その翌日にはマリオさんのカットを行い。
そしてその翌日にはシルビアちゃんのカットを行った。
二人共満足してくれていた。
特にシルビアちゃんは何かを内に秘めた様な表情でカットを受けていた。
少々気になったがなんだろうか?

マリオさんとは商売人談義を楽しんだ。
お互い経営者として、深い話が出来た。
まあ俺は経営者といっても初心者だけどね。
それに社員もいないけど。
そしてマリオさんは前にも一度オゾンシャンプーを受けており、その髪形を俺は分かっている。

実はマリオさんは少々天辺が薄いのである。
マリオさんからはその悩みの相談を受けてもいたのだ。
マリオさんのハゲは後天的なものと考えられた。

ハゲの箇所は一般的に頭頂部の場合は、汚れや食事のバランスなどから後天的に起こったものと言われている。
そしておでこからのハゲは先天的と考えられている。
その為、マリオさんのハゲは治るものと考えられた。
それを俺はマリオさんに伝えていた。
更に育毛剤をお勧めした結果、マリオさんは飛びつく様に育毛剤を購入していた。
ハゲとは切実な悩みの様だ。
俺はハゲて無くてよかったー。
今はだけどね。



今日は休日にすることにした。
その理由は簡単だ。
二階のお引越しだ。
今日からは実家を離れて新居で寝食を行うことになる。
既にだいたいの家具は運び終えている。
後は小物を中心に運び入れるだけだ。

「丈二、ここでいいか?」

「ああ、ありがとう親父」

「それで、丈二。お店の方はどうなんだ?やっていけそうなのか?お前なら上手くやっていくんだろうけどな。ガハハハ!」
相変わらず声がデカい。
はあ・・・まさか異世界とお店が繋がっているとは言えないよな。
こんな話通じる訳が無い。
頭が可笑しくなったのかと心配されるのがおちだ。

「まあ、何とかやっていくさ。大丈夫だよ」

「そうか、まぁ何かあったら頼ってくれ!とは言っても俺には何も出来ねえけどな!ガハハハ!」
だから煩いっての!
この親父、齢60歳になるのだが、未だ現役で大型トラックを乗り回す偉丈夫だ。
毎日平均で千本程のタイヤを積んでは降ろすを行っている。
俺とはある意味真逆の職業についている。
ガッチリマッチョで均整の取れた体格をしていた。

連れ合いの俺の母親は病気で早くに亡くなっている。
ある意味親父の腕一つで俺と妹は育てられてきたのだ。
とにかく元気な親父である。
いつまで働くのかは知らないが、まだまだ現役を続けるつもりらしい。
老け込んで呆けられるよりはましである。

「それにしても念願の美容院のオープンだな!花輪の一つも本当に出さなくていいのか?丈二?」
そりゃあ俺だって貰えるなら貰いたいよ。
でもそんなことしてもお店が日本ではオープン出来ないんだから、返って貰う訳にはいかない。
不審がられるだけだっての。
あーあ、祝って欲しかったよ。
ほんとに・・・

「ああ、それには及ばない。すまないな気を使わせて」
お店は異世界に繋がっていて、日本ではお店をオープンさせれないなんて、説明できる訳が無い。

「そうか、お前がそう言うんならいいが、今日からここに住むんだろ?念願の我が家だな!」
にやけた顔で軽々と荷物を抱えている。
流石はマッチョだな。

「まあな、やっとだよ」

「分かるぞ!その気持ち!」
だから煩いって!
声デカいって!
この親父は・・・まったく。

「俺も始めて自分の家を持てた時には興奮したもんだ!」
そうか・・・そうだよな。
一生に一度訪れるかどうか分からないイベントだもんな。
淡々と過ごすなんてあり得ない。
あれ?実家が建ったのっていつだったかな?

