翌日にはバックルームで泣きじゃくるシルビアちゃんがいた。
大号泣している。
止めどなく流れる涙を留める事が出来ていなかった。
宥めようとするマリアンヌさんとクリスタルちゃんを、俺は首を振って制止した。
これはいったいどういうことか・・・
シルビアちゃんはこれまでとは違い、遂に報酬を得るカットを行ったのだ。
要はこれまでとは違い、モニターでは無く、カット料金を頂いてヘアーカットを行ったということだ。
美容師免許を取得したシルビアちゃんは、予約表に入っているお客さんに施術を行う事になったのだった。
始めてのカットは、子供のカットだった。
五歳児の男の子、常連のお客さんのお子さんだ。
カット台の椅子に、子供用に椅子を重ねて、そこに子供が座っている。
実は子供のカットはそれなりに厄介だ。
さて、どうなることやら。
これは見ものだな。
お手並み拝見・・・
どういう事かと言うと、子供は髪を切られる事を嫌がる子がいて、場合によっては暴れたり、泣きじゃくる子もいるのだ。
子供にとっては髪を切る事は非日常であることなのだ。
子供は独特の感性をしている。
此処をどう捉えるかによって、接し方は変わる。
それなりの接客技術が必要なんだよね。
この接し方をシルビアちゃんはその研鑽を重ねた接客の感性によって、上手く熟していた。
カットに入る前に、子供と会話を行い、関係性を構築していた。
流石と言わざるを得ない。
上手いな・・・しかし・・・
その一時間後には泣きじゃくるシルビアちゃんがいた。
始めてのお客さんのカットで緊張したのか、はたまた手元が上手く定まらなかったのか、二十分以内に終えるカットが、四十五分かかってしまったのだった。
これは時間だけの問題では無かった。
カットも思った通りのカットが一切出来ておらず、それを何とか補おうと、更にしてはいけない施術を行っていた。
結果として、俺の仕上げがほとんどのカットになってしまう事態になった。
もっと言うと俺の仕上げがある段階で間違っている。
プロの美容師であるならば、先生の仕上げは必要ないのだ。
これよりも前から俺は先生と呼ばれていた、今更ながらではあるのだが・・・
髪結い組合に倣ってか、そう呼ばれるようになっていたよ。
ほんと今更だよ・・・
この燦々たる結果にシルビアちゃんは大号泣していた。
それを俺は何もすることなく、他っておいた。
ここは何もしてはいけない場面だ。
自分の努力で覆していくしかないのだから。
それを俺はよく知っている。
それにしても、ここで泣けることが重要であったりもする。
それだけ真剣な証拠だし、此処での悔しい想いが彼女を成長させることになるのだから。
始めに躓いて正解だな。
ある程度熟してきてからの失敗は堪えるからな。
俺の場合はそっちだったからね。
どうして上手くいかなかったのかの原因は未だに分からないし。
困ったものだよ、多分視力だと思うのだが、どうだろうか?
俺の視力は左右差がある、その為角度によっては見え方が違うのだ。
眼鏡を掛けようかとも考えたのだが、視力そのものは裸眼でも運転免許を更新できるぐらいだから、止めておいたよ。
因みに右は1.5、左は0.7だ。
困ったものだよ・・・
俺の事はいいとして、シルビアちゃんは試練の時だな。
頑張れ!シルビア!
ここは踏ん張り処だぞ。
君なら出来る!
その翌日。
朝起きた時に俺は感じていた、今日何かが起こると。
予感めいたものを感じると共に、期待の想いで心が躍り出しそうだった。
ワクワクするとはこういう事を言うのだろう。
なんだろうこの高揚感は・・・
いつもよりも少し早めに準備をし、お店の裏口を潜る。
そして俺は異世界へと転移した。
まだ早い時間、季節は春。
陽光が顔を出す頃、少し肌寒さがあり、上着の首元を束ねて暖を取る。
まだ早い時間にも関わらず、ライゼルは庭先にいた。
見慣れたいつもの光景だと思ったのだが・・・
様子が違った・・・
いつもであれば、せっせと庭先を弄っては、微笑ましくしているライゼルは、あろうことか、跪いていたのだ。
ん?何やってんだ、あいつ?
