八犬継承奇譚~封印の珠と復活の怨霊~

次の瞬間、縁喰の糸が空中を走った。
それは珠と珠の繋がりそのものに干渉する、禍々しき呪縛だった。

「なっ……俺の智の珠が……繋がらない!?」

玲音が叫ぶ。

「俺もだ……信の珠の光が、他と遮断されてる……!」

白夜の顔が強張る。

「まさか……この男、珠同士の連鎖を切って……!」

縁喰の囁きが響く。

「そう、八犬の絆こそが貴様らの武器。それを断てば、お前たちはただの器にすぎぬ!」

「くっ……!」

術式の連携ができない中、八犬士たちは各個で縁喰に挑むが、その糸は互いの動きを乱すように絡まり、攻撃を分断していく。

(このままじゃ、バラバラにされる!)

その時だった。

「式神陣・共鳴還縁、展開!」

美咲の符が空に飛び、炎夜と華蓮が同時に陣を描く。

「たとえ珠が断たれても、私たちには式がいる!」

炎が八犬士たちの足元に流れ、魂の軌跡を描く。

「これは、心の連結を式神に託す術!?」

玲音が珠を手にし、目を見開く。

「わかった、今は術じゃない。声と意志で繋がれ!」

八人がそれぞれの珠を握りしめ、叫ぶ。

「義——譲らぬ覚悟!」

「信——貫く想い!」

「智——疑わぬ心!」

「悌——許す強さ!」

「礼——忘れぬ恩!」

「仁——守る誓い!」

「忠——貫く道!」

「考——導く魂!」

八珠が一瞬、空で交差した。

その瞬間、《珠連陣》が完全に復元する。

「いけっ!!」

『八珠連陣・断縁破光刃‼』

八人の想いが剣となって、縁喰の糸をすべて切り裂く。

「くだらぬ……絆……」

縁喰が最後にそう呟き、崩れ落ちる。

静寂が戻った空に、風が吹いた。

「俺たちは繋がっている」

千龍が呟く。

「それが継承されたものだ」

美咲が空を見上げた。

「五十子城が呼んでるわ、智成と玉梓。そして、九つ目の真実がそこにある」