよろしくね」
「まつ毛もパーマが可能なんですね・・・」
マリアンヌさんは不思議そうに美幸のまつ毛を眺めていた。
「興味あるでしょ?美容師さんならさあ?」
「はい!勿論です!」
「まあ、とは言っても施術用のチェアーが届いてからなんだけどね・・・」
「そのチェアーはどこに置くんですか?」
シルビアちゃんが割り込んでくる。
「それは着付け室よ、そこ以外にあるの?」
「「「「えっ!!!」」」」
全員が固まってしまった。
それはそうだろう、着付け室はスタッフ達にとっては危険な場所との認識なのだから。
人ならざる者がいる部屋、それが着付け室だ。
その人ならざる者の正体は・・・
「ん?何か問題があった?」
「美幸・・・あれだ・・・忘れたのか?お前?」
「ん?・・・ああー、ハナコサンかぁー・・・なるほど・・・」
そのワードにスタッフ全員の背筋が凍る。
そこにこの時間にしては珍しく、ライジングサン一行がお店にやってきた。
どうやらライゼルが美幸たちが来たことを言いふらした様子。
俺の身内に挨拶でもしようとでも思っているのだろう。
「ようジョニー!」
「おはよう」
「まだ眠いぜ・・・」
「お腹が減っただで・・・」
真面に挨拶をしたのはメイランだけだった。
リックとモリゾーはテンションの高いライゼルに巻き込まれたようだ。
眠そうに眼を擦っている。
「来たのか・・・お前ら・・・」
「おうよ!」
ライゼルはテンション高く、美幸をチラ見していた。
何やってんだかこいつは・・・
「へえー、あんたがジョニーの妹さんかい?」
欠伸を噛み殺しながらリックが前に出てくる。
「そうよ、あなたは?」
「俺はリックだ」
「あなたがリックね、確か夜の責任者さんよね?」
眼を細めてリックを品定めしている美幸。
「ああ、そうだ」
ウンウンと頷きながら美幸は更に眼を細めていた。
「ということはあなたがモリゾーね?」
今度はモリゾーに視線を向ける美幸。
「そうだで、おでの事を何で知ってるだ?」
「大体の事は兄貴から聞いてるからね」
「なるほどだで・・・」
「こちらはメイランね?」
「ええ、そうよ」
メイランは右手を差し出していた。
握り返す美幸。
「ドレッドが似合ってるわねー、あなた。良いわね」
「ウフフ・・・お気に入りなのよ」
髪に触れ、嬉しそうにしているメイラン。
一通り挨拶は済んだ模様。
さて、話を戻そうか・・・
「いずれにしても施術用のソファーは着付け室以外には置けないからな」
俺の発言にビクッと身体を震わすライジングサン一行。
「き・・・着付け室って・・・まさか・・・」
「いけないだで!」
「おいおいおい!」
「うっ!・・・」
メイランに至っては絶句していた。
「はあ?なにビビッてやがるんだ?お前ら?」
「だって・・・いるんだろ?」
「何が?」
「人ならざる者がさ・・・」
俺はきっちりとライゼルを見定める。
「そうだ!!!」
「ほれみろ!そんな存在がいる所になんて入れる訳あるか?それに着付け室にはジョニーしか入れない魔法がかかってるんだろ?」
「ああ、それかあ・・・解いたぞ・・・」
というか、そもそもそんな魔法なんて掛かっていないっての・・・
「何?」
たじろぐライゼル。
「これで誰でも入る事ができるぞ」
「とは言っても・・・」
「いるんでしょ?・・・」
「怖えよ・・・」
冷静沈着なクロムウェルさんまで顔を引き攣らせている。
うーん、もうちょっと引っ張ってみようかな?
