最近では種類の違う職人達が『アンジェリ』に集まってきていた。
その面子は鍛冶屋、鋳掛屋、硝子屋、そして薬師。
鍛冶屋のヤレングスさん、鋳掛屋のゴンガレスさん、硝子屋のチョモランマさん、薬師のユリメラさんだ。
四人とも職種は違えど一端の職人だ。
そして全員が腕に覚えがある人達だった。
連日営業時間終了後の『アンジェリ』にやって来ては、喧々諤々と意見を戦わせ、時には試作品を持ち寄り、思考錯誤を繰り返している。
全員生ビールを片手に嬉しそうに職人談義をしていた。
特に誰から声を掛けた訳でも無く、自然と集まってきていた。
俺はこの四人プラス俺を『職人アンジェリ』と脳内ネームで呼んでいる。
俺にとっても気心知れた仲間内となっていた。
連日職人談義に花を咲かせている。
この四人の集まる理由ははっきりとしている。
それはこの世界の物で、美容院を造りたいと俺が望んでいるからだ。
そう勝手に捉えている。
間違っていたらごめんさない。
その美容院は俺の経営する美容院では無い。
俺が経営しては意味が無い。
あくまでこの世界の人が経営してこそ意味がある美容院なのだから。
簡単な話、今の俺は競合を造りたいのだ。
それは俺やシルビアちゃん達の為だけではない。
実にその意味合いは奥深い。
沢山の意味を含んでいる。
一見競合を造るとは、自分で自分の首を絞める行為に思えるかもしれない。
自分達のお客を手放す行為に捉えられるからだ。
でもそんな表面上の安易な話では無く、とても深い意味あいがあるのだ。
ここに俺の『競合を造ろう作戦』が人知れず実行されていた。
まず現状を説明すると、美容に関しては、美容院『アンジェリ』に一所集中し過ぎている。
これは経済的に見ても不健康な状態である。
富の一極化は大きな貧富の差を生む。
競争を宿命とする商売において、勝ち組にとっては、一見嬉しい事に思えるだろう。
でもその本質は大いに違う。
こと美容に関していうと、髪結い屋さんのお客さんを美容院『アンジェリ』が独占している状態にあるのだ。
中にはこれまでの人間関係を考慮して、馴染みのお客さん相手にお店を経営出来ている髪結い屋さんもある。
これまで上手に人間関係を築いて来れたのだと褒めてあげたくなる。
これはなかなか出来る事ではない。
それに美容院『アンジェリ』の予約状況から、カットの予約を断ってしまったお客さんは、髪結い屋さんに流れているのだろうと予測できる。
それは美容院『アンジェリ』の存在が市井に広まって以降、その傾向は顕著に表れている。
そんな髪結い屋さんをどうにかして救ってあげたいと思う程、俺はお人好しでは無い。
そういう事にはあまり視線を向けてはいない。
他人の商売を何とかしてあげよう等とは俺は一切思ってはいない。
そんな余裕なんてありませんよ。
俺は聖人君子にはなれませんての。
そんな高尚な考えなんてありませんよ。
何が言いたいかというと、今後の『アンジェリ』の発展には、競合の存在が必要不可欠であるという事だからだ。
どういう事かというと。
独占は孤独を生む。
そして孤独は満足を生み。
満足は停滞を生じさせる。
先人のありがたいお言葉では無く、俺が実感している言葉だ。
詰まる処、美容師は職人である。
職人は日々研鑽を重ね、切磋琢磨し、その腕を磨き続けることに意味があるし、それを宿命づけられた職業であるのは間違いない。
至高の施術のその先を極める事を目指し続けているのだ。
それが職人であり美容師の世界だ。
俺はそう捉えている。
それはカット技術に関わらず、接客やその他の施術もそうだ。
完成形はないのかもしれないが、今よりもその先を求めてしまうのだ。
もしかしたら死ぬまでこれは続くのかもしれないが・・・
そんな話はいいとして、今の独占状態が続くと『アンジェリ』はどこかで停滞してしまうのは疑いようがない。
それはお店としても、美容師としてもだ。
俺はまだいい。
日本での生活があり、日本での関係性がある為、美容師として精進を怠る事は無いし、その手を緩めるつもりもない。
実際暇さえあればユーチューブでカットの動画を観たり、カラーやパーマの動画を観て研究をしているのだ。
それにどんな新たな試薬があるかと、美容商材屋の森君との談義は尽きる事がない。
毎回森君には付き合わせてしまって申し訳ないとは思っている。
でもここは欠かすことは出来ない。
一転、俺の弟子達にとってはそうでは無い。
そういった環境にないのだから。
俺とはどうしても一線を介してしまうのだ。
これを埋める策を俺は持ち合わせていないのが現状だ。
もしかしたら、一切合切をぶちまけたら、状況が変わるのかもしれないが、今の俺にはそれを出来るだけの勇気はない。
俺のお店は異世界と繋がっていると言えるほどの、肝ったまは今は持ち合わせてはいないのだ。
それに彼女達はこの後もいつまでも、俺の背中を追い続けるのは良くない事だと思う。
俺の元で居続けることは余りにもったいない。
自分の美容師道を追求して欲しいと切に願うのだ。
それにどこかで独り立ちしてこそ美容師の本懐なのだ。
独立を果たしてこそ意味があると俺は思っている。
そして独自の技術や施術を確立させていく事が、美容師たる所以である。
そうする事が美容師としての遣り甲斐なのだから。
俺はそう考えている。
少々職人談義が過ぎるだろうか?
