魔道具開発に先立って、実は前もって動いているプランがあった。
要は俺は先回りをしていたという話だ。
それはアイレクスさん始め、数名の髪結いさんにシャンプーを習って貰っていることだった。
営業時間終了後の美容院『アンジェリ』は、一部の髪結いさん達の練習の場となっていた。
勿論シャンプーに限定しているけどね。
他はまだまだ教えませんよ。
特にカットやパーマはね。
そこまで俺もお人好しではありませんよ。
でも盗めるものなら盗んでみなさいな。
その時は褒めて進ぜよう、なんてね。
この髪結いさん達に指導しているのは、マリアンヌさんとクリスタルちゃんだ。
俺とシルビアちゃんは一線を引いている。
指導者を彼女達にしたのは、元々知り合いだから話が早いだろうという簡易な発想でしかない。
それにアイレクスさんは時々しれっとシャンプーの練習をしていたしね。
俺はちゃんと見てますよ。
最初は俺もシャンプーの練習を断っていたが、競合を造ろう作戦を思いついてからは、それを良しと考えを変えた。
現金な奴だと笑ってくれよ。
今日もせっせと数名の髪結いさんがシャンプーの練習に励んでいる。
聞く処によると、全員が髪結い組合の幹部らしい。
性が出ることですね。
そうやって上の者達から学んで下さいな。
そしてちゃんと組合の方々に教えなさいよ。
これは義務ですからね。
数週間後。
魔道具開発は人知れず進行していた。
メイフェザーとヤンレングスさん、そしてゴンガレスさんは連日大忙しだ。
喧々諤々と意見を戦わせ、試行錯誤を繰り返しながら魔道具を開発している。
全員が喜々としていた。
ヤンレングスさんの鍛冶場は、正に鉄火場と成っていた。
こう言ってはなんだが、メイフェザーはかなりの凄腕だ。
こいつが加わってからというもの、その開発の進行速度は、これまでが何だったんだと言いたくなる程、加速度的に早くなっていた。
これが魔道具師かと唸ってしまったよ。
メイフェザーは鍛冶や陶磁器にも精通しており、もしかしたらヤンレングスさんとゴンガレスさんを凌ぐかもしれない腕前だった。
魔道具の構造の的確な指摘と、改善策の提案。
これが本当の職人かと惚れ惚れするよ。
只のマッチョではないらしい。
関西弁には違和感を拭えないが・・・
完成した美容機材の、内容の一部を紹介すると。
シャンプー台とヘアーアイロンに使われている魔法は、ウォームという温める効果のある魔法だ。
そしてドライヤーには、このウォームとコールド、そしてウィンドという風の魔法が使用されているとのこと。
こう言ってはなんだが、簡単な仕組みだ。
異世界あるあるだと俺には感じた。
大体こんな感じだよね。
でも本当に温かいお湯が出た時には感動したよ。
温かい風も吹いていたしね。
流石は異世界と感心してしまった。
今更だが、実際にこの世界では魔法が使用されている。
全く、摩訶不思議な世界である。
いい加減俺も慣れないといけないな。
魔法が使えない所為か、未だに違和感を拭えない。
開発された魔道具は美容機材だけではない。
他にもエアコン擬きが造られていた。
なんでこれを造ったんだか・・・
おそらく美容院『アンジェリ』のエアコンに影響を受けたんだろうね。
でもこれはスポットクーラーだな。
いきなりギアを上げ過ぎだろう。
気持ちは分かるが段階を踏みなさいよ。
俺は扇風機を提案したのだが、その上を超えてきやがった。
造ろうと思った動機は、メイフェザーはお店のエアコンに嫉妬心を覚えたらしい。
案の定である。
