新戦力を得た『アンジェリ』の快進撃は止まらない。
そして嬉しい事にここに来て、シャンプー屋が遂に美容院に成り変わってきていたのである。
ふう・・・やっとか・・・

ライゼルに言わせるとモリゾーの変化が大きかったらしい。
実際冒険者のお客が増えた。
オーダーはだいたいカラーカットだ。
そして冒険者達は奇抜な髪形を好む傾向にあった。
そんな派手にしてしまって大丈夫なのか?
少々心配になる、ちゃんと手入れしなさいよ。
奇抜な髪型は崩れたらみっともなくなるよ。

こう言っては何だが、この異世界の人々は偏り過ぎである。
シャンプーが良いと言われればそれに集い。
奇抜な髪形が良いと言われればそれに集い。
噂や流行りに左右される傾向にあるのだ。
そしてそれを切り開いた洗堀者は何故か持て囃されていた。
実際モリゾーが人気者になっていた。
・・・なんだそれ?
分からなくはないが・・・うーん。
頭を捻るしかないな。
流行なんてこんなもんなんだろうな。
まあいつか飽きるだろう。

この異世界に美容院をオープンしてから既に4カ月が経っていた。
今ではお客さんの男女比率も半々になっている。
相変わらずハゲたおっさんも多いのだがね。
でもシャンプーはシルビアちゃんの担当だから、ハゲたおっさんの相手は殆どシルビアちゃんである。
俺はハゲ地獄からは抜け出せた。
少し嬉しい。
いや、決してハゲたおっさんの相手をしたくない訳ではないんだよ。
でもさあ、代わり映えしないってのもさ。
まあ分かってくれよ。

そして最近は気になるお客が増えて来ていた。
それは同業者である。
要は髪結いさん達がそれを明かす事無く、カットを受けに来ていた。
なんで気づいたのかって?
そんなの簡単に分かるよ。
視線がカットしている手に集中しているし、会話にも耳をそばだてているし。
明らかに一般のお客さんとは様子が違うんだからさ。
ばればれですって。
別にいいけどね。
中には遠慮も無くカットの方法を聞いてくる者もいたが、適当に返答しておいた。

「センスですね」

「慣れですね」

「ハサミを使います」

「学校で学んだんです」
こんな回答にしておきました。
誰が一見さんに秘伝のタレのレシピを教えると?
ありまへんがな。

そんな客には、
「何で知りたいんですか?」

逆に尋ねてみると、
「あ、いや、特には」

「気になったので・・・」

「やっぱりいいです・・・」
こう言った後には目を合わせてくれなくなっていた。
舐めてんじゃねえよ。
俺は美容師なんでね!
学びたければ、先ずは頭を垂れよ!
誰が簡単に教えるかっての!
盗めるもんなら盗んでみろっての!
フンス!

そして営業時間終了後、待ちに待ったお客さんが笑顔で店内に入ってきた。
この人は税制徴収官のタックスリーさんだ。
この人の事を語るには時を遡らなければならない。



あれは商人ギルドにお店の登録をしてから凡そ1か月後のことだった。
営業時間を終えて、シルビアちゃんと晩御飯でもと思っていた所に来客があった。

「こちらは美容院『アンジェリ』で御座いますかな?」
其処には深めにハットを被った男性がいた。

「すいません、もう営業時間は過ぎてしまいまして、また後日でよろしいでしょうか?」

「いえ、それには及びませんな」

「ん?」
バックルームにいたシルビアちゃんがフロアーに出てきた。

「ジョニー店長、お客さんですか?」
そのシルビアちゃんを見て男性が反応した。

「おや?マリオ商会のシルビア嬢ですかな?」

「タックスリーさん!」
お知り合いかな?
でもシルビアちゃんは一瞬嫌な顔をしたような・・・
気の所為か?