その状況において競合が無いというのは具合が悪い。
それに前にも少し述べたが、万が一このお店があるとき急に、この異世界に繋がらなくなった時の保険を掛けておきたい。
その想いがどうしても頭から抜けきらないのだ。
俺と『アンジェリ』が居なくなった世界でも、弟子達には美容師を続けて欲しい。
そう切に願うのだ。
俺がいないから出来ないでは意味がないのだ。
それに俺の弟子達は、あと一歩で美容師に成れると俺は思っている。
日々研鑽を重ね、努力をし続ける彼女達に、俺は師匠冥利に尽きると本気で想っている。
彼女達の頑張りを俺は心の底から認めているのだ。
そして彼女達はライバルが居るからこそ努力を怠らない。
ライバルが居るからこそ頑張れる。
そう言った状況が必要であると俺は考えている。
ライバルとはそういった物である事を俺はよく知っている。
ライバルの存在は大きな意味を有しているのだ。
その為の下地を造っておきたい。
そう願わなくしてはいられないのだ。
俺にとってのライバルは・・・今は言わないでおこうか・・・
あの野郎・・・今はどうしているのだろうか・・・
この想いを俺は『職人アンジェリ』には口にした事は一度も無い。
でも何かを感じ取ってくれているのか、この四人は熱心に俺に協力してくれている。
とても有難い話だ。
とは言っても、本人達にとっても新たなチャレンジであるし、その後の利益にも直結することである為、有る意味では商売人として当然の行いであったりもする。
要は彼らにとっても、ビジネスチャンスなのだ。
これを無下にするなんてあり得ない行為だ。
いち職人としても、腕試しを出来る格好の機会なのだから。
職人とはそんな者である。
そして前々からドM眼鏡こと、アイレクスさんからは、髪結い組合含めて、髪結いさんの育成方法に関して、俺は相談を受けていた。
要は髪結いさんでは無く、美容師に育てて欲しいという話だ。
彼女達にとっては生活が懸かっているだけでは無く、その後の未来に直結する事柄である。
決して他人事にはならない。
俺はこれを片手間で行っても良いとはどうしても思えなかった。
ここはちゃんと一線を引くべきであると。
生半可に手を染めるべきではないと捉えていた。
実はこれまでに両手では敵わない数の弟子入り希望者があった。
中にはハサミ持参で、技術を見てくれという熱心な人までいた。
本音を言えば、受け入れてあげたい。
全員俺の弟子として受け入れてあげたかった。
でも今はそのタイミングでは無いと本能的に感じるのだ。
その為、挺身低頭お断りをさせて貰っていた。
決してそちらに落ち度がある訳ではなく、こちらの都合なのだと説明はさせて貰っている。
本当に申し訳ないと。
『職人アンジェリ』は、今はシャンプー台と、シャンプーの完成を急いでいる段階である。
シャンプー台に関してはその開発経費として、髪結い組合からの資金が職人『アンジェリ』に提供されている。
それもなかなかの金額が・・・
実は髪結い組合は良くも悪くも資金はあるのだった。
どういうことかというと、フェリアッテが散々貯め込んだ裏資金は、手つかずの儘であったらしい。
これは大いに使うしかないでしょうよ。
であれば先行投資と、ここは資金を注ぎこむようにと俺はアイレクスさんを誘導した。
そして、髪結い組合の会員さん達には、援助金を生活できるぐらいは毎月支払う様にと、彼女には入れ知恵してある。
これまでの貢献を、ここで返しておきなさいと。
ちゃんと生活は守ってあげなさいと。
それぐらいの金額を有しているのだから・・・
じゃないと罰が当たるよってね。
どうにも彼女は俺の意見を鵜呑みにするし、髪結い組合の裏資金の額や、会員数など、秘匿すべき情報をあっさりと伝えてくれる。
逆にこちらが聴きたくないぐらいだよ。
隙あらば未だに、俺を髪結い組合の会長にしたがるのだ。
なんでだろうね?
でもそれを分かったからこそ、髪結いさん達を路頭に迷わすことにはならなかったのだけれども・・・
そもそも何で俺がは采配しているのだろうか?