しかしこのスポットクーラーだが、恐ろしく燃費が悪い。
魔鉱石が一週間もすると使えなくなってしまう。
要は魔力切れだね。
その為、今のメイフェザーは、この燃費の悪さを改善しようと試行錯誤を繰り返している。
だから扇風機の羽を使えと言っているのに・・・
その方が効率的に風を送る事が出来るだろうよ。
メイフェザーも結構頑固者だ。
俺の言う事を聞いちゃいない。
まあ好きにやってくれ。
頑固は職人の専売特許だからね。
因みにこの魔鉱石だが、前にも触れたが、結構そこらへんで転がっていたりする。
その為、割と簡単に手に入るのだが、魔道具開発を開始した今と成っては、その数が少々心許ない。
それもあり、俺は教会に仕事を斡旋する事にした。
なんの事かと思うだろうが、まあ聞いてくれよ。
ある時温泉街ララに教会が出来上がっていた。
後々聞いたのだが、伯爵が建てたらしい。
どうしても店を離れる事が少ない俺には、こういった街の事情を案外知らなかったりもする。
お客さんから街の事を聞いたりもするけど、こちらから情報を取りに行く訳ではないからね。
残念ながらこの温泉街ララにも孤児が居る。
何かしらの理由で親を失っている子達は居るのだ。
そんな子達を伯爵は放置できない質である。
教会を建設して保護して当然だろう。
あの人ならそうなるに決まっている。
俺はあまり孤児と接したことがないのだが、この孤児達を保護する目的と、宗教を流布する為に伯爵は教会を建てたとのこと。
宗教についてはよく分からない。
それに知りたくもないよ、だって家には・・・まあ察してくれよ。
それを知ってから俺は、孤児の数名を温泉街で雇っている。
小学校高学年ぐらいの子であれば、充分戦力になるからね。
それに、もう少し人を雇って欲しいとクロムウェルさんから言われていたからね。
たぶんこれを知っての申し入れだと思う。
クロムウェルさんらしいねえ。
あの人はすぐに先回りするしね。
何気にクロムウェルさんが子供好きなのを俺は知っている。
それに寄付もそれなりにしているのだとか。
俺も寄付は定期的に行っている。
温泉宿から得た利益を、俺の懐に全部納めるのも気が引けるしね。
それぐらいはさせて貰いますよ。
孤児の教育や指導は全てウロムウェルさんに丸投げしているのだが、温泉宿では地味に洗濯と掃除が大変らしい。
他にも雑務が結構あるのだとか。
温泉宿の経営も御存じの通り丸投げの為、俺はへえー、そうなんだという感想である。
これは丸投げの後遺症だね。
そして小さな孤児には、温泉宿の業務が出来ない小さな子達もいる為、魔鉱石の収集を斡旋したのである。
当初シスターは何のことかとさっぱり理解出来ていなかった。
まあ、魔鉱石の存在自体を知らない人が大半らしいからね。
そうなれば反応はこうなるのだろう。
小さな孤児達は、時間の有る時にはシスターが、その他の時間は大きな孤児が引率して魔鉱石探しを行っていた。
こうして魔鉱石の数も集まってきていた。
因みに魔鉱石の買い取りは魔道具屋で行っている。
金額はメイフェザーに一任した。
俺にはさっぱり魔鉱石の相場なんて分からないからね。
シスターは魔鉱石の価値を充分に理解できたからか、魔鉱石の事は誰にも話さないと公言していた。
国が魔道具の仕組みを公開したら、全国民に知られてしまうと教えたら、膝から崩れ落ちていたけどね。
それなりに守銭奴だな、シスター・・・
いや、教会の運営が大変なのかい?
もっと仕事を斡旋しましょうか?
なんなら寄付ももっとしますよ?