「タックスリーさんがどうして・・・ああ、徴収ですか?」

「お察しの良い事ですな、シルビア嬢」
タックスリーさんが鷹揚に頷く。

「ジョニー店長、こちらは税制徴収官のタックスリーさんです。マリオ商会の担当もタックスリーさんなんです」
税制徴収官か、そういえば商人ギルドの説明で、月に一度税金の徴収に来ると、ミアさんが言っていたな。
思い出したよ。

「へえー、そうなんだ。タックスリーさん、ジョニーです。よろしくお願いします」
俺は軽く会釈した。

タックスリーさんはハットに触れて、
「こちらこそよろしく、噂の美容院『アンジェリ』随分と儲けているようですな」
意味深な視線を向けられた。

「いえいえいえ、そんな事はありませんよ」

「ほう?儲けていないと?」
今度は怪訝な表情で見つめられた。

「そうですよ、マリオ商会に比べたら、家のお店の売上なんて、大した金額ではないと思いますよ」

「本当ですかな?私の眼は誤魔化せませんぞ」
横目で睨みつけられてしまった。

「なんなら帳簿を確認しますか?」

「それは是非とも」

「シルビアちゃんいいかな?」

「はい、準備します」
シルビアちゃんは受付に向かった。

「タックスリーさん、何か飲みますか?」

「ん?私に取り入ろうとでも?それには及びませんな」
なんだこいつ・・・
自分から拗らせていくタイプか?
流石にイラっとするぞ。

「はあ・・・そんなつもりでは無かったんですけどね。まあいいです」
シルビアちゃんが一瞬嫌そうな表情をした意味がよく分かったよ。
こいつは外でもこんな態度なんだろう。
そりゃあ嫌われるよ。

「ふん!」
タックスリーさんは無視して、俺はバックルームに入る。
俺はコーヒー、シルビアちゃんにはオレンジジュースを準備した。
フロントに戻ってくると、シルビアちゃんが日計表を基にタックスリーさんと話をしていた。
ここはシルビアちゃんにお任せだな。
あー、やだやだ。

この日計表だが二種類ある。
日本語の物と、この世界の文字の物だ。
この世界の文字は俺にはさっぱり分からない。
その為、日計表はシルビアちゃんに丸投げしている。
本当にシルビアちゃんに出会えてよかったよ。
そうで無ければどうなっていたことか・・・
大変ありがたい戦力だ。

「シルビアちゃん、オレンジジュースでよかった?」

「はい、ありがとう御座います」
シルビアちゃんはグラス受け取ると、一口含んでから受付の内側に置いた。
タックスリーさんが、眉を潜めて俺の方を向いた。
コーヒーの匂いが気になるのか、俺の手に持たれているノリタケカップをガン見している。

お前には絶対にやらねえぞ。
やる訳ねえだろうが。
自分から拒否したんだからな。
そうか・・・今になってしまったと思っているんだな。
素直になればいいのに・・・

「うーん、これは賞賛に値しますな。管理が行き届いていますな」
感心してウンウンと頷くタックスリーさん。

「ありがとうございます」

「ですが、虚偽が無ければですが・・・」
この野郎!今なんて言いやがった?
俺は改めてまじまじとタックスリーさん眺めてみた。

ん?・・・この違和感は・・・
タックスリーさんは表面的には紳士を気取っている。
それなのに・・・ハットを脱いでいない。
部屋でハットを脱がないのは失礼な事だ。
それ処か深めに被っている・・・さらに・・・ハットからはみ出ている髪は・・・あーあ・・・そういうことね。
俺は理解してしまった。
こうなったら細やかな仕返しだな。

「どうしたら虚偽が出来ると?」
俺ははみ出ている髪をガン見しながら答えた。
その視線を感じてか、タックスリーさんはハットを更に深めに被り直した。
俺は視線を外さない。