興味をそそられて庭先に行くと、俺はあり得ない光景を目にする事になった。
それは随分前に設置した、大きめの鳥小屋に鳳がいたのだ。
余りの光景に俺は一瞬固まってしまった。
ライゼルはこの鳳に対して跪いていたのだ。
鳳は顔だけを出して、ライゼルを見下げている。
その視線はとても愛情に満ちていた。
その眼を見て俺はある存在である事を確信した。
そして俺は一気に興奮を抑えられない程の感情の渦に巻きこまれていた。
そう、俺は一瞬にしてその存在を魂で感じたのだ。
ララ!!!
間違いない・・・ララだ!!!
姿形は全く違う。
なにより俺の知るララは犬なのだ。
でもこの鳳は紛れも無くララだ!そう感じて疑わない。
直感などという不確かな物では無い、実感という確実な物として感じた。
不意に頬に熱い物を感じた。
心が打ち震えた、俺は涙を流していたのだ。
でもそんなことはどうでもいい。
ゆっくりと、確実に俺はララに向かって歩を進めた。
自然と身体が動いていた。
ララが俺を見ると、笑った様な気がした。
見慣れている様な・・・見慣れていない様な笑顔・・・
でも・・・確実に・・・こいつは・・・
ああ・・・なんで・・・ララがいるんだ?
どうして・・・
俺の脳裏に声が響いた。
(ジョ兄ーーー!!!会いたかったよーーーー!!!!)
うおっ!何だ!この感覚!
直接頭に声が響くぞ!
でも・・・これがララの声か・・・初めて聴いたぞ。
少々甲高いが可愛い声だった。
鳳がその大きな身体を小屋から出して、一目散に俺に向かって来た。
翼を広げて舞い、七色に輝る尻尾が優雅に揺れていた。
おいおいおい!それなりに大きいぞ!
鳳は俺の眼の前を潜り抜け、上空でホバリングした。
なんて雄大な鳳なんだ・・・でも・・・可愛いぞ!
ララ!!!可愛いぞ!!!
そして鳳は俺の肩に留まった。
充分な重みを感じる。
これは幸せの重みだ。
「ララ!ララだよな!」
俺は興奮していた。
相棒のララが、こうして近くにいるのだから。
これは奇跡だ!
そうに違いない!
(そうだよ!僕だよ!!!)
「ああ・・・ララ・・・会いたかった・・・」
(うん!僕も!!!)
押しあがってくる涙を堪える事は出来なかった。
だって・・・一番会いたかったのだから・・・俺はこいつに・・・
ララも涙を流していた。
ララは頬を俺の頬にスリスリしている。
ああ・・・嬉しい・・・最高だ!
ララに再会出来るなんて・・・
・・・?・・・それにしてもどうして?
何かと疑問だらけだぞ。
ちょっと素面になってしまったぞ。
「ララ・・・どうなってんだ?」
(ウフフ・・・後で説明するね)
「ああ・・・」
ララは変わらずに頬を押し付けてきた。
俺もそれを甘んじて受け入れていた。
まさか再び会えるとは・・・ああ・・・嬉しい・・・
俺のいつものルーティーンは決まっている。
アンジェリの社員寮で起きると、トイレの脱衣所で顔を洗う。
毎日思うが、ここの鏡は透明度が高い。
王城にある鏡と遜色ないぞ。
最近は家具やらなにやらが随分と充実し始めている。
魔道具なんか最たる物だな、どうなってやがるんだか・・・
文明が着々と進化している。
これも結局の所『アンジェリ』の影響なんだろうな。
魔道具屋は大繁盛、鍛冶屋や道具屋、薬屋なんかも大賑わいだ。
この国に『アンジェリ』ができてからというもの、大きくこの国は舵を切ったのがよく分かるぞ。
そしてその中心には美容院『アンジェリ』がある。
ジョニーは凄げえなあ・・・
俺はリックと違って、髪形を整える必要はねえ。
そりゃあ坊主だからな。
寝ぐせなんてつかねえよ。
歯磨きを終えると俺は『アンジェリ』に向かう。
これが俺の当たり前だ。
『アンジェリ』の庭先はもう今となっては、俺の作品と呼んでもいいだろう。
最初はジョニーと造ったが、その後はあいつはノータッチだからな。
全面的に任せて貰っている。
『アンジェリ』の庭先に立つと、俺は気配を感じた。
ん?こんな時間に誰だ?
