八犬継承奇譚~封印の珠と復活の怨霊~

白い喪衣。朱の帯。長く垂れる髪。

顔の半分は微笑み、もう半分は感情を欠いた仮面のような女。

「第九の器に繋がる者たちよ。お前たちの血を断つことが、我が務め」

「第三の刺客……!」

「名は赫月(かくげつ)」

赫月は月に手をかざすと、直人の珠が赤黒く染まり始めた。

「悌の珠が……!」

「この術は血縁記憶の干、八犬士の系譜を乱す気⁉」

赫月が詠じるように囁く。

「継承とは死者の記憶の模倣。お前たちの意志など、所詮は血に縛られた幻想……」

八犬士たちが珠を輝かせ、術式で対抗する。

美咲が炎夜と白火に指示を飛ばす。

「霧を裂いて! 炎で術式を浮かび上がらせて!」

玲音が赫月の術の構造を解析し、声を張る。

「術式の核は、背中の月紋だ!」

景臣が剣を掲げ、全員が力を合わせる。

《八珠連陣・繋命結刃!》

赫月の結界が崩れ、彼女の身体が霧散する直前だった。

「五十子城の扉はもう開く。第九はもう、そこに座している」

霧と共に彼女が消え、封じられていた社殿の奥から一つの文書が現れる。

それは、封印された禁術の記録。

“玉梓、南方の〈五十子城〉にて、退散せらる”

玲音が低く呟いた。

「玉梓の本拠地は、ここじゃなかったんだ」

「ついに、本当の戦場が見えてきたわね」

美咲の手の中には、黒い珠の記された地図の断片があった。

次の地は玉梓が退けられた地、五十子城。
そしてそこには、智成が待っている。