まあいいか・・・
前にも述べたが、今はその時期ではない。
いつかはそういう日が来ても良いかもしれないが、それは今や数か月後の話では無い。
せめてこの世界で美容院『アンジェリ』以外の美容院が誕生し、俺以外の美容師が誕生してからにして欲しい。
そうなれば、俺も出来る事が変わってくる。
俺も社会貢献は出来ことならばしたいとは常々考えている。
でもこれって・・・社会貢献になるだろうか?・・・
甚だ疑問だ・・・
さて、そんな未来の夢のお話は脇において、今日はヤンレングスさんとゴンガレスさんの合作であるシャンプー台が持ち込まれている。
シャンプー台は陶磁器で出来ており、頑丈で重厚である。
排水パイプなどは鋳掛屋のゴンガレスさんのお手製であった。
問題は給水の引き込みとシャワーにある。
給水の引き込みはどうにかなったようだが、シャワーに関してはテストするしかない。
先ずはそのシャワーヘッドに繋がっている蛇腹のパイプだ。
この構造は理解できるが、それを再現するのはかなりハードルが高いと、ゴンガレスさんは頭を悩ませていた。
日本であれば、塩ビのホースで事足りる。
でもこの異世界では塩ビのホースなんて造る事は、限りなく遠い。
そして試作品が持ち込まれているという事は、何かしらの技術的な進展があったということだろう。
店内でテストをするには水浸しになってしまう為、バーの営業中の庭先の脇で、試作品を試すことになった。
職人『アンジェリ』の全員が手薬煉引いていた。
さて、どうなることやら・・・
庭先にある花壇の水やり用のホースを給水管に装着した。
バーの客が何が始まるのかと、遠目に眺めている。
「では、行きますよ」
「おうよ!」
「やってくれ!」
両手を眼の前に握って成功を懇願している二人。
こちらにも緊張感が伝わってくる。
「はい!」
俺は勢いよく蛇口を捻った。
シュー、という音を立てて、水が給水管から蛇腹へと、そしてシャワーヘッドへと流れていく。
そしてシャワーヘッドから水が勢いよく溢れだした。
「おお!」
「どうだ?」
「成功か?」
俺はシャワーヘッドを握り、動かしてみる。
すると、蛇腹の脇からポタポタと水が零れ落ちてきた。
「ああー、くそう!」
「あとちょっとかー!」
膝から崩れ落ちる二人。
でもこれまでの試作品の中では一番上手くいっている。
「これまでの中で一番上手くいってますよ!」
「そうだぞ、二人共、そう落ち込むで無いわ」
ユリメラさんもフォローしている。
「あとちょっとだな、どうしたものか・・・」
チョモランマさんが感想を溢す。
ヤンレングスさんが悔しがりながらも、気になる発言をした。
「なあ、ジョニー店長、もう後少しだと思うが、どうしても気になるから教えて欲しいんだがよう、ヘアゴムのゴムってどうやって造るんだ?あれが応用出来たらもっと簡単に解決できそうな気がするんだよな」
確かにそうだ、何も塩ビに拘る必要はない。
ゴムでも代用は可能だ。
なるほど・・・そんな発想もありだな。
「ええ・・・ゴムはゴムの木から抽出するんですよ」
「ゴムの木?なんだいそれは?植物かい?」
ユリメラさんが反応していた。
植物を知る薬師としては見逃せないのだろう。
反応を見るに、やはりこの世界の人達には、ゴムの知識はないに違いない。
でもゴムの木自体はあるかもしれない。
「ゴムの木は種類が多く、常緑や高木落葉低木など様々です、品種によって異なり、比較的温暖な気候の地域には、案外植わっているものなんですけどね」
「何だいそりゃ?もしかしたらその辺にそのゴムの木が植わってるかもしれねえってことか?」
ヤンレングスさんが期待の眼差しで俺を見つめる。
「そうです・・・確か・・・おい!ライゼル!植物図鑑を持って来てくれ!」
給仕しているライゼルは、給仕を終えると、任せろとバックルームに駆け込んでいった。
俺はライゼルから植物図鑑を受け取ると、ページを開いてゴムの木を探した。
「あった、例えばこのフィカス・エラスティカなんかは有名なゴムの木ですね」
図鑑を覗き込むと、
「ん?なんか見た事ある木だなあ、よし、こうなったら明日にでも森に入って調べてくるか」
「何だい、それなら私も一緒に行かせて貰うよ」
「お!ユリメラの婆さんが一緒なら心強い!」
「婆さんって呼ぶんじゃないよ!この小僧が!お姉さんとお呼び!」
ユリメラさんがいきり立っていた。
おー、怖!