「教えて貰えませんかね?」

「それは・・・」
たじろぐタックスリーさん。

「要らない脅しなら止めて貰えませんか?ギルドマスターに報告しますけど、いいですか?」

「なっ!・・・これは失礼した・・・」
タックスリーさんは小声で返答した。
俺はまだ視線を外さない。
遂に痺れを切らしたタックスリーさんが。

「今日は失礼します、次に伺う時に先月分の税金を払って貰えますかな?」
踵を返してお店を出ようとした。

「えっ!ちょっと待って下さい。今から準備しますので」
シルビアちゃんが慌てる。

「それには及びませんな、では失礼いたします」
俺の視線から逃げる様にタックスリーさんは帰っていった。

何が起こったのか分からないシルビアちゃんが呆けた顔をしていた。
これは答え合わせをしようかな。

タックスリーさんを見送ると、
「シルビアちゃん、朗報だよ」
俺はシルビアちゃんにタックスリーさんの事を教える事にした。

「朗報ですか?」

「ああ、タックスリーさん撃退方法を教えよう」
シルビアちゃんが驚く。

「え!・・・そんな方法があるんですか?」

「ある!現に奴は逃げる様に帰っていっただろう?」

「はい・・びっくりしています・・・」

「フフフ・・・奴はな・・・ヅラを被っている!」
キョトンとするシルビアちゃん。
あれ?カツラはあまり知られてはいないのか?

しょうがないので俺はカツラについて説明した。
すると驚愕の表情を浮かべるシルビアちゃん。
またこの顔だ・・・たまにするこの劇画タッチの驚き顔はなんなんだろうか?
漫●太郎・・・こうなると偉大過ぎる。

「奴は間違いなくハゲだ!そしてそれを悟られない様にする事に全力を注いでいる、残念な男だ!」

「そんな・・・」
と言いつつも悪い顔になるシルビアちゃん。
おお・・・シルビアちゃんが悪代官の顔をしているぞ。
これはマリオ家に確実に共有されるな。
いいじゃないか!
俺は好きだよ、そういうの。
やってしまいなさい!



その数日後。
営業終了後に下を向いたままのタックスリーさんが来店した。
その様を見てにやけるシルビアちゃん。
止めなさいっての!
露骨すぎるでしょうよ。
タックスリーさんは全く視線を合わせてはくれない。

「ジョニー店長、先ずは先月の税金の徴収をさせて貰えますかな?」

「勿論です、準備していましたよ。ご確認ください」
タックスリーさんは金額だけ確認すると、直ぐに徴収した金銭を納めた。
明らかに様子が可笑しい。
というのも、情報を共有されたマリオ商会でタックスリーさんは撃退されていた。
そのことから思い当たる節があるようだ。

そこにライゼルが現れた。
これがタックスリーさんの運の尽きだった。
いや、ある意味運が周って来たのかもしれない。

「よっ!ジョニー!シルビアちゃん、練習台になりに来たぞ!」
マイペースにずかずかとお店に踏み込んでくる。

「ライゼルさん、今日もよろしくお願いします」
シルビアちゃんはライゼルに頭を下げている。
本当にこいつは毎日毎日飽きもせずに、シルビアちゃんのシャンプーモニターの為に来店している。

「おうよ!任せておけ!・・・それでこいつは誰だ?」
ライゼルはタックスリーさんを繁々と眺めている。

「税制徴収官のタックスリーさんです」
シルビアちゃんが替わりに答えていた。

「ど、どうもタックスリーです・・・」
タックスリーさんはチラリとライゼルを見つめた。

「そうか、俺はライゼルだ!冒険者をやっている。よろしくな!」
ライゼルは無遠慮にタックスリーさんを除き込む。
タックスリーさんは嫌がる様に下を向いていた。

その様にイラっとしたライゼルは、
「おい!お前!失礼な奴だな!なんでハットを脱がないんだ?せめて手を掛けるぐらいはすべきなんじゃないのか?それにこちらが名乗っているのに、目も合わせないなんておかしいだろお前!」
当然の事を言い放った。

まったくライゼルの言う通りだな。
ここまで真っすぐに言われてしまったら、ちゃんと対応するしかない。
それに相手は冒険者だ。
下手な事をすると要らない事を言いふらされかねないぞ。
タックスリーさんはしまったと顔を上げて、ハットを脱いでしまった。
条件反射だろうと思う。
パブロフの犬だな。