ジョニーが来るにはまだ早えだろうが。
そして感じる視線。
眼をやるとあり得ない存在がそこには居た・・・
身体が固まってしまった。
・・・嘘だろ?・・・あり得ねえぞ。
俺は身体の震えを抑える事が出来なかった。
俺がノリで造った鳥小屋に鳳がいた。
それにこの姿は・・・まるで・・・伝説の・・・聖獣・・・
余りの驚きに俺は鳳に話し掛けていた。
返事などある筈も無いのに・・・
「まさか・・・フェアリーバード・・・様?・・・ですか?・・・」
俺を一睨みする鳳、その瞳には悠久の時を感じさせる優雅さと、見る者を魅了する威喝感があった。
そしてその瞳の奥には雄大な優しさが見てとれた。
なんて眼光なんだ・・・視線が離せない・・・いや逸らせない・・・
すると脳裏に声が響いた。
(フェアリーバード・・・そう呼ばれている様であるな・・・)
!!!
なんだこれは!!!
俺の脳に直接届く声・・・本物なのか?・・・嘘だろ?・・・なんでこんな所に・・・急に・・・どうして?・・・
訳も分からず跪いてしまった。
本能的にそうしなければならないと感じたからだ。
俺は視線を下に向けた、すると足音がした。
ん?ジョニーか?早くないか?
そしてこんな声が聞こえた。
「ララ!!!ララだよな!!!」
ジョニー、お前何言ってやがるんだ?
フェアリーバード様だぞ!
いい加減にしろよ!
でも確か・・・ララって・・・ジョニーの思い入れのある名前・・・じゃなかったか?・・・
大号泣している。
止めどなく流れる涙を留める事が出来ていなかった。
宥めようとするマリアンヌさんとクリスタルちゃんを、俺は首を振って制止した。
これはいったいどういうことか・・・
シルビアちゃんはこれまでとは違い、遂に報酬を得るカットを行ったのだ。
要はこれまでとは違い、モニターでは無く、カット料金を頂いてヘアーカットを行ったということだ。
美容師免許を取得したシルビアちゃんは、予約表に入っているお客さんに施術を行う事になったのだった。
始めてのカットは、子供のカットだった。
五歳児の男の子、常連のお客さんのお子さんだ。
カット台の椅子に、子供用に椅子を重ねて、そこに子供が座っている。
実は子供のカットはそれなりに厄介だ。
さて、どうなることやら。
これは見ものだな。
お手並み拝見・・・
どういう事かと言うと、子供は髪を切られる事を嫌がる子がいて、場合によっては暴れたり、泣きじゃくる子もいるのだ。
子供にとっては髪を切る事は非日常であることなのだ。
子供は独特の感性をしている。
此処をどう捉えるかによって、接し方は変わる。
それなりの接客技術が必要なんだよね。
この接し方をシルビアちゃんはその研鑽を重ねた接客の感性によって、上手く熟していた。
カットに入る前に、子供と会話を行い、関係性を構築していた。
流石と言わざるを得ない。
上手いな・・・しかし・・・
その一時間後には泣きじゃくるシルビアちゃんがいた。
始めてのお客さんのカットで緊張したのか、はたまた手元が上手く定まらなかったのか、二十分以内に終えるカットが、四十五分かかってしまったのだった。
これは時間だけの問題では無かった。
カットも思った通りのカットが一切出来ておらず、それを何とか補おうと、更にしてはいけない施術を行っていた。
結果として、俺の仕上げがほとんどのカットになってしまう事態になった。
もっと言うと俺の仕上げがある段階で間違っている。
プロの美容師であるならば、先生の仕上げは必要ないのだ。
これよりも前から俺は先生と呼ばれていた、今更ながらではあるのだが・・・
髪結い組合に倣ってか、そう呼ばれるようになっていたよ。
ほんと今更だよ・・・
この燦々たる結果にシルビアちゃんは大号泣していた。
それを俺は何もすることなく、他っておいた。
ここは何もしてはいけない場面だ。
自分の努力で覆していくしかないのだから。
それを俺はよく知っている。
それにしても、ここで泣けることが重要であったりもする。
それだけ真剣な証拠だし、此処での悔しい想いが彼女を成長させることになるのだから。
始めに躓いて正解だな。
ある程度熟してきてからの失敗は堪えるからな。
俺の場合はそっちだったからね。
どうして上手くいかなかったのかの原因は未だに分からないし。
困ったものだよ、多分視力だと思うのだが、どうだろうか?
