ーー死にたい。
一年前の私なら、こんな思いはなかった。就職活動は連敗でようやく掴んだ内定。しかも、憧れていた広告関係の仕事ができる。一緒に就活を励みあってきた仲間で第一志望の会社に入社した子は少なかった。希望している職種の会社へ就職できない子だっていた。そんな子達に比べたら、私は恵まれている。
これからは、夢と希望を胸に抱いて社会人としてしっかり働き、稼ぐ。好きなことをして、自由に生きたい。そして、大学まで通わせてくれた両親に恩返しがしたい。
社会人という現実を知るまで、そんな夢物語を考えていた。
☆☆☆
午後二十三時五十六分。
良かった、今日はギリギリ間に合った。勢いよく駅のホームの階段を登り降りしたから、肩で息をする羽目になった。ぜーはーと荒い息を繰り返し、電車が来る方をじっと見つめた。
あと三分。
だんだんと息が整って、ただ呆然と電車が来るのを待っていると、またいつものがやって来た。
ーー死にたい。
実際に就職すると、思い描いていた社会人像とはまるで違った。
朝四時半に起きて、とりあえずボサボサな髪を整えて軽く下地とファンデーションだけ塗って軽く眉毛を描く。朝ごはんは食べたり食べなかったり。そして、五時前には家を出て電車に乗って会社に向かう。始業時間は、午前九時。私が会社に着くのは午前六時前。私が会社に一番乗りの日もあるけれど、終電を逃した先輩達が寝袋で寝ていることもある。というか、週の半分以上がそんな感じ。私も週の半分以上、会社で夜を明かすことがある。そして、仕事を始めると午前九時より少し前に上司が出勤。午前九時からラジオ体操が始まり、上司のパワハラ三昧の朝礼が始まる。令和の時代にそぐわない風習だ。朝礼が終わると、仕事に戻るけれど、上司の怒鳴り声は何度も響く。自分が標的になるのではないかと、常に怯えている。そして、上司は午後六時に退社。上司が帰ったことで、緊張感はなくなって肩の力を抜いて仕事ができる。しかし、仕事量はとてつもなく、毎日終電ギリギリの時間までかかってしまう。
そして、翌日には最初に戻る。終電に間に合わなければ、会社で寝泊まり。
こんな毎日に嫌気がさし、入社して半年目にはあの頃のキラキラ感はなくなっていた。そして、ニヶ月程前から【死にたい】と思うようになった。日を増すごとに、その気持ちは強くなってる。でも、まだ死ねていない。生きている。
だけど、今日はーーなんだか、本当に死ねそうな気がした。
終電の電車の光が遠くで光っている。だんだんと光が大きくなって来た。
一歩踏み出せば、ホームに落ちて電車に跳ねられてーー死ねる。足元の点字ブロックを見てごくりと生唾を飲み込んだ。
「まもなく電車が参ります。危険ですので、黄色い線の内側にーー」
そう、電車が来ている時に黄色い線を越えるなんて御法度。だけど、なんとなくーー今日なら、できそうな気がした。
私から駅員さんの距離は遠い。
ーーよし。
覚悟を決めて、一歩踏み出そうとした瞬間だった。