「ねえ兄貴、ここでいい?」

「ああ、ありがとう美幸。そこに置いてくれ」
妹にも引っ越しを手伝わせた。
なんで私がとブーブーと文句を言っていたが、お前の時は手伝ったぞ、の一声で諦めたみたいだ。
身内の引っ越しぐらい文句を言わずに手伝えっての。

ここで少女が俺の胸に飛び込んできた。
「ジョ兄!遊んでー!」
姪っ子の亜紀だ。
今日も元気いっぱいだな。
無邪気な笑顔で俺を見上げている。
俺は頭を撫でて話し掛けた。

「亜紀、今日は遊べないんだ。ごめんな」

「ええー!否だ!遊んでよー!」
むくれっ面で睨みつけていくる。

「駄目だ、また今度な」

「ええー、遊んでよー!」
亜紀は俺から離れようとしない。
それにしても可愛らしい姪っ子だ。
亜紀は俺にとても良く懐いている。
そんなに一緒に居ることも無いのだが、不思議なぐらいに好かれている。
前に亜紀は将来はジョ兄のお店で働くと宣言していたらしい。
俺はほっこりとした気分になり、嬉しくなったよ。
そんな将来も悪く無いな。

俺の妹の美幸、その娘の亜紀。
美幸は所謂出戻りだ。
元々看護師だった美幸は、25歳の時に結婚した。
そしてあっさりと離婚した。
美幸の元旦那は、美幸が妊娠した事をきっかけにあろう事か浮気をした。
妻が妊娠中に浮気をするというよくある出来事である。
それを一切許すこと無く、美幸は呆気なく離婚した。
勿論教育費や慰謝料はがっぽり取っている。
相手が資産家の息子ということもあって、慰謝料は貰い過ぎだろ!と言うぐらいぶんどっていた。
いくらかって?
教えれる訳がありまへんがな。
まあ8桁以上と言っておこうか。
将来はなにかと亜紀にお金が掛かるだろうから貰えるだけ貰っておけばいい。
美幸の元旦那は浮気なんてするタイプには見えなかったが、やってしまったからにはしょうがない。
そんなこともあってか、俺が実家に戻ってきたことを美幸と亜紀は喜んでいた。
特にここ数カ月は亜紀は俺にべったりで、勝手に俺の新居に住むと騒いでいたぐらいだ。

「亜紀、我儘いったら駄目でしょ?」
窘める美幸。

「だってー、ジョ兄はいつもお仕事で忙しくて遊んでくれないじゃない」

「ごめんな亜紀、また今度な」

「でもー」
ここで親父が割って入ってきた。

「なあ亜紀、こうしようか?今日の晩御飯はこの新しい家で焼き肉にしよう!丈二、それでいいよな?」
なにー!
新居で焼き肉ですと?
あり得ませんがな。
いきなり匂いを充満させるなんて勘弁してくれよ。

「ふざけんな!親父!あり得んだろうが?」

「アハハハ!新居で焼き肉ってオモロ!」
美幸が悪乗りしている。
こいつら・・・俺の家を何だと思っているんだ?
念願の我が家だぞ!

「やったー!焼き肉だー!」
浮かれて小躍りを始めた亜紀。
止めてくれよ・・・

「亜紀・・・」

「こうなっては決定だな!ガハハハ!」
親父がニヤニヤしている。
この親父・・・締めてやろうか!とは言えないな。
腕力で敵う相手ではない。
上腕の太さが女性の太ももぐらい太いんだぞ、勝てる訳が無い。

「いい加減にしてくれよ・・・」
「丈二、これは杮落としだ。諦めるんだな」
杮落としって・・・
そういう考え方もあるにはあるが・・・
ちょっと無遠慮過ぎないか?

「それに覚えてないのか?俺の家でも初日の晩飯は焼き肉だったんだぞ」
マジか?流石に覚えてないぞ。

「覚えていてる訳ないだろ?何年前だよ?」

「そうなのか?母さんが杮落としだって、めでたいことだって焼き肉にしたんだぞ」
そうだっけ?・・・
母さんらしいな。
母さんは豪快というか何と言うか・・・ビックママという肩書が似合う母親だった。
はあ・・・母さんが生きていたら、同じ轍を踏んでいたということか・・・であれば。
認めるしか無いみたいだな。
亡くなった母親を持ち出すなんて狡く無いか?