俺の視力は左右差がある、その為角度によっては見え方が違うのだ。
眼鏡を掛けようかとも考えたのだが、視力そのものは裸眼でも運転免許を更新できるぐらいだから、止めておいたよ。
因みに右は1.5、左は0.7だ。
困ったものだよ・・・
俺の事はいいとして、シルビアちゃんは試練の時だな。
頑張れ!シルビア!
ここは踏ん張り処だぞ。
君なら出来る!
その翌日。
朝起きた時に俺は感じていた、今日何かが起こると。
予感めいたものを感じると共に、期待の想いで心が躍り出しそうだった。
ワクワクするとはこういう事を言うのだろう。
なんだろうこの高揚感は・・・
いつもよりも少し早めに準備をし、お店の裏口を潜る。
そして俺は異世界へと転移した。
まだ早い時間、季節は春。
陽光が顔を出す頃、少し肌寒さがあり、上着の首元を束ねて暖を取る。
まだ早い時間にも関わらず、ライゼルは庭先にいた。
見慣れたいつもの光景だと思ったのだが・・・
様子が違った・・・
いつもであれば、せっせと庭先を弄っては、微笑ましくしているライゼルは、あろうことか、跪いていたのだ。
ん?何やってんだ、あいつ?
興味をそそられて庭先に行くと、俺はあり得ない光景を目にする事になった。
それは随分前に設置した、大きめの鳥小屋に鳳がいたのだ。
余りの光景に俺は一瞬固まってしまった。
ライゼルはこの鳳に対して跪いていたのだ。
鳳は顔だけを出して、ライゼルを見下げている。
その視線はとても愛情に満ちていた。
その眼を見て俺はある存在である事を確信した。
そして俺は一気に興奮を抑えられない程の感情の渦に巻きこまれていた。
そう、俺は一瞬にしてその存在を魂で感じたのだ。
ララ!!!
間違いない・・・ララだ!!!
姿形は全く違う。
なにより俺の知るララは犬なのだ。
でもこの鳳は紛れも無くララだ!そう感じて疑わない。
直感などという不確かな物では無い、実感という確実な物として感じた。
不意に頬に熱い物を感じた。
心が打ち震えた、俺は涙を流していたのだ。
でもそんなことはどうでもいい。
ゆっくりと、確実に俺はララに向かって歩を進めた。
自然と身体が動いていた。
ララが俺を見ると、笑った様な気がした。
見慣れている様な・・・見慣れていない様な笑顔・・・
でも・・・確実に・・・こいつは・・・
ああ・・・なんで・・・ララがいるんだ?
どうして・・・
俺の脳裏に声が響いた。
(ジョ兄ーーー!!!会いたかったよーーーー!!!!)
うおっ!何だ!この感覚!
直接頭に声が響くぞ!
でも・・・これがララの声か・・・初めて聴いたぞ。
少々甲高いが可愛い声だった。
鳳がその大きな身体を小屋から出して、一目散に俺に向かって来た。
翼を広げて舞い、七色に輝る尻尾が優雅に揺れていた。
おいおいおい!それなりに大きいぞ!
鳳は俺の眼の前を潜り抜け、上空でホバリングした。
なんて雄大な鳳なんだ・・・でも・・・可愛いぞ!