俺は両手を組んで神妙な面持ちで語りかけた。
「人ならざる者・・・その名はハナコサン・・・」
「うう・・・」
「ほら、やっぱり・・・」
「妖怪かお化けの類か?」
口々に驚きつつも感想や疑問を述べていた。
「ハナコサンはな・・・俺の口からは言えないな・・・そうだよな?美幸?」
「なっ!」
「そんな・・・」
美幸が心得たと前に出てくる。
「そうよ・・・その存在についてはとてもじゃないけど、私や兄貴からは言えないわね・・・恐れ多いのよ・・・」
俺に倣って悪乗りを始める美幸。
「何なんだよいったい?・・・」
「ハナコサン・・・何とも言えない響き・・・」
「物の怪なのか?」
いつまでも怖がらせても仕方がないよな。
さてと・・・
俺はスルリと着付け室の前にやってきた。
振り返ってこう宣言した。
「お前達に・・・ハナコサンを紹介してやる・・・フフフ・・・」
これでもか!という程に悪い笑顔を振り撒いておいた。
全員が凍り付く。
モリゾーに至っては諤々と震えていた。
良い反応でございます!
俺は着付け室に入ると、ハナコサンの後頭部を掴む。
鷲掴みにすると扉へと向かう。
そして扉を少しだけ空けて、ひょっこりと顔を出して、皆がどんな表情を浮かべているのかを確認した。
息を飲む者・・・
顔を引き攣らせている者・・・
眼を両手で覆い隠している者・・・
両手を合わせて祈っている者・・・
そして、ほくそ笑む美幸・・・
扉から顔だけ出している俺にライゼルが問いかける。
その身体はブルブルと震えていた。
「ジョ・・・ジョニー・・・会わなきゃ駄目か?」
「フフフ・・・何を今更・・・」
「怖え・・・怖えよ・・・」
「さあ、ハナコサンとご対面だ!」
俺はハナコさんを俺の下から顔だけを覗かせる。
静寂が場を支配したのも束の間。
するとその生気の無い表情を見て、悲鳴が巻き起こった。
「ギャアーーー‼‼‼」
「無理!無理!無理!」
「人では無い!何かだで!!!」
「うわーーー‼‼‼出たーーー‼‼‼」
大騒ぎだ。
この様に声を堪えて大笑いする美幸。
太腿をバシバシと叩いている。
こいつも大人気ないねえ?まあ俺も変わらんか?
この反応を待ってましたよ!
でもこれは美容院あるあるだから許して欲しい。
そしてハナコサンを見て怖がるのもよく分かる。
だって日本でもハナコサンを見て驚く人が沢山いるからね。
それとなく机の上に置かれているのを見ると、ドキッとするもんなんだよね。
俺は慣れてしまったが、家族達はそうとはいかず。
始めてハナコサンを見た亜紀は大泣きしていたからな。
親父もドキッとしていたのを俺は見逃してないからね。
そして俺はフィナーレに取り掛かった。
身体をスクッと扉から出して、ハナコサンを両手に掲げる。
それを見て更なる大騒ぎが始まった。
「ギャアーーー‼‼‼」
「生首ぃーーー‼‼‼」
「呪わないでくれだでーーー!!!」
「助けてくれーーー‼‼‼」
膝から崩れ落ちる者。
身体を硬直している者。
余りの衝撃に我を見失う者。
全員がそのインパクトに驚愕していた。
そうハナコサンとは美容室のバックルームや着付け室には必須の、施術練習用の頭部のみのウィッグのことである。
見慣れない者には気持ち悪いの代名詞的なそれであった。
「ライゼル、受け取れ!」
俺はハナコサンをライゼルにポイっと放り投げる。
「いやぁぁぁあーーー‼‼‼」
全力で逃げるライゼル。
その様子を見て、俺と美幸は腹を抱えて笑っていた。
これが笑わずにいられますかっての!
いやー、やっと美容院のお決まりを果たすことが出来たよ。
長かったなー、にしても笑える!
ギャハハハ!!!
美幸が発したネイル導入宣言により、美容院『アンジェリ』のスタッフ一同は沸いていた。
これにやれやれと息を吐き捨てるジョニー店長であった。
「一先ず女子は全員営業時間終了後にネイルを受けて貰うからね」
このセリフに女性スタッフ全員が反応する。
「やったー!」
「よっしゃー!」
「嬉しいー!」
相当興奮していた。
特にクリスタルちゃんの喜びようが半端ない。
ガッツポーズを決めていたぐらいだ。
「おい美幸、ツケ爪やゴテゴテしたのは無しだぞ・・・」
「分かってるってー」
女性陣の反応を見てにやける美幸。
「ならいいけど・・・」
クロムウェルさんは一人置き去りだ、でもニコニコとしている。
見守っているのだろう、このメンバーにとっては頼れるおじさん?だしね。
「それにしてもジョニー店長に妹さんがいたんですね?」
シルビアちゃんにとっては意外らしい。
そんなに一人っ子オーラ出してたっけ俺?