でもこの行動力は見上げたものだな。
前向きでいいじゃないか。
「あ!だったら俺も一緒に行かせてくれ!」
ライゼルが割り込んできた。
こいつが付いていけば、獣が出ても大丈夫だろう。
「俺も行くぜ!」
ゴンガレスさんも同行するみたいだ。
「なんだ、なんだ?植物が急に人気になったのか?」
嬉しそうにライゼルは話していた。
「そうだ、植物が世界を変えるんだ」
「かあー!やっぱり植物は凄えな!」
「ほんとになあ」
ライゼルにしてみれば、自分が大好きな植物がなにかしらの役に立つことが、自慢げなんだろう。
でも実際のところ、この異世界だけに限った話では無く、日本でもこれの原料は植物なの?という物が実は大半だったりもする。
植物は偉大な生命だよ。
生命を支える生命の源である。
植物の底力は計り知れない。
実はこれはゴムだけに関わった話ではない。
石鹸にも言える事である。
石鹸の原料についてユリメラさんと一度話をした事がある。
ユリメラさんの造る石鹸は簡単に言うと木灰と植物オイル、炭酸水に花のフローラルエキスを混ぜ合わせて造った物だ。
薬師の彼女にとっては、子供の頃から造っている慣れ親しんだ製法らしい。
苛性ソーダになる木灰を水に溶かして、上澄みを取り除く。
そして植物オイルとフローラルエキスを混ぜて作るとのこと、詳細な用量等は教えてくれず、また作製方法もだいぶ割愛しているみたいだ。
そりゃあそうだろう、秘伝のレシピをそう安々と口にする訳にはいかないよね。
でもこれだけで充分に俺には伝わった。
彼女が腕のある薬師であると。
それに彼女の造る石鹸は質が高いと。
彼女との出会いはそれなりのインパクトがあったが、その話はまた今度でいいだろう。
「ライゼルや、お前さん一流の庭師を目指すのなら、もっと植物の何たるかを学ばんといかんなあ」
「ああ、ユリメラの婆さんには世話になるぜ」
「だから私を婆さん扱いするんじゃないよ!この小僧が!お姉さんとお呼び!」
「ハハハ!ごめんごめん!お姉さま」
「フン!始めからそう呼びなっての!金●蹴り上げるぞ!」
ユリメラさんがライゼルを睨みつけていた。
思いっきり蹴り上げても良いですよ。
俺のじゃなくてライゼルのだし。
なんなら代わりにやりましょうか?
翌日には、森での探索を行った四人はニンマリ笑顔で帰ってきた。
この笑顔を見る限り、どうやら手応えがあったようだ。
「ジョニー店長!当たりだ!」
「やったぜ!見つけたぞ!」
「こうも簡単にいくとはねえ」
どうやらゴムの木を引き当てた様子。
「あったみたいですね」
「ああ、しっかりとな」
「あれは間違いない、ちゃんと図鑑で参照したからな」
ライゼルは自慢げだ。
「じゃあ、ゴムの抽出方法を教えますね」
「おおよ!これは大きな一歩だぞ!」
「ああ、そうだな!」
「これは面白くなってきたねえ」
全員が嬉しそうにしていた。
その後、俺はゴムの抽出法を教えた。
抽出後の加工に関しては、俺は良く知らない。
本当は加硫とかの工程があったりと、多少の知識があるにはあったが、これ以上は踏み込まないことにした。
というのも、職人としてはここからが面白い工程の筈だ。
その喜びを、俺は自分の見識欲でそれを踏みにじる事はしたくない。
自分達で考えるからこその楽しみがそこにはあると感じたからだ。
全てを教わっていては面白くはないはずだ。
探求する事を喜びと感じる、それが職人って者達だろう。
そんな楽しみを奪う程、俺は野暮では無い。
実際にこの後が楽しみだと全員が顔に書いてあったぐらいだ。
健闘を祈ろうと思う。
数日後。
自信満々のヤンレングスさんとゴンガレスさんが試作品を持ち寄っていた。
今日は相当出来上がりに自信があるのか、ドM眼鏡も立ち会う様に依頼があった。
それを受けて、ドM眼鏡も眼を輝かせていた。
こいつにしてみても、此処には大きな期待があるのだろう。
それはこの異世界でも美容院が造れることの第一歩になるのだから。
「では行きますよ!」
「おうよ!」
「やってくれ!」
俺は蛇口を一気に捻った。
数瞬後。
勢いよくシャワーヘッドから水が噴き出していた。
そしてシャワーヘッドを掴み上げると、蛇腹から水が滴り落ちることは無かった。
「・・・成功か?」
「だよな・・・」
「どうなんだ?・・・」
俺に視線が集まった。
「成功です!」
この発言に眼を見開く『職人アンジェリ』。
「よっしゃー!」
「やったぞー!」
「完成じゃー!」
「よし!」
嬉しさが爆発していた。
そして俺はこう告げた。
「さて・・・次はこの水をどうやってお湯にしましょうか?」
歓喜に沸いた四人が一瞬にして固まった。
「・・・」
「え?」
「ん?」
「・・・なんと?」
こうして『職人アンジェリ』の終わりなき夜が更けていくのだった。
次行ってみよう!