美容機材の魔道具の完成を機に、シャンプー台が髪結い組合会館の練習室に三台設置された。
ヘアーアイロンとヘアードライヤーも三台づつ。
遂に美容機材の魔道具が陽の目を見る事になったのだ。
これに髪結いさん達は歓喜に沸いた。
これで自分達もシャンプーの練習を気兼ねなく行えると喜んでいた。
中にはこれで美容師に成れると言っている者もいた。
いやいやいや、カットとシャンプーが出来ただけでは美容師を名乗らせませんよ。
美容師を舐めて貰っては困るな。
他にも出来ないといけないことが沢山ありますよってね。
いい加減学んでくれよな。
でもこの世界では美容師免許なんて存在しないから、言ったもん勝ちみたいなところがあるしね。
これはこれで考えものだな。
ここは手を打つしかないな・・・
となると・・・ふう、腹を括ろうか・・・
こういった勝手を許さない事も含めて、競合を造ろう作戦を次の段階に進めるに当たり、俺は髪結い組合の顧問に就任した。
アイレクスさんからは会長になってくれと例の如く懇願されたが、会長ともなると何かと自由が利かなくなる為、断固拒否した。
そして俺はこれならばという条件付きで顧問になる事を提案した。
顧問とは言っても俺の自由気儘に勝手が利く条件にしている。
まず時間の制限は受けない。
技術の指導は気の向いた時に。
そして発言はいつ何時でも許される。
本当に勝手極まりない条件である。
よくこんなふざけた条件を飲んだものだと、俺は髪結いさん達の正気を疑ったが、それでもいいからと懇願されてしまったよ。
幹部会で満場一致で可決されたらしい。
どうしてなんだろう?
俺にはさっぱり分からんよ。
こうして髪結いさんの達のシャンプーの特訓が開始された。
先ずは先行して練習を開始している幹部の方達のシャンプーの特訓と共に、有志でモニターさんが集められた。
そしてこのモニター募集に人々が殺到した。
連日髪結い組合会館は人々で賑わっている。
そしてちょっとした騒ぎになっていた。
我先にシャンプーを受けたいと、男女年齢関係無く押しかけてきたのだ。
施術を待っている人達は、まだかまだかとそわそわしている。
これはちょっとした暴動に発展しかねないぞ。
周りに眼が行かず、シャンプーに集中しているアイレクスさんを捕まえて、どうにかする様に伝えると共に、暇そうにしている髪結いさん達を動員して俺は騒動に当たった。
なんで俺がこんな面倒まで見ないといけないんだ?
顧問の仕事じゃねえだろ、やっぱり顧問なんて止めようかな?
要は俺は先回りをしていたという話だ。
それはアイレクスさん始め、数名の髪結いさんにシャンプーを習って貰っていることだった。
営業時間終了後の美容院『アンジェリ』は、一部の髪結いさん達の練習の場となっていた。
勿論シャンプーに限定しているけどね。
他はまだまだ教えませんよ。
特にカットやパーマはね。
そこまで俺もお人好しではありませんよ。
でも盗めるものなら盗んでみなさいな。
その時は褒めて進ぜよう、なんてね。
この髪結いさん達に指導しているのは、マリアンヌさんとクリスタルちゃんだ。
俺とシルビアちゃんは一線を引いている。
指導者を彼女達にしたのは、元々知り合いだから話が早いだろうという簡易な発想でしかない。
それにアイレクスさんは時々しれっとシャンプーの練習をしていたしね。
俺はちゃんと見てますよ。
最初は俺もシャンプーの練習を断っていたが、競合を造ろう作戦を思いついてからは、それを良しと考えを変えた。
現金な奴だと笑ってくれよ。
今日もせっせと数名の髪結いさんがシャンプーの練習に励んでいる。
聞く処によると、全員が髪結い組合の幹部らしい。
性が出ることですね。
そうやって上の者達から学んで下さいな。
そしてちゃんと組合の方々に教えなさいよ。
これは義務ですからね。
数週間後。
魔道具開発は人知れず進行していた。
メイフェザーとヤンレングスさん、そしてゴンガレスさんは連日大忙しだ。
喧々諤々と意見を戦わせ、試行錯誤を繰り返しながら魔道具を開発している。