「まあね、後ついでに言っておくけども、親父と美幸の娘の亜紀も後にやってくるだろう」
「そうなんですか?」
「ああ」
「美幸さんは娘さんが居らっしゃるんですね、そうは見えませんでした・・・」
シルビアちゃんが美幸をまじまじと見つめている。
「そう?」
「はい、お綺麗ですし、肌もピチピチですし」
「まあ、上手な子ねぇ」
美幸はシルビアちゃんの頭を撫でていた。
もうお姉さん気分だな。
にしても美幸もなかなかの処世術だな。
早くも馴染みだしてるよ・・・
「後日まつ毛パーマもするからよろしくね」
「まつ毛もパーマが可能なんですね・・・」
マリアンヌさんは不思議そうに美幸のまつ毛を眺めていた。
「興味あるでしょ?美容師さんならさあ?」
「はい!勿論です!」
「まあ、とは言っても施術用のチェアーが届いてからなんだけどね・・・」
「そのチェアーはどこに置くんですか?」
シルビアちゃんが割り込んでくる。
「それは着付け室よ、そこ以外にあるの?」
「「「「えっ!!!」」」」
全員が固まってしまった。
それはそうだろう、着付け室はスタッフ達にとっては危険な場所との認識なのだから。
人ならざる者がいる部屋、それが着付け室だ。
その人ならざる者の正体は・・・
「ん?何か問題があった?」
「美幸・・・あれだ・・・忘れたのか?お前?」
「ん?・・・ああー、ハナコサンかぁー・・・なるほど・・・」
そのワードにスタッフ全員の背筋が凍る。
そこにこの時間にしては珍しく、ライジングサン一行がお店にやってきた。
どうやらライゼルが美幸たちが来たことを言いふらした様子。
俺の身内に挨拶でもしようとでも思っているのだろう。
「ようジョニー!」
「おはよう」
「まだ眠いぜ・・・」
「お腹が減っただで・・・」
真面に挨拶をしたのはメイランだけだった。
リックとモリゾーはテンションの高いライゼルに巻き込まれたようだ。
眠そうに眼を擦っている。
「来たのか・・・お前ら・・・」
「おうよ!」
ライゼルはテンション高く、美幸をチラ見していた。
何やってんだかこいつは・・・
「へえー、あんたがジョニーの妹さんかい?」
欠伸を噛み殺しながらリックが前に出てくる。
「そうよ、あなたは?」
「俺はリックだ」
「あなたがリックね、確か夜の責任者さんよね?」
眼を細めてリックを品定めしている美幸。
「ああ、そうだ」
ウンウンと頷きながら美幸は更に眼を細めていた。
「ということはあなたがモリゾーね?」
今度はモリゾーに視線を向ける美幸。
「そうだで、おでの事を何で知ってるだ?」
「大体の事は兄貴から聞いてるからね」
「なるほどだで・・・」
「こちらはメイランね?」
「ええ、そうよ」
メイランは右手を差し出していた。
握り返す美幸。
「ドレッドが似合ってるわねー、あなた。良いわね」
「ウフフ・・・お気に入りなのよ」
髪に触れ、嬉しそうにしているメイラン。
一通り挨拶は済んだ模様。
さて、話を戻そうか・・・
「いずれにしても施術用のソファーは着付け室以外には置けないからな」
俺の発言にビクッと身体を震わすライジングサン一行。
「き・・・着付け室って・・・まさか・・・」
「いけないだで!」
「おいおいおい!」
「うっ!・・・」
メイランに至っては絶句していた。
「はあ?なにビビッてやがるんだ?お前ら?」
「だって・・・いるんだろ?」
「何が?」
「人ならざる者がさ・・・」
俺はきっちりとライゼルを見定める。
「そうだ!!!」
「ほれみろ!そんな存在がいる所になんて入れる訳あるか?それに着付け室にはジョニーしか入れない魔法がかかってるんだろ?」
「ああ、それかあ・・・解いたぞ・・・」
というか、そもそもそんな魔法なんて掛かっていないっての・・・
「何?」
たじろぐライゼル。
「これで誰でも入る事ができるぞ」
「とは言っても・・・」
「いるんでしょ?・・・」
「怖えよ・・・」
冷静沈着なクロムウェルさんまで顔を引き攣らせている。
うーん、もうちょっと引っ張ってみようかな?