テッテッテッ♪テッテレテッテッ♪テッテレテッテッ♪テッテッテッ♪
その面子は鍛冶屋、鋳掛屋、硝子屋、そして薬師。
鍛冶屋のヤレングスさん、鋳掛屋のゴンガレスさん、硝子屋のチョモランマさん、薬師のユリメラさんだ。
四人とも職種は違えど一端の職人だ。
そして全員が腕に覚えがある人達だった。
連日営業時間終了後の『アンジェリ』にやって来ては、喧々諤々と意見を戦わせ、時には試作品を持ち寄り、思考錯誤を繰り返している。
全員生ビールを片手に嬉しそうに職人談義をしていた。
特に誰から声を掛けた訳でも無く、自然と集まってきていた。
俺はこの四人プラス俺を『職人アンジェリ』と脳内ネームで呼んでいる。
俺にとっても気心知れた仲間内となっていた。
連日職人談義に花を咲かせている。
この四人の集まる理由ははっきりとしている。
それはこの世界の物で、美容院を造りたいと俺が望んでいるからだ。
そう勝手に捉えている。
間違っていたらごめんさない。
その美容院は俺の経営する美容院では無い。
俺が経営しては意味が無い。
あくまでこの世界の人が経営してこそ意味がある美容院なのだから。
簡単な話、今の俺は競合を造りたいのだ。
それは俺やシルビアちゃん達の為だけではない。
実にその意味合いは奥深い。
沢山の意味を含んでいる。
一見競合を造るとは、自分で自分の首を絞める行為に思えるかもしれない。
自分達のお客を手放す行為に捉えられるからだ。
でもそんな表面上の安易な話では無く、とても深い意味あいがあるのだ。
ここに俺の『競合を造ろう作戦』が人知れず実行されていた。
まず現状を説明すると、美容に関しては、美容院『アンジェリ』に一所集中し過ぎている。
これは経済的に見ても不健康な状態である。
富の一極化は大きな貧富の差を生む。
競争を宿命とする商売において、勝ち組にとっては、一見嬉しい事に思えるだろう。
でもその本質は大いに違う。
こと美容に関していうと、髪結い屋さんのお客さんを美容院『アンジェリ』が独占している状態にあるのだ。
中にはこれまでの人間関係を考慮して、馴染みのお客さん相手にお店を経営出来ている髪結い屋さんもある。
これまで上手に人間関係を築いて来れたのだと褒めてあげたくなる。
これはなかなか出来る事ではない。
それに美容院『アンジェリ』の予約状況から、カットの予約を断ってしまったお客さんは、髪結い屋さんに流れているのだろうと予測できる。
それは美容院『アンジェリ』の存在が市井に広まって以降、その傾向は顕著に表れている。
そんな髪結い屋さんをどうにかして救ってあげたいと思う程、俺はお人好しでは無い。
そういう事にはあまり視線を向けてはいない。
他人の商売を何とかしてあげよう等とは俺は一切思ってはいない。
そんな余裕なんてありませんよ。
俺は聖人君子にはなれませんての。
そんな高尚な考えなんてありませんよ。
何が言いたいかというと、今後の『アンジェリ』の発展には、競合の存在が必要不可欠であるという事だからだ。
どういう事かというと。
独占は孤独を生む。
そして孤独は満足を生み。
満足は停滞を生じさせる。
先人のありがたいお言葉では無く、俺が実感している言葉だ。
詰まる処、美容師は職人である。
職人は日々研鑽を重ね、切磋琢磨し、その腕を磨き続けることに意味があるし、それを宿命づけられた職業であるのは間違いない。
至高の施術のその先を極める事を目指し続けているのだ。
それが職人であり美容師の世界だ。
俺はそう捉えている。
それはカット技術に関わらず、接客やその他の施術もそうだ。
完成形はないのかもしれないが、今よりもその先を求めてしまうのだ。
もしかしたら死ぬまでこれは続くのかもしれないが・・・
そんな話はいいとして、今の独占状態が続くと『アンジェリ』はどこかで停滞してしまうのは疑いようがない。
それはお店としても、美容師としてもだ。
俺はまだいい。
日本での生活があり、日本での関係性がある為、美容師として精進を怠る事は無いし、その手を緩めるつもりもない。
実際暇さえあればユーチューブでカットの動画を観たり、カラーやパーマの動画を観て研究をしているのだ。
それにどんな新たな試薬があるかと、美容商材屋の森君との談義は尽きる事がない。
毎回森君には付き合わせてしまって申し訳ないとは思っている。
でもここは欠かすことは出来ない。
一転、俺の弟子達にとってはそうでは無い。
そういった環境にないのだから。
俺とはどうしても一線を介してしまうのだ。
これを埋める策を俺は持ち合わせていないのが現状だ。
もしかしたら、一切合切をぶちまけたら、状況が変わるのかもしれないが、今の俺にはそれを出来るだけの勇気はない。
俺のお店は異世界と繋がっていると言えるほどの、肝ったまは今は持ち合わせてはいないのだ。
それに彼女達はこの後もいつまでも、俺の背中を追い続けるのは良くない事だと思う。
俺の元で居続けることは余りにもったいない。
自分の美容師道を追求して欲しいと切に願うのだ。
それにどこかで独り立ちしてこそ美容師の本懐なのだ。
独立を果たしてこそ意味があると俺は思っている。
そして独自の技術や施術を確立させていく事が、美容師たる所以である。
そうする事が美容師としての遣り甲斐なのだから。
俺はそう考えている。
少々職人談義が過ぎるだろうか?
その状況において競合が無いというのは具合が悪い。
それに前にも少し述べたが、万が一このお店があるとき急に、この異世界に繋がらなくなった時の保険を掛けておきたい。
その想いがどうしても頭から抜けきらないのだ。
俺と『アンジェリ』が居なくなった世界でも、弟子達には美容師を続けて欲しい。
そう切に願うのだ。
俺がいないから出来ないでは意味がないのだ。
それに俺の弟子達は、あと一歩で美容師に成れると俺は思っている。
日々研鑽を重ね、努力をし続ける彼女達に、俺は師匠冥利に尽きると本気で想っている。
彼女達の頑張りを俺は心の底から認めているのだ。
そして彼女達はライバルが居るからこそ努力を怠らない。
ライバルが居るからこそ頑張れる。
そう言った状況が必要であると俺は考えている。
ライバルとはそういった物である事を俺はよく知っている。
ライバルの存在は大きな意味を有しているのだ。
その為の下地を造っておきたい。
そう願わなくしてはいられないのだ。
俺にとってのライバルは・・・今は言わないでおこうか・・・
あの野郎・・・今はどうしているのだろうか・・・
この想いを俺は『職人アンジェリ』には口にした事は一度も無い。
でも何かを感じ取ってくれているのか、この四人は熱心に俺に協力してくれている。
とても有難い話だ。
とは言っても、本人達にとっても新たなチャレンジであるし、その後の利益にも直結することである為、有る意味では商売人として当然の行いであったりもする。
要は彼らにとっても、ビジネスチャンスなのだ。
これを無下にするなんてあり得ない行為だ。
いち職人としても、腕試しを出来る格好の機会なのだから。
職人とはそんな者である。
そして前々からドM眼鏡こと、アイレクスさんからは、髪結い組合含めて、髪結いさんの育成方法に関して、俺は相談を受けていた。
要は髪結いさんでは無く、美容師に育てて欲しいという話だ。
彼女達にとっては生活が懸かっているだけでは無く、その後の未来に直結する事柄である。
決して他人事にはならない。
俺はこれを片手間で行っても良いとはどうしても思えなかった。
ここはちゃんと一線を引くべきであると。
生半可に手を染めるべきではないと捉えていた。
実はこれまでに両手では敵わない数の弟子入り希望者があった。
中にはハサミ持参で、技術を見てくれという熱心な人までいた。
本音を言えば、受け入れてあげたい。
全員俺の弟子として受け入れてあげたかった。
でも今はそのタイミングでは無いと本能的に感じるのだ。
その為、挺身低頭お断りをさせて貰っていた。
決してそちらに落ち度がある訳ではなく、こちらの都合なのだと説明はさせて貰っている。
本当に申し訳ないと。
『職人アンジェリ』は、今はシャンプー台と、シャンプーの完成を急いでいる段階である。
シャンプー台に関してはその開発経費として、髪結い組合からの資金が職人『アンジェリ』に提供されている。
それもなかなかの金額が・・・
実は髪結い組合は良くも悪くも資金はあるのだった。
どういうことかというと、フェリアッテが散々貯め込んだ裏資金は、手つかずの儘であったらしい。
これは大いに使うしかないでしょうよ。
であれば先行投資と、ここは資金を注ぎこむようにと俺はアイレクスさんを誘導した。
そして、髪結い組合の会員さん達には、援助金を生活できるぐらいは毎月支払う様にと、彼女には入れ知恵してある。
これまでの貢献を、ここで返しておきなさいと。
ちゃんと生活は守ってあげなさいと。
それぐらいの金額を有しているのだから・・・
じゃないと罰が当たるよってね。
どうにも彼女は俺の意見を鵜呑みにするし、髪結い組合の裏資金の額や、会員数など、秘匿すべき情報をあっさりと伝えてくれる。
逆にこちらが聴きたくないぐらいだよ。
隙あらば未だに、俺を髪結い組合の会長にしたがるのだ。
なんでだろうね?
でもそれを分かったからこそ、髪結いさん達を路頭に迷わすことにはならなかったのだけれども・・・
そもそも何で俺がは采配しているのだろうか?