そして全員の時間が一瞬止まった。
其処には目も当てられないカツラが頭に乗っかっていた。
お手製の物なのだろうが、見るに堪えない。
髪を装っているのは毛糸だろうか?
麻紐?
何にせよ明らかに人の髪の毛ではない。
その衝撃で、ライゼルまで劇画タッチの顔になっていた。
鼻水が垂れそうだ。
シルビアちゃんも劇画タッチだ。
そしてそれを見たタックスリーさんはしまったと、驚愕の表情を浮かべるが、時既に遅しだ。

一瞬の間を置いてライゼルが腹を抱えて笑い出した。

「ギャハハハ!何だそれ!頭に何を乗せてるんだ?ギャハハハ!」
こら!ライゼル!指を指すんじゃないよ!
俺は流石に笑えなかった、ちょっとタックスリーさんが可愛そうに思えてきたからだった。

「ライゼル!いい加減にしろ!お前も失礼だろうが?」

「おお!これはすまない!余りのインパクトによう!にしても、ギャハハハ!オモしれえ!」
タックスリーさんは恥ずかしくて顔を真っ赤にしている。

「お前なあ?大概にしろよ!タックスリーさん、こいつの事は外っといていいですよ。それより、よかったら相談に乗りますよ。ここは美容院ですから」

「ジョニー店長・・・」
一転、タックスリーさんは泣きそうだった。
こんな事で泣かないでくれよ。

「髪の悩みは髪のプロの美容師に相談してくださいよ」

「ああ・・・ありがとうございます・・・」
タックスリーさんはポロポロと泣き出してしまった。
その姿を見てライゼルも反省の表情を浮かべていた。
お前はデリカシーがなさ過ぎなんだよ!まったく!
シルビアちゃんもシュンとしている。

「こう見えて私は・・・まだ20代なんです・・・見えませんよね・・・」

「ですね・・・」
ここははっきりと答えなければいけない処だ。

「でしょ?見てください!」
タックスリーさんは意を決してカツラを脱いだ。

其処には頭皮剥き出しの頭があった。
見事な浪平ヘアーであった。
1本だけ申し訳なさそうにちょろっと天辺に髪が生えていた。
確か浪平の双子のお兄さんは2本だったはず・・・どうでもいいか。

シルビアちゃんとライゼルは絶句していた。
まあそうなるだろうな。
もしかしらたライゼルがまた禿げた頭を見て笑い出すかと思ったが、流石になかったな。
そう言えばこいつも確か禿げないか気にしてなかったか?
俺は気になったので聞いてみた。

「それでタックスリーさん、なんでカツラを?」

「それは・・・私の仕事は税制徴収官です・・・舐められる訳にはいかないのです・・・」
タックスリーさんはもじもじしている。

「ん?どういうことですか?」

「若ハゲは舐められますよね?」
ああ、そう言う事か・・・分からなくはない。
舐められるというより残念がられるだろう。
実際すまないと思うが、俺も若ハゲさんを見ると可哀そうだなと思ってしまう。
これが遺伝性のものであった場合には本気でそう思ってしまう。
美容師の先輩にそんな人がいたな。

その先輩はある時、
「もうどうでもいい!」
と叫ぶと。
バリカンで頭を刈り出したのだった。
突拍子のない行動に驚いてしまった事を覚えている。
でも吹っ切れた先輩は、その後スキンヘッドの美容師として一世を風靡していた。
驚きの出来事である。
俺はその潔さにカッコいいと感じてしまった。
あの先輩元気にしているかな?
どうでもいいか。

「タックスリーさん、私が提示出来る案は二つです」

「二つですか?」
藁をも縋る表情を浮かべているタックスリーさん。
必死さがひしひしと伝わってくる。

「はい、先ずはいっそのこと割り切って、スキンヘッドにする」

「おお!スキンヘッドか!格好いいじゃないか!そうしろよタックスリー!」
ライゼルが後押しする。
その反応を見てそれも有なのか?と悩むタックスリーさん。
その横でシルビアちゃんは首を横に振っている。
それを見て今度は間違いなのか?と更に悩むタックスリーさん。
シドロモドロだ。