「分かったよ、今日の晩御飯は焼き肉にするか?」

「やったー!」
亜紀は万遍の笑顔だった。
しょうがないよな。
そうか、親父も同じ気持ちだったんだな。
でも当の本人はやってやったぞ!と言いたげな表情をしていた。
この糞爺いめ!



その後、俺はホームセンターで買い物をした。
焼き肉の買い出しは美幸に任せた。
こう言ってはなんだが、焼き肉は美味しかった。
こんな新居の苔落としも悪くないと思えてしまった。
でも臭いが気になるな・・・気の所為か?
換気扇はMAXでぶん回しておいた。
当たり前でしょ?



翌日。
俺はお店の店先を整えることにした。
雑種地を立派なガーデンに変えたい。
材料や道具は昨日ホームセンターで購入済だ。
その為の買い物だったのだ。

先ずは囲いを設置することにした。
これが無いと、ここがお店の範囲ですよと主張できない。
無遠慮に踏み込まれるのもどうかと思うし。
現に鯖と鮭の時は我先にと人々が入ってきていたからね。
正直言えばあまり気持ちの良いものではないよな。

本当は囲いは安価なプラ版で済まそうかと思ったが、雰囲気的に少々違うと木枠にすることにした。
それにしてもホームセンターはありがたい。
木の加工を無料で出来るのだ。
数時間を掛けて、木版や木杭を何枚も造ることが出来た。
その所為もあってか、思いのほか安価に仕上がることになった。
財布に優しい。
嬉しいねえ。

基礎となる先の尖った木杭を、ハンマーで何本も地面に打ち付けていく。
始めは上手く真っすぐに打ち付けられなかったが、慣れてくると真っすぐに打ち付ける事が出来る様になっていた。
それなりの力作業だ。
少し腰が重くなってきている。

作業に没頭していると声を掛けられた。
誰なんだと振り返るとライゼルがいた。

「ジョニー、すまねえな。俺の剣を知らねえか?」
やっと来やがったか。
この馬鹿が。
預かっているよ。

「ライゼルお前、相棒の剣を忘れていくなんて、何やってんだよ?呆れるぞ!お前冒険者だろ?」

「だな、俺もびっくりしたぞ!ハハハ!」
笑ってやがる・・・
こいつはアホなのか?
反省しろ!反省を!

「ちょっと待ってろ!」

「ああ、悪いな」
俺は店に入って、クローゼットに入っているライゼルの剣が収まっている鞘を取り出した。
外に出てライゼルに手渡す。
軽くお辞儀をして受け取るライゼル。
反省なんて全くしていない。
表情を見れば分る。

「そうだライゼル。剣を研いでおいたから確認してみてくれよ」

「はあ?ジョニーが俺の剣を研いでくれたってのか?」
ライゼルが驚いていた。

「ああ、これは俺の趣味みたいなものだ、気にするな」

「そうなのか?」
そう言うとライゼルは遠慮も無く抜剣した。
繁々と剣を眺めている。
俺の店先でなにやってるんだ!
周りに人がないからいいけど。
不用心過ぎないか?

「おお!マジか!こりゃあ凄え!ジョニー!お前研ぎ師なのか?」
俺は美容師だと言わなかったか?
否、髪結いさんか?
どうでもいいか。
なんにしても違っている。

「ライゼル、俺は研ぎ師ではないぞ。前に言わなかったか?」

「そうだったな・・・にしても・・・この仕上がりは・・・最高だぜ!ウヒョー!これなら伝説のドラゴンも手に掛けられそうだ!」
ドラゴンって・・・いるのか?

「ライゼル・・・ドラゴンって本当にいるのか?」
いて欲しいような、嫌なような・・・

「あ?それは伝説だ。居る訳がないだろう。にしてもこれは凄いな・・・」
ライゼルはうんうんと頷いている。
いなかったかー!
ちょっと残念。
でも満足そうでなによりだ。

「ジョニー・・・俺に手伝えることがあったら何でも言ってくれ。手伝わせて貰うぞ」
そうか、何でも手伝うってか・・・
しめしめだな。

ではさっそく、
「そうか、じゃあ早速手伝って貰おうか」

「ん?どうした?」
未だ剣を眺めながらライゼルが答える。
こいつ、ちゃんと人の話を聞いているのか?
知らねえぞ。
無理難題を言ってやろうか?