俺は両手を組んで神妙な面持ちで語りかけた。
「人ならざる者・・・その名はハナコサン・・・」
「うう・・・」
「ほら、やっぱり・・・」
「妖怪かお化けの類か?」
口々に驚きつつも感想や疑問を述べていた。
「ハナコサンはな・・・俺の口からは言えないな・・・そうだよな?美幸?」
「なっ!」
「そんな・・・」
美幸が心得たと前に出てくる。
「そうよ・・・その存在についてはとてもじゃないけど、私や兄貴からは言えないわね・・・恐れ多いのよ・・・」
俺に倣って悪乗りを始める美幸。
「何なんだよいったい?・・・」
「ハナコサン・・・何とも言えない響き・・・」
「物の怪なのか?」
いつまでも怖がらせても仕方がないよな。
さてと・・・
俺はスルリと着付け室の前にやってきた。
振り返ってこう宣言した。
「お前達に・・・ハナコサンを紹介してやる・・・フフフ・・・」
これでもか!という程に悪い笑顔を振り撒いておいた。
全員が凍り付く。
モリゾーに至っては諤々と震えていた。
良い反応でございます!
俺は着付け室に入ると、ハナコサンの後頭部を掴む。
鷲掴みにすると扉へと向かう。
そして扉を少しだけ空けて、ひょっこりと顔を出して、皆がどんな表情を浮かべているのかを確認した。
息を飲む者・・・
顔を引き攣らせている者・・・
眼を両手で覆い隠している者・・・
両手を合わせて祈っている者・・・
そして、ほくそ笑む美幸・・・
扉から顔だけ出している俺にライゼルが問いかける。
その身体はブルブルと震えていた。
「ジョ・・・ジョニー・・・会わなきゃ駄目か?」
「フフフ・・・何を今更・・・」
「怖え・・・怖えよ・・・」
「さあ、ハナコサンとご対面だ!」
俺はハナコさんを俺の下から顔だけを覗かせる。
静寂が場を支配したのも束の間。
するとその生気の無い表情を見て、悲鳴が巻き起こった。
「ギャアーーー‼‼‼」
「無理!無理!無理!」
「人では無い!何かだで!!!」
「うわーーー‼‼‼出たーーー‼‼‼」
大騒ぎだ。
この様に声を堪えて大笑いする美幸。
太腿をバシバシと叩いている。
こいつも大人気ないねえ?まあ俺も変わらんか?
この反応を待ってましたよ!
でもこれは美容院あるあるだから許して欲しい。
そしてハナコサンを見て怖がるのもよく分かる。
だって日本でもハナコサンを見て驚く人が沢山いるからね。
それとなく机の上に置かれているのを見ると、ドキッとするもんなんだよね。
俺は慣れてしまったが、家族達はそうとはいかず。
始めてハナコサンを見た亜紀は大泣きしていたからな。
親父もドキッとしていたのを俺は見逃してないからね。
そして俺はフィナーレに取り掛かった。
身体をスクッと扉から出して、ハナコサンを両手に掲げる。
それを見て更なる大騒ぎが始まった。
「ギャアーーー‼‼‼」
「生首ぃーーー‼‼‼」
「呪わないでくれだでーーー!!!」
「助けてくれーーー‼‼‼」
膝から崩れ落ちる者。
身体を硬直している者。
余りの衝撃に我を見失う者。
全員がそのインパクトに驚愕していた。
そうハナコサンとは美容室のバックルームや着付け室には必須の、施術練習用の頭部のみのウィッグのことである。
見慣れない者には気持ち悪いの代名詞的なそれであった。
「ライゼル、受け取れ!」
俺はハナコサンをライゼルにポイっと放り投げる。
「いやぁぁぁあーーー‼‼‼」
全力で逃げるライゼル。
その様子を見て、俺と美幸は腹を抱えて笑っていた。
これが笑わずにいられますかっての!
いやー、やっと美容院のお決まりを果たすことが出来たよ。
長かったなー、にしても笑える!
ギャハハハ!!!