まあいいか・・・
前にも述べたが、今はその時期ではない。
いつかはそういう日が来ても良いかもしれないが、それは今や数か月後の話では無い。
せめてこの世界で美容院『アンジェリ』以外の美容院が誕生し、俺以外の美容師が誕生してからにして欲しい。
そうなれば、俺も出来る事が変わってくる。
俺も社会貢献は出来ことならばしたいとは常々考えている。
でもこれって・・・社会貢献になるだろうか?・・・
甚だ疑問だ・・・
さて、そんな未来の夢のお話は脇において、今日はヤンレングスさんとゴンガレスさんの合作であるシャンプー台が持ち込まれている。
シャンプー台は陶磁器で出来ており、頑丈で重厚である。
排水パイプなどは鋳掛屋のゴンガレスさんのお手製であった。
問題は給水の引き込みとシャワーにある。
給水の引き込みはどうにかなったようだが、シャワーに関してはテストするしかない。
先ずはそのシャワーヘッドに繋がっている蛇腹のパイプだ。
この構造は理解できるが、それを再現するのはかなりハードルが高いと、ゴンガレスさんは頭を悩ませていた。
日本であれば、塩ビのホースで事足りる。
でもこの異世界では塩ビのホースなんて造る事は、限りなく遠い。
そして試作品が持ち込まれているという事は、何かしらの技術的な進展があったということだろう。
店内でテストをするには水浸しになってしまう為、バーの営業中の庭先の脇で、試作品を試すことになった。
職人『アンジェリ』の全員が手薬煉引いていた。
さて、どうなることやら・・・
庭先にある花壇の水やり用のホースを給水管に装着した。
バーの客が何が始まるのかと、遠目に眺めている。
「では、行きますよ」
「おうよ!」
「やってくれ!」
両手を眼の前に握って成功を懇願している二人。
こちらにも緊張感が伝わってくる。
「はい!」
俺は勢いよく蛇口を捻った。
シュー、という音を立てて、水が給水管から蛇腹へと、そしてシャワーヘッドへと流れていく。
そしてシャワーヘッドから水が勢いよく溢れだした。
「おお!」
「どうだ?」
「成功か?」
俺はシャワーヘッドを握り、動かしてみる。
すると、蛇腹の脇からポタポタと水が零れ落ちてきた。
「ああー、くそう!」
「あとちょっとかー!」
膝から崩れ落ちる二人。
でもこれまでの試作品の中では一番上手くいっている。
「これまでの中で一番上手くいってますよ!」
「そうだぞ、二人共、そう落ち込むで無いわ」
ユリメラさんもフォローしている。
「あとちょっとだな、どうしたものか・・・」
チョモランマさんが感想を溢す。
ヤンレングスさんが悔しがりながらも、気になる発言をした。
「なあ、ジョニー店長、もう後少しだと思うが、どうしても気になるから教えて欲しいんだがよう、ヘアゴムのゴムってどうやって造るんだ?あれが応用出来たらもっと簡単に解決できそうな気がするんだよな」
確かにそうだ、何も塩ビに拘る必要はない。
ゴムでも代用は可能だ。
なるほど・・・そんな発想もありだな。
「ええ・・・ゴムはゴムの木から抽出するんですよ」
「ゴムの木?なんだいそれは?植物かい?」
ユリメラさんが反応していた。
植物を知る薬師としては見逃せないのだろう。
反応を見るに、やはりこの世界の人達には、ゴムの知識はないに違いない。
でもゴムの木自体はあるかもしれない。
「ゴムの木は種類が多く、常緑や高木落葉低木など様々です、品種によって異なり、比較的温暖な気候の地域には、案外植わっているものなんですけどね」
「何だいそりゃ?もしかしたらその辺にそのゴムの木が植わってるかもしれねえってことか?」
ヤンレングスさんが期待の眼差しで俺を見つめる。
「そうです・・・確か・・・おい!ライゼル!植物図鑑を持って来てくれ!」
給仕しているライゼルは、給仕を終えると、任せろとバックルームに駆け込んでいった。
俺はライゼルから植物図鑑を受け取ると、ページを開いてゴムの木を探した。
「あった、例えばこのフィカス・エラスティカなんかは有名なゴムの木ですね」
図鑑を覗き込むと、
「ん?なんか見た事ある木だなあ、よし、こうなったら明日にでも森に入って調べてくるか」
「何だい、それなら私も一緒に行かせて貰うよ」
「お!ユリメラの婆さんが一緒なら心強い!」
「婆さんって呼ぶんじゃないよ!この小僧が!お姉さんとお呼び!」
ユリメラさんがいきり立っていた。
おー、怖!