「ジョニー店長、もう一つは・・・」
期待の眼差しで俺を見つめるタックスリーさん。

「それは・・・完成度の高いカツラを被ることです」

「なっ!それは?」

「そんな物があるのですか?」

「嘘だろ!」
俺は場を手で制して、着付けルームに入った。

因みにこの着付ルームには決して入ってはいけないと、シルビアちゃんには厳守させている。
その理由は神棚があるからだ。
とても神棚を見せるなんて俺には出来ない。
それに神様が何をやらかすか分かったものじゃない。
勝手に念話で話かけて、お供え物をしろなんて言い出しかねない。
すまないが俺はあの人をいまいち信用していないんでね。
人ではないか?どうでもいいや。

そして一冊のカタログを抱えて俺は三人の前に現れた。

「ジョニー・・・それは何なんだ?」
何故かたじろぐライゼル。

「これはな・・・カツラカタログだ」

「まさかそんな物が・・・あり得ない・・・」
動揺を隠しきれないタックスリーさん。
シルビアちゃんまで空気に飲まれて怯えている。
なんでだよ!

カタログを見せると、最初こそ及び腰の三人だったが、直にこっちの方がいい、あっちの方が似合うと喧々諤々と議論が始まった。
妙な打ち解け方をしている。
どういう事なんだ?

俺は馬鹿らしくなって、それをほっこりとしながら眺めていた。
てか、カツラ確定なのね。
カツラが結んだ縁だな。
よく分からんが。

そして喧々諤々と議論を重ねて、タックスリーさんのカツラが決定した。
それはビッチリ七三分けのカツラだった。

決め手はシルビアちゃんの、
「この髪形が一番税制徴収官に合っています。威厳を感じます!」
の一言だったみたいだ。

ライゼルも、
「確かに・・・」
よく分からんが頷いていた。

威厳?なんのことやら。
本当にそれでいいのかい?タックスリーさん。
まあ満足そうにしているからいいのか。

そして俺は美容材料屋さんにカツラを依頼した。
仕上がりには時間が掛かると2カ月近く待つことになった。
その後事ある事にタックスリーさんはお店に顔を出していた。
今ではライゼルやシルビアちゃんとも仲良くなり、シルビアちゃんのシャンプーの練習台にもなっていた。
髪はほとんどないけど・・・
まあ好きにしてくれよ。
聞く限り、ライゼルとはたまに飲みに行く仲になっているらしい。
妙な関係だ。
別にいいけど。

にっこり笑顔のタックスリーさんが、営業時間後のお店にやってきた。
そして勘のいいライゼルも店内にいた。
というよりこいつはたいだい営業時間終了後には店内にいる。

「タックスリーさん、お待たせしました」

「待ちに待っておりましたぞ」

「やったな!タックスリー!」

「お待たせです、タックスリーさん!」

「ありがとう、ライゼル君、シルビア嬢!」
タックスリーさんは嬉しさが駄々洩れだ。
ライゼルもシルビアちゃんも一緒になって喜んでいる。
仲の良い事でなによりです。

俺は箱からカツラを丁寧に取り出した。
それを一度タックスリーさんに確認して貰う。
ほうほうと満足げに頷くタックスリーさん。

「タックスリーさん、こちらに座ってください」
タックスリーさんをカット台に誘導した。

「はい」
少々緊張気味のタックスリーさん。
顔が強張っている。

「大丈夫だタックスリー!ジョニーを信じろ!」
ライゼルが訳も分からない声援を送っている。
何故だか神妙に頷くタックスリーさん。
シルビアちゃんも息を飲んでいる。
どんな空気感だよ。

「では行きますよ・・・」
俺はゆっくりとカツラをタックスリーさんの頭に乗せる。
そして櫛で研いで馴染ませる。

「おお!」

「良い!」

「これは・・・」
満足そうな一同。
平和な空気が充満する。
そしてハイタッチをする三人。
なんなんだいったい・・・
万遍の笑顔のタックスリーさんだった。
小躍りし出したぞ。
どうしたらこうなるの?
まあいっか。