全員が喜々としていた。
ヤンレングスさんの鍛冶場は、正に鉄火場と成っていた。
こう言ってはなんだが、メイフェザーはかなりの凄腕だ。
こいつが加わってからというもの、その開発の進行速度は、これまでが何だったんだと言いたくなる程、加速度的に早くなっていた。
これが魔道具師かと唸ってしまったよ。
メイフェザーは鍛冶や陶磁器にも精通しており、もしかしたらヤンレングスさんとゴンガレスさんを凌ぐかもしれない腕前だった。
魔道具の構造の的確な指摘と、改善策の提案。
これが本当の職人かと惚れ惚れするよ。
只のマッチョではないらしい。
関西弁には違和感を拭えないが・・・
完成した美容機材の、内容の一部を紹介すると。
シャンプー台とヘアーアイロンに使われている魔法は、ウォームという温める効果のある魔法だ。
そしてドライヤーには、このウォームとコールド、そしてウィンドという風の魔法が使用されているとのこと。
こう言ってはなんだが、簡単な仕組みだ。
異世界あるあるだと俺には感じた。
大体こんな感じだよね。
でも本当に温かいお湯が出た時には感動したよ。
温かい風も吹いていたしね。
流石は異世界と感心してしまった。
今更だが、実際にこの世界では魔法が使用されている。
全く、摩訶不思議な世界である。
いい加減俺も慣れないといけないな。
魔法が使えない所為か、未だに違和感を拭えない。
開発された魔道具は美容機材だけではない。
他にもエアコン擬きが造られていた。
なんでこれを造ったんだか・・・
おそらく美容院『アンジェリ』のエアコンに影響を受けたんだろうね。
でもこれはスポットクーラーだな。
いきなりギアを上げ過ぎだろう。
気持ちは分かるが段階を踏みなさいよ。
俺は扇風機を提案したのだが、その上を超えてきやがった。
造ろうと思った動機は、メイフェザーはお店のエアコンに嫉妬心を覚えたらしい。
案の定である。
しかしこのスポットクーラーだが、恐ろしく燃費が悪い。
魔鉱石が一週間もすると使えなくなってしまう。
要は魔力切れだね。
その為、今のメイフェザーは、この燃費の悪さを改善しようと試行錯誤を繰り返している。
だから扇風機の羽を使えと言っているのに・・・
その方が効率的に風を送る事が出来るだろうよ。
メイフェザーも結構頑固者だ。
俺の言う事を聞いちゃいない。
まあ好きにやってくれ。
頑固は職人の専売特許だからね。
因みにこの魔鉱石だが、前にも触れたが、結構そこらへんで転がっていたりする。
その為、割と簡単に手に入るのだが、魔道具開発を開始した今と成っては、その数が少々心許ない。
それもあり、俺は教会に仕事を斡旋する事にした。
なんの事かと思うだろうが、まあ聞いてくれよ。
ある時温泉街ララに教会が出来上がっていた。
後々聞いたのだが、伯爵が建てたらしい。
どうしても店を離れる事が少ない俺には、こういった街の事情を案外知らなかったりもする。
お客さんから街の事を聞いたりもするけど、こちらから情報を取りに行く訳ではないからね。
残念ながらこの温泉街ララにも孤児が居る。
何かしらの理由で親を失っている子達は居るのだ。
そんな子達を伯爵は放置できない質である。
教会を建設して保護して当然だろう。
あの人ならそうなるに決まっている。
俺はあまり孤児と接したことがないのだが、この孤児達を保護する目的と、宗教を流布する為に伯爵は教会を建てたとのこと。
宗教についてはよく分からない。
それに知りたくもないよ、だって家には・・・まあ察してくれよ。
それを知ってから俺は、孤児の数名を温泉街で雇っている。
小学校高学年ぐらいの子であれば、充分戦力になるからね。
それに、もう少し人を雇って欲しいとクロムウェルさんから言われていたからね。
たぶんこれを知っての申し入れだと思う。
クロムウェルさんらしいねえ。
あの人はすぐに先回りするしね。
何気にクロムウェルさんが子供好きなのを俺は知っている。
それに寄付もそれなりにしているのだとか。