「今日はこの店先を整備したいんだ。手伝ってくれ」

「はあ?そんな事でいいのか?」
やっと目線をこっちに向けたライゼルが答えていた。

「いいも何も、お前に何を頼めるっていうんだ?俺は冒険者に依頼する様な物事は何もないぞ」

「そうか・・・まあ、お前がそういうのなら手伝うが・・・」
そんなことでいいんですか?とでも言いたげだ。
ライゼルは気が済んだのか、剣を鞘に収めていた。

「じゃあ先ずこの木枠を打ち込んでいくからお前は押えておいてくれ」

「よっしゃ!任せておけ」
俺達は木枠の建設を行った。



数時間後。
木枠の設置が完了した。
それなりの仕上がりに俺は満足している。

さて、もう昼時だ。
いい加減腹が減ってきた。
昼飯にしようと思う。

「ライゼル、昼飯にしようか」

「いいけど、俺は何も用意していないぞ?」
ライゼルは剣をハンマーに持ち替えて大工と化している。

「だろうな、いいから俺に付き合え。奢ってやる」

「おお!いいのか?」
ライゼルは目を見開いていた。
今日は手抜きだけどな。

「ああ、ちょっと待ってろ」
俺はバックルームに向かった。
俺は戸棚からインスタントのカレーを二袋取り出し、パックご飯を二人前準備した。
本当は自分で調理したいが、それはまた後日としておこう。
このインスタントカレーはコ●イチだ。
俺はお店に訪れた際には必ずこのインスタントカレーを購入する。
少々割高の値段設定だが、安定の味が欲しくなる時があるんだよね。
分かって貰えるかな?
このまた食べたくなるスパイスが虜になる。

電子レンジにパックご飯を入れてボタンを押す。
瞬間湯沸かし器に水を入れて、インスタントカレーを入れる。
たぶん本当はこんな事はしてはいけないだろう。
でもタイムパフォーマンス的にはこれが大いに助かっている。
乱雑でごめんよ。
良い子は真似しないでね。
お皿とスプーンを準備して、出来上がりの音を待つ。

数分後。
先に電子レンジが出来上がりの音を告げた。
お皿にお米を敷き詰める、その上にミックスチーズを乗せる。
そして軽く醤油を垂らす。
これは俺の拘りだ。
カレーには醤油が隠し味になるのだ。
知っていたかな?
コ⚫︎イチでも店員さんに言うと出してくれるよ。

そうこうしていると、インスタントカレーが茹で上がった。
瞬間湯沸かし器から取り出して、袋を開けて御飯に掛ける。
この時点で美味しそうなカレーの匂いが部屋中を満たす。
安定の味だな。
ものの数分でカレーライスが出来上がった。
実にありがたい。
俺はこれに何度助けられたことだか。
手を抜きたい時の相棒だよな、まったく。

バックルームを出るとライゼルが興奮した眼でこちらを見ていた。
少年の様な眼差しでこちらを見ている。
無邪気感が半端ない。
お前いったい何歳だよ?
俺とたいして変わらんだろうが?
知らんけど・・・

「ジョニー!お前何を作っていたんだ?無茶苦茶良い匂いがしているぞ!」
ハハハ!匂いが漏れてしまっていたみたいだ。
換気扇を付けなかったからな。
換気扇を付けたらこうはいかなかっただろう。
このお店の換気扇は特別製だからね。
あり得ないぐらいに臭気を取り除いてくれる。
まあその様に設計して貰ったんだけどね。

「ライゼル・・・幸せの匂いとはこの事を言うんだ。大いに味わってくれ!」
俺はカレーライスとスプーンをライゼルに手渡した。
ライゼルの眼が見開かれている。
そしてわなわなと震えているライゼル。

「おい!ジョニー・・・こんな茶色い料理は始めて見るぞ・・・でもこの匂い・・・ああ、頭が可笑しくなりそうだ!なんでこんなに旨そうなんだよ!」
そうか、この世界には茶色の料理は余りないということか?
でもこの茶色は幸せの色なんだよな。