でもこの行動力は見上げたものだな。
前向きでいいじゃないか。
「あ!だったら俺も一緒に行かせてくれ!」
ライゼルが割り込んできた。
こいつが付いていけば、獣が出ても大丈夫だろう。
「俺も行くぜ!」
ゴンガレスさんも同行するみたいだ。
「なんだ、なんだ?植物が急に人気になったのか?」
嬉しそうにライゼルは話していた。
「そうだ、植物が世界を変えるんだ」
「かあー!やっぱり植物は凄えな!」
「ほんとになあ」
ライゼルにしてみれば、自分が大好きな植物がなにかしらの役に立つことが、自慢げなんだろう。
でも実際のところ、この異世界だけに限った話では無く、日本でもこれの原料は植物なの?という物が実は大半だったりもする。
植物は偉大な生命だよ。
生命を支える生命の源である。
植物の底力は計り知れない。
実はこれはゴムだけに関わった話ではない。
石鹸にも言える事である。
石鹸の原料についてユリメラさんと一度話をした事がある。
ユリメラさんの造る石鹸は簡単に言うと木灰と植物オイル、炭酸水に花のフローラルエキスを混ぜ合わせて造った物だ。
薬師の彼女にとっては、子供の頃から造っている慣れ親しんだ製法らしい。
苛性ソーダになる木灰を水に溶かして、上澄みを取り除く。
そして植物オイルとフローラルエキスを混ぜて作るとのこと、詳細な用量等は教えてくれず、また作製方法もだいぶ割愛しているみたいだ。
そりゃあそうだろう、秘伝のレシピをそう安々と口にする訳にはいかないよね。
でもこれだけで充分に俺には伝わった。
彼女が腕のある薬師であると。
それに彼女の造る石鹸は質が高いと。
彼女との出会いはそれなりのインパクトがあったが、その話はまた今度でいいだろう。
「ライゼルや、お前さん一流の庭師を目指すのなら、もっと植物の何たるかを学ばんといかんなあ」
「ああ、ユリメラの婆さんには世話になるぜ」
「だから私を婆さん扱いするんじゃないよ!この小僧が!お姉さんとお呼び!」
「ハハハ!ごめんごめん!お姉さま」
「フン!始めからそう呼びなっての!金●蹴り上げるぞ!」
ユリメラさんがライゼルを睨みつけていた。
思いっきり蹴り上げても良いですよ。
俺のじゃなくてライゼルのだし。
なんなら代わりにやりましょうか?
翌日には、森での探索を行った四人はニンマリ笑顔で帰ってきた。
この笑顔を見る限り、どうやら手応えがあったようだ。
「ジョニー店長!当たりだ!」
「やったぜ!見つけたぞ!」
「こうも簡単にいくとはねえ」
どうやらゴムの木を引き当てた様子。
「あったみたいですね」
「ああ、しっかりとな」
「あれは間違いない、ちゃんと図鑑で参照したからな」
ライゼルは自慢げだ。
「じゃあ、ゴムの抽出方法を教えますね」
「おおよ!これは大きな一歩だぞ!」
「ああ、そうだな!」
「これは面白くなってきたねえ」
全員が嬉しそうにしていた。
その後、俺はゴムの抽出法を教えた。
抽出後の加工に関しては、俺は良く知らない。
本当は加硫とかの工程があったりと、多少の知識があるにはあったが、これ以上は踏み込まないことにした。
というのも、職人としてはここからが面白い工程の筈だ。
その喜びを、俺は自分の見識欲でそれを踏みにじる事はしたくない。
自分達で考えるからこその楽しみがそこにはあると感じたからだ。
全てを教わっていては面白くはないはずだ。
探求する事を喜びと感じる、それが職人って者達だろう。
そんな楽しみを奪う程、俺は野暮では無い。
実際にこの後が楽しみだと全員が顔に書いてあったぐらいだ。
健闘を祈ろうと思う。
数日後。
自信満々のヤンレングスさんとゴンガレスさんが試作品を持ち寄っていた。
今日は相当出来上がりに自信があるのか、ドM眼鏡も立ち会う様に依頼があった。
それを受けて、ドM眼鏡も眼を輝かせていた。
こいつにしてみても、此処には大きな期待があるのだろう。
それはこの異世界でも美容院が造れることの第一歩になるのだから。
「では行きますよ!」
「おうよ!」
「やってくれ!」
俺は蛇口を一気に捻った。
数瞬後。
勢いよくシャワーヘッドから水が噴き出していた。
そしてシャワーヘッドを掴み上げると、蛇腹から水が滴り落ちることは無かった。
「・・・成功か?」
「だよな・・・」
「どうなんだ?・・・」
俺に視線が集まった。
「成功です!」
この発言に眼を見開く『職人アンジェリ』。
「よっしゃー!」
「やったぞー!」
「完成じゃー!」
「よし!」
嬉しさが爆発していた。
そして俺はこう告げた。
「さて・・・次はこの水をどうやってお湯にしましょうか?」
歓喜に沸いた四人が一瞬にして固まった。
「・・・」
「え?」
「ん?」
「・・・なんと?」
こうして『職人アンジェリ』の終わりなき夜が更けていくのだった。
次行ってみよう!
テッテッテッ♪テッテレテッテッ♪テッテレテッテッ♪テッテッテッ♪