俺も寄付は定期的に行っている。
温泉宿から得た利益を、俺の懐に全部納めるのも気が引けるしね。
それぐらいはさせて貰いますよ。
孤児の教育や指導は全てウロムウェルさんに丸投げしているのだが、温泉宿では地味に洗濯と掃除が大変らしい。
他にも雑務が結構あるのだとか。
温泉宿の経営も御存じの通り丸投げの為、俺はへえー、そうなんだという感想である。
これは丸投げの後遺症だね。
そして小さな孤児には、温泉宿の業務が出来ない小さな子達もいる為、魔鉱石の収集を斡旋したのである。
当初シスターは何のことかとさっぱり理解出来ていなかった。
まあ、魔鉱石の存在自体を知らない人が大半らしいからね。
そうなれば反応はこうなるのだろう。
小さな孤児達は、時間の有る時にはシスターが、その他の時間は大きな孤児が引率して魔鉱石探しを行っていた。
こうして魔鉱石の数も集まってきていた。
因みに魔鉱石の買い取りは魔道具屋で行っている。
金額はメイフェザーに一任した。
俺にはさっぱり魔鉱石の相場なんて分からないからね。
シスターは魔鉱石の価値を充分に理解できたからか、魔鉱石の事は誰にも話さないと公言していた。
国が魔道具の仕組みを公開したら、全国民に知られてしまうと教えたら、膝から崩れ落ちていたけどね。
それなりに守銭奴だな、シスター・・・
いや、教会の運営が大変なのかい?
もっと仕事を斡旋しましょうか?
なんなら寄付ももっとしますよ?
美容機材の魔道具の完成を機に、シャンプー台が髪結い組合会館の練習室に三台設置された。
ヘアーアイロンとヘアードライヤーも三台づつ。
遂に美容機材の魔道具が陽の目を見る事になったのだ。
これに髪結いさん達は歓喜に沸いた。
これで自分達もシャンプーの練習を気兼ねなく行えると喜んでいた。
中にはこれで美容師に成れると言っている者もいた。
いやいやいや、カットとシャンプーが出来ただけでは美容師を名乗らせませんよ。
美容師を舐めて貰っては困るな。
他にも出来ないといけないことが沢山ありますよってね。
いい加減学んでくれよな。
でもこの世界では美容師免許なんて存在しないから、言ったもん勝ちみたいなところがあるしね。
これはこれで考えものだな。
ここは手を打つしかないな・・・
となると・・・ふう、腹を括ろうか・・・
こういった勝手を許さない事も含めて、競合を造ろう作戦を次の段階に進めるに当たり、俺は髪結い組合の顧問に就任した。
アイレクスさんからは会長になってくれと例の如く懇願されたが、会長ともなると何かと自由が利かなくなる為、断固拒否した。
そして俺はこれならばという条件付きで顧問になる事を提案した。
顧問とは言っても俺の自由気儘に勝手が利く条件にしている。
まず時間の制限は受けない。
技術の指導は気の向いた時に。
そして発言はいつ何時でも許される。
本当に勝手極まりない条件である。
よくこんなふざけた条件を飲んだものだと、俺は髪結いさん達の正気を疑ったが、それでもいいからと懇願されてしまったよ。
幹部会で満場一致で可決されたらしい。
どうしてなんだろう?
俺にはさっぱり分からんよ。
こうして髪結いさんの達のシャンプーの特訓が開始された。
先ずは先行して練習を開始している幹部の方達のシャンプーの特訓と共に、有志でモニターさんが集められた。
そしてこのモニター募集に人々が殺到した。
連日髪結い組合会館は人々で賑わっている。
そしてちょっとした騒ぎになっていた。
我先にシャンプーを受けたいと、男女年齢関係無く押しかけてきたのだ。
施術を待っている人達は、まだかまだかとそわそわしている。
これはちょっとした暴動に発展しかねないぞ。
周りに眼が行かず、シャンプーに集中しているアイレクスさんを捕まえて、どうにかする様に伝えると共に、暇そうにしている髪結いさん達を動員して俺は騒動に当たった。
なんで俺がこんな面倒まで見ないといけないんだ?
顧問の仕事じゃねえだろ、やっぱり顧問なんて止めようかな?