「いいから気にするな、本能の儘に食ってみろ!」
俺はそんなライゼルを無視してカレーライスに齧りついた。
旨い!
たまに食べたくなる安定の味だ。
流石はコ●イチ、定番だな。
トッピングのチーズと醤油が良いアクセントになっている。
最高だな。
俺のその様を眺めていたライゼルが、意を決してカレーライスに齧りついた。

固まってしまったライゼル。
その後、
「なんだこれ!旨い!それに辛い!最高だ!ジョニーの言う通りだ!幸せの味だ!」
そう言うとライゼルは一気にカレーライスを飲み込む様に食べていた。
カレーは飲み物なんて言ってた芸能人が居たが、正にその通りだった。
ライゼルはカレーライスをものの一分で完食していた。
ここは飲まずに味わって欲しかったな。

「ジョニー!お替わりだ!」
好きに言っている。
ある訳ねえだろ。

「ライゼル、お替わりなんてないぞ・・・お前アホか?」
そこまで甘えさせるなんてあり得ねえだろうが。

「そんな・・・しまった・・・もっと味わって食べるべきだった・・・」
馬鹿が、お替わりなんてやらねえよ!
本当はあるのだが・・・
俺はライゼルを無視してカレーライスを楽しんだ。
ライゼルにずっと見つめられていたのだが、完全に無視した。
俺のカレーはやらねえぞ。
じっくり味わって食ってやる。
コ●イチ最高!

カレーを食べ終えた俺達は続きの作業を始めた。
今度は土を耕していく、俺はシャベルを使う。
ライゼルには鍬を渡した。
作業を始めて分かったのだが、それなりに砂利や石が結構埋まっていた。
であれば、これを使って歩道を造ろうと思う。

「ライゼル、砂利はここに集めてくれ」

「そうか、分かった」
流石は冒険者だな。
ライゼルは結構なスピードで作業を行っていた。
俺よりも倍は早い。

「これはこれで鍛錬になるな」
かもな。
結構真面目なコメントをしていた。

「そうだな、腰をちゃんと入れないと上手く耕せないからな」

「まったくだ、それにこの鍬は業物だな。こんな立派な鍬は見たことがねえぞ」
そうなんだ・・・
まあここはスルーだな。

「この鍬もお前が研いだのか?」
こいつどこまで馬鹿なんだ。

「な訳ねえだろ、だから俺は研ぎ師じゃないっての」
何度目だこの会話。

「でもなんで髪結いさんのジョニーが研ぎなんて出来るんだ?」
ほう、そうきたか。
答えてしんぜよう。

「それはな、俺達髪結いさんはハサミが命だろう?俺はそんな命を他人に任せる程、適当に出来ていないってことだよ、又はただの拘り屋とも言うけどな」

「そういうことか・・・俺も研ぎを学ぼうかな?」
真剣に悩んでいるライゼル。

「止めておけ、お前大雑把だろう?そんな奴には向かないぞ」

「ちぇっ!なんだよ大雑把って」

「じゃなきゃあ相棒の剣を忘れていか無いだろうが!」
そうだよね?

「・・・確かに」
項垂れているライゼル。

「お前には向かない、何本も剣を駄目にするだけだな」

「じゃあ俺の剣は誰が研いでくれるんだよ?」

「そりゃあ道具屋に決まっているだろう」
今後は俺はやらねえぞ。
たまにはいいけど。

「まあそうなんだが・・・ジョニーがやってくれよ」

「はあ?・・・まあいいけど・・・言っておくけど俺は研ぎ師じゃないからな。あくまで趣味としてやっているだけだからな。いいな?だから仕上がりにケチ付けるんじゃねえぞ」

「分かってるよ、ありがとうな。何から何まで」
本当にそう。

「本当だ、高く付くぞ」

「そこは負けといてくれ!」

「ハハハ、冗談だよ。またいつでも遊びに来い」

「ああ、そうさせて貰うぞ!」
調子の良い奴だな。
こんな奴も嫌いじゃないけどさ。
俺達は店先の拡充を行った。