八犬継承奇譚~封印の珠と復活の怨霊~

五十子城へ続く山道は夜の闇に沈み、木々が風に揺れるたび不気味な影を落としていた。

美咲と八犬士たちは険しい斜面を登りながら、胸の奥に広がる不安を押し殺して進む。

「玉梓の気配が濃くなってきている」

美咲が符を握りしめ、周囲を警戒する。

「確かに、空気が重い」

白夜が刀に手を添えながら呟く。
蓮が足を止め、耳を澄ませた。

「鳥の声も、虫の音も、全部消えてる」

「山が、息を潜めてるみたいだな」

藤雅が低く言うと、蒼真が空を見上げる。

「月が、隠れた?」

雲はない。それなのに、月光が急に弱まり、山道が薄闇に沈む。

「……嫌な予感がする」

景臣が珠を握りしめた瞬間、足元の影がじわりと広がった。

「影が……動いてる……?」

直人が身を引くと、影は地面から立ち上がり、木々の間に人影のような形を作り始めた。

輪郭は揺らぎ、顔はなく、ただ怨念だけが形を持ったような存在。

「玉梓の手先か……!」

玲音が刀を抜くと、影たちは音もなく迫り、山道を塞ぐように広がった。