小鳥の囀りが鳴り響いていた。
早朝の静けさを優雅に彩っている。
ここは日本ではない異世界。
灼熱の太陽が昇ると共に、輝きが世界を覆い尽くしていく。
世界が一瞬の黄金に染まっている。
これは早朝で無いとみられない光景だ。
今日の始まりを告げる陽光が、辺り一面を煌びやかな世界に変貌していた。
これが朝の始まりだと言わんかの如く。

ここにこの世界にはそぐわない印象を受けるお店があった。
その名も美容院『アンジェリ』
その存在は異質であり、でもよく窺うとそうでも無いと感じる。
摩訶不思議な雰囲気を醸し出しているお店であった。
全く持って異質な存在感を発している。
そこにある事に何かしらの違和感を感じる、でもあって当然とも感じる。
どうにも捉えきれない不思議なお店だった。

そのお店の庭先に一人の男性が大きな木製の箱を持って現れた。
よく見るとその箱には大きな穴が一つ空いている。
これは鳥小屋であろうか?
日本でたまに見かけるそれよりも、有に3倍以上はあろうかというサイズだ。
少々重たそうに見える。

その男性は庭先にある樹木の枝にその鳥小屋を設置した。
落ちない様にと入念に針金が巻かれている。
作業を終えると男性は満足げな表情を浮かべていた。
設置後にその男性は二礼二拍手一礼を行っていた。
その様はとてもこの世界には似合ってはいない。
でもそんな事はどうでもいいのかもしれない。
実にその男性は嬉しそうにしていたからだ。
さもそうすることが当たり前の事と思っている節があった。
であるならば、それも悪くはないだろう。

その後、その男性は庭先の花壇や、家庭菜園の野菜に水をやり、雑草を抜いていた。
楽しそうに作業をしている。
土に触れることが嬉しいのだろう。
実に活き活きとしている。
そしてこんな事を言い出した。

「さて、本日も美容院『アンジェリ』は盛況だな!」
異世界美容院『アンジェリ』は本日も・・・大盛況みたいだ。
そんな朝の一時を向かえていた。