ララ!!!可愛いぞ!!!
そして鳳は俺の肩に留まった。
充分な重みを感じる。
これは幸せの重みだ。
「ララ!ララだよな!」
俺は興奮していた。
相棒のララが、こうして近くにいるのだから。
これは奇跡だ!
そうに違いない!
(そうだよ!僕だよ!!!)
「ああ・・・ララ・・・会いたかった・・・」
(うん!僕も!!!)
押しあがってくる涙を堪える事は出来なかった。
だって・・・一番会いたかったのだから・・・俺はこいつに・・・
ララも涙を流していた。
ララは頬を俺の頬にスリスリしている。
ああ・・・嬉しい・・・最高だ!
ララに再会出来るなんて・・・
・・・?・・・それにしてもどうして?
何かと疑問だらけだぞ。
ちょっと素面になってしまったぞ。
「ララ・・・どうなってんだ?」
(ウフフ・・・後で説明するね)
「ああ・・・」
ララは変わらずに頬を押し付けてきた。
俺もそれを甘んじて受け入れていた。
まさか再び会えるとは・・・ああ・・・嬉しい・・・
俺のいつものルーティーンは決まっている。
アンジェリの社員寮で起きると、トイレの脱衣所で顔を洗う。
毎日思うが、ここの鏡は透明度が高い。
王城にある鏡と遜色ないぞ。
最近は家具やらなにやらが随分と充実し始めている。
魔道具なんか最たる物だな、どうなってやがるんだか・・・
文明が着々と進化している。
これも結局の所『アンジェリ』の影響なんだろうな。
魔道具屋は大繁盛、鍛冶屋や道具屋、薬屋なんかも大賑わいだ。
この国に『アンジェリ』ができてからというもの、大きくこの国は舵を切ったのがよく分かるぞ。
そしてその中心には美容院『アンジェリ』がある。
ジョニーは凄げえなあ・・・
俺はリックと違って、髪形を整える必要はねえ。
そりゃあ坊主だからな。
寝ぐせなんてつかねえよ。
歯磨きを終えると俺は『アンジェリ』に向かう。
これが俺の当たり前だ。
『アンジェリ』の庭先はもう今となっては、俺の作品と呼んでもいいだろう。
最初はジョニーと造ったが、その後はあいつはノータッチだからな。
全面的に任せて貰っている。
『アンジェリ』の庭先に立つと、俺は気配を感じた。
ん?こんな時間に誰だ?
ジョニーが来るにはまだ早えだろうが。
そして感じる視線。
眼をやるとあり得ない存在がそこには居た・・・
身体が固まってしまった。
・・・嘘だろ?・・・あり得ねえぞ。
俺は身体の震えを抑える事が出来なかった。
俺がノリで造った鳥小屋に鳳がいた。
それにこの姿は・・・まるで・・・伝説の・・・聖獣・・・
余りの驚きに俺は鳳に話し掛けていた。
返事などある筈も無いのに・・・
「まさか・・・フェアリーバード・・・様?・・・ですか?・・・」
俺を一睨みする鳳、その瞳には悠久の時を感じさせる優雅さと、見る者を魅了する威喝感があった。
そしてその瞳の奥には雄大な優しさが見てとれた。
なんて眼光なんだ・・・視線が離せない・・・いや逸らせない・・・
すると脳裏に声が響いた。
(フェアリーバード・・・そう呼ばれている様であるな・・・)
!!!
なんだこれは!!!
俺の脳に直接届く声・・・本物なのか?・・・嘘だろ?・・・なんでこんな所に・・・急に・・・どうして?・・・
訳も分からず跪いてしまった。
本能的にそうしなければならないと感じたからだ。
俺は視線を下に向けた、すると足音がした。
ん?ジョニーか?早くないか?
そしてこんな声が聞こえた。
「ララ!!!ララだよな!!!」
ジョニー、お前何言ってやがるんだ?
フェアリーバード様だぞ!
いい加減にしろよ!
でも確か・・・ララって・・・ジョニーの思い入れのある名前・・・じゃなかったか?・